第二話
ゆうたくんとまりちゃんは、まず占いおばあさんのところへと行きました。色々なところへ行こうとはいっても、具体的にどこへ行ったらいいのかわかりませんでした。占いおばあさんは町の人が困ったときに色々なことを教えてくれるので、占いおばあさんを頼ろうとしたのです。
占いおばあさんの家の扉をとんとんと叩くと、占いおばあさんが出てきてにっこりと笑顔を見せました。
「あら、ゆうたくんとまりちゃん。どうぞ、あがってあがって」
部屋のまんなかにあるテーブルには、水晶玉が乗っています。占いおばあさんは、いつもこれを自分の前において占いをするのです。占いおばあさんは椅子に座ると、水晶玉を自分の前に置きました。
「何か困っているんでしょう?さぁ、そこに座って」
ゆうたくんとまりちゃんは、驚いた顔をして占いおばあさんの正面の席に並んで座りました。
「どうしてわかったの?」
ゆうたくんが尋ねると、占いおばあさんは「うふふ」と笑いました。
「それはね、ゆうたくんの顔に書いてあるからだよ」
「え、まりちゃん、ぼくの顔に何か書いてある?」
ゆうたくんは不安そうな顔でまりちゃんに尋ねました。
「ゆうたくん、顔に書いてあるっていうのは、本当に書いてあるってことじゃなくて、そういう表情をしてるってことだよ」
「なんだあ」
まりちゃんに教えられて、ゆうたくんは照れたように笑いました。
「あらあら、まりちゃんは物知りね」
占いおばあさんがいうと、まりちゃんもゆうたくんと同じ表情になりました。
「お母さんに教えてもらったの」
まりちゃんは、お母さんに色々なことを聞きます。普段遊んでいるときも、ゆうたくんの知らない話をしてゆうたくんを驚かせています。このあいだも、神様を信じるといいんだよ、といってゆうたくんを驚かせました。
「それで、今日はどうしたんだい?」
「色々なところへ行きたいんだけど、色々なところってどこなの?」とゆうたくんが尋ねます。
「色々なところ?それは誰から聞いたんだい?」
「上村さんだよ。色々なところへ行くと、したいことがわかるって」
「なるほどねえ。つまり、ゆうたくんとまりちゃんは魔法が使いたいんだね」
「どうしてわかったの?」とまりちゃんが尋ねました。
「それはね、二人の顔に書いてあるからだよ」
そう答えられると、ゆうたくんとまりちゃんがお互いの顔を見たので、占いおばあさんはやっぱり「うふふ」と笑いました。
「そうね、魔法ね。それなら、まずは"良いこと"が何かってことを知らないとねえ」
「あ、お母さんに聞いたことある。魔法は"良いこと"だって」とまりちゃんがいいます。
「"良いこと"ってなに?」と、ゆうたくんが尋ねると、まりちゃんは「他人のためになることよ、っていってた」と答えました。
うーんと唸ってゆうたくんが首を傾げました。まりちゃんも同じように首を傾げます。二人とも"他人のためになること"がどういうことなのかわからないようです。
「うふふ、確かに難しいかもしれないねえ。そういえばさっき、外で斉藤さんが困っていたよ。助けてあげると、その意味がわかるかもしれないねえ」
ゆうたくんとまりちゃんは顔を見合わせると「ありがとうございましたー!」と大きな声でいい、外に飛び出していきました。占いおばあさんは「うふふ」といって水晶玉を撫でました。
外では、斉藤さんというおばさんが手に袋を提げて、困った顔をしていました。ゆうたくんとまりちゃんは駆け寄り「斉藤さん困ってるー」といいました。斉藤さんは驚きましたが「おばさんなら大丈夫よ」と二人に微笑みかけました。
「顔に書いてあるよー」とゆうたくんがいうと、斉藤さんは「あらあら」といって苦笑いを浮かべました。
斉藤さんはちょっと悩んだあとに「実はね」と切り出しました。
「この食べ物を神様のところへ届けたいんだけど、足腰が痛くて神様のところまで行けそうにないのよ。上村さんも出かけてるみたいだし、どうしようかしらって思ってたの」
斉藤さんの袋をゆうたくんとまりちゃんが覗くと、そこにはお米やリンゴが入っていました。試しにとゆうたくんが袋を持ってみると、持てなくはない重さなのでした。
「ぼくが届けてあげるよ」とゆうたくんがいうと、斉藤さんは「いいのよ、そんな気をつかわなくても」と袋を取ろうとします。ですが、ゆうたくんは袋を放さずに「大丈夫」というのでした。斉藤さんが困った顔をしました。
「あたしたち、魔法が使いたいの。だから、"良いこと"をしてるの」
まりちゃんがそういうと、斉藤さんは「うーん」といってしばらくの間悩んでいました。ふぅ、と斉藤さんが息をついて、微笑みました。
「それなら、お願いしようかな」
斉藤さんの言葉に、ゆうたくんとまりちゃんは大喜びしました。
「この辺りは特に悪い人もいないし、大丈夫よね」と斉藤さんは独り言をいいました。
「悪い人?」とゆうたくんが尋ねます。
「悪い人っていうのは、人から恨まれることをする人のことだよ。でもね、神様は悪い人に魔法を与えないし、悪い人は良い人に魔法でやられちゃうから、あんまりいないんだよ」
そのあと斉藤さんはハッとして、続けて喋りました。
「でもね、車とか自転車には気をつけるのよ?それと、道がわからなくなったら『神様はどこですか?』って周りの人に聞くのよ?」
二人は「はーい」と返事をしました。斉藤さんは町の外を指差します。
「神様はあっちにあるスベニアっていう町の、もっと向こうにあるイベルトっていう町の教会にいるわ。それじゃあ、よろしくね」
二人はまた「はーい」と返事をして、斉藤さんが指差した方に歩き出そうとしました。すると、斉藤さんが「あっ」といって二人の足を止めました。二人が振り返ると斉藤さんは微笑んで「ありがとう」といいました。二人はなんだかほんわかした気持ちになって、笑顔になるのでした。"良いこと"っていうのは"ありがとう"っていわれることなんだ、と二人は思い、歩き始めました。




