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短編寄せ集め

三百年目の遊戯

作者: 大和アキ
掲載日:2012/12/19

自分で読んでみた感想。


意味不明だ、コレ。

 アスファルトに打ち付けた頭から、暖かい液体が流れ出していくのを感じる。周りからは悲鳴や慌てたような声が途切れることなく聞こえる。



「嘘だろ……?」



 そんな喧騒の中で、何かが落ちる音がした。直後、こっちに足音が近寄ってくる。



「そんな……なんで……!」



 足音が止むと、悔しげな声が頭上すぐ近くから聞こえた。異様に思い瞼を開いて、声の主を確認する。



「け、ん……じ?」



 幼馴染みの苦虫を噛み潰したような悔しげな表情がそこにあった。震える唇を無理矢理動かして幼馴染みの名前を呼ぶ。

 幼馴染みが私の声に気づいて目尻に涙を溜めた目をこちらに向ける。



「ごめ、んね」


「無理して喋るな! もうすぐ救急車が来るから、絶対に死ぬな!」



 幼馴染みが震える声で叫ぶように言う。その顔は悲壮に歪んでおり、大きな目からは涙が頬を伝っている。

 鉛で固められたかのようの重い左腕を持ち上げて幼馴染みの右頬を流れる涙を拭ってやり、そっと手を添える。



「ご、めん……もう、わたし、だめ、かもしんな、い、や」



 朦朧としてきた意識の中で、刻々と死に近づくのを感じ、微笑みながら幼馴染みに謝罪する。

 幼馴染みが頬に添えていた左手の上に右手を当てて握りしめる。もうほとんど血が通っていない指に痛みはない。



「わたし、ね、けんじにいわなきゃ、いけないこ、とが、あるん、だ」



 幼馴染みが私を抱き寄せる。すぐ横から泣くのを我慢するような呻きが聞こえる。

 私は顎を幼馴染みの肩に乗せ、右腕を肩に回す。



「わた、し、ね……ずっと、ね…………けんじ、のこと、すきだっ、たん……だ、よ」



 幼馴染みが私を抱く腕に力が込もる。泣き声を押さえる呻き声も少しずつ大きくなる。



「でも、わたしは、も、ぅ……だめ、だから……わ、たし、の、こと、は…………きにしなぃ、で、ね…………いま、まで……ぁり、が……と…………」



 視界が徐々に暗くなっていく。幼馴染みの肩に回していた右腕が力なくずり落ち、息をするのもままならなくなる。



「憂! 死ぬな、逝くな! 憂!」



 幼馴染みが、私の名前を叫んでいる。頭も抱き寄せられ、体に回されていた腕の力がいっそう強くなる。


 これで32回目か……。


 意識が黒く塗り潰された。








「ただいま。またゲームオーバーだよ」



 真っ白い空間でモニターを覗いていた爺さんに声をかける。声をかけられた爺さんはこちらに振り向き、呆れたような目を向けてくる。



「また戻ってきおったか」


「うん。今回はいいとこまで行ったんだけどなぁ」


「いつもとたいして変わらんじゃろう」



 まあね、と苦笑いしつつボクもモニターを覗きこむ。画面には銀髪オッドアイの少年が圧倒的な力で敵を蹴散らしている姿が映されている。



「ああ、またチートあげたの?」


「三つだけ願いをかなえてやると言ったらこうなったのじゃ」


「若い子、特に十四、五の子にそんなこと言ったら、そうなるでしょ」


「それはそうじゃがの」



 転生させるときのルールなんじゃ、と眉尻を下げながら呟くように言う爺さん。確かにそうだろけど。



「ボクの時はそんなこと言われなかったけどなー」


「何百年前の話をしとるんじゃ、お主は。このルールができたのは百年前じゃ」



 ボクがそう言うと、爺さんはムッとした顔で非難してきた。冗談のつもりだったが、爺さんの気分を害してしまったようだ。まあ、ボクがここに来たときにはそんなルールはなかったので気にしていない。



「今回は15年と10日。新記録更新には程遠いの」



 爺さんがモニターを操作し、今回の“遊戯”の結果を表示させ、そう言った。画面の右上に表示されている最高記録には『20年と152日』と表示されている。



「幼馴染が優柔不断なのが悪い」


「そこはうまく誘導せいよ」



 ボクの言い訳に、多分な呆れを含んだ声で爺さんが言う。できる限りの誘導はした。幼稚園ではいつも一緒に遊んだし、大きくなったら結婚しようね、とかベタな約束もした。小学中学では帰りはいつも一緒だったし、バレンタインだって一人だけ豪華な包装でハート形のチョコを渡した。だというのに幼馴染はあっちにフラフラ、こっちにフラフラ。



「それは……ドンマイじゃ」



 心を読んだのだろう爺さんが憐みの視線をボクに向ける。別に初めてのことではないのでどうってことはない。



「だいたい、二人以上同時に惚れられることなく結婚すればクリアなんて、不可能でしょ。というか初期設定からおかしい」



 確実に美少年もしくは美少女に生まれ、必ず家は大金持ち。あらゆる才能に恵まれ、成績は常にトップクラス、運動神経は異常と言っていいほどで、一度オリンピックに出たことすらあるほど。“遊戯”が始まって三百年、いまさら怒ろうなどという気はないが、文句ぐらいは言いたい。



「いや、それは正直すまんかった」



 ボクの言葉に爺さんが困った表情になり謝罪する。



「別に責めてるわけじゃないよ。じゃ、さっさと次の“遊戯”を開始しようか」


「そうかの」



 ボクが“遊戯”の開始を求めると、爺さんは寂しそうな表情で呟く。話し相手がおらず寂しいのだろう。



「今度の世界はどんな場所がええかの? 今回の“地球”は科学の発達した世界じゃったから、今度は魔法が発達した世界がよいか」


「そうだね、まかせるよ」



 爺さんが慣れた手つきでモニターの操作を始める。



「ファンタジーの世界ということは、また王族か貴族になるのか……」



 今までの経験から予想されることを考え、ため息を吐く。王族や貴族に生まれて十年以上生きれたためしがない。所謂ハードモードというやつだ。



「ふぁんたじぃ? なんじゃそれは」



 ボクの呟きが聞こえたらしい。爺さんがそんなことを聞いてきた。



「“地球”の物語でポピュラーなジャンルのことだよ。今思えば、あの世界は文化が独特で面白かったよ」



 その中でも特に、ボクが住んでいた日本は独特な文化を持っていた。次行く世界でもクリアできなかったら、もう一度“地球”に行くのもいいかもしれない。



「じゃあ、達者での」



 ボクが考え事をしている間に準備を終えたらしい爺さんが言った。



「うん。じゃあね」



 最後に爺さんに手を振り、ボクは次の“遊戯”を開始した。

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