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お前を愛する事は無いと言った男の末路

掲載日:2026/09/26

ほぼ筆者の本音(;´・ω・)

「お前を愛する事は無い……」

「……え?」


 いわゆるテンプレな物語において男性キャラの死亡フラグとして有名な『婚約破棄』や『真実の愛』に並ぶ最低発言の一つ。

 初夜で寝室に入って来た女性に対して自分には別に想い人がいるからとかで白い結婚を強要するアレ。

 まさか一人で寝室に入って来た色っぽい衣装の絶世の美女を相手に、この俺がこんなセリフを吐く日が来るとは思わなかった。

 話は俺がこの場所に招かれて王と呼ばれた時間に遡る。


                *


「我らユグドラシルは貴方様に忠誠を誓います、魔王様!!」


 そう言って平伏するのは黒い鎧を着込んではいるが、その見事な肢体は全く隠す事無くさらけ出す美しい銀髪のダークエルフ。

 そして巨漢のオーガ、細身だが怪しい空気を醸すスケルトン、そしてダークエルフ以上に露出が激しく蝙蝠の羽を持つサキュバスも続く。

 そしてそいつらを見下ろす俺は……大き目の羊の頭蓋骨を被っている。

 何だこれ……誰もがそう思う事だろう、しかしそれは俺が一番言いたい事なのだ。


 だがあえて省略して言わせてもらおう……俺は召喚されたのだ!


 そう、最早異世界召喚では勇者や聖女の次くらいに使い倒された展開のように、俺は夜勤明けで昼飯に今日は夏限定のニンニクの芽が大量に乗った牛丼を掻っ込む事を心に決めていたあの日……牛丼屋の扉を開いた瞬間に、ここに来ていたのだ。

 ただ魔王と言っても異世界で猛威を振るうヤツではなく、異界から地球を侵略に来た戦隊の敵としての勢力として……だ。

 そもそも当初はこいつ等の次の怪人として呼ばれたらしいのだが、彼らの力の源である魔力は世界を違える俺には全く効果が無かったらしく、その上俗にいう召喚チートで元のステータスが全て最高値に上昇、加えて夜勤明け&牛丼お預けで気が立っていた俺は勝手な召喚に暴れて連中を制圧……当時魔王であったダークエルフに玉座を譲られ大魔王と呼ばれるようになってしまっていた。

 ……いや、本当に未だに意味が分からん。

 魔力が全く意味をなさないと言うだけで、俺と対峙した『ユグドラシル』の連中はまるで子供の相手をしている如く柔い力しか出ず、魔法らしき炎も氷も何もかもが素通りしてしまったのだから。

 ある意味チートと言えるかもしれないが……何だろうこの納得のいかなさ具合は。


 そんな感じで夕食を邪魔された腹いせに暴れまわった後、あれよあれよという間に新魔王認定されてしまった俺は入念な入浴の後、大きなベッドが小さく思えるほどに巨大な寝室に魔王から俺の側近に下がったダークエルフに案内された。


「それではしばしお待ちください魔王様。これより毎夜ごと各種族から最高の美姫がお情けをいただきに参りますゆえ」

「お……お情けってまさか……」


 それが何を意味するのか分からない程子供ではない!

 異世界召喚と言えばチートの次はハーレム! ベタとかテンプレとか言われようと知った事では無い! それが宿命! 運命なのだ!!


「さ、最高のって……それはお前ほどの美貌であると思ってよいのか?」


 正直言って目の前のダークエルフは鍛えられた体であるのに女性らしい艶めかしさを失っていない、きつめだが物凄い美人には違いない。

 正直彼女がお相手だったとしてら飛びついていただろうが……思わずそう聞くと、少しだけ驚いた顔になった彼女はクスリと笑った。


「何をおっしゃいます。戦闘に特化した私などよりも遥かに女性的、清楚で美しい者ばかりでございます。今宵はエルフ族の娘を準備させておりますゆえ、存分に可愛がって下さい」

「マジで!? 君よりも美人とかどんなレベル!?」


 そしてダークエルフが退室してからしばらくして、扉を開けて入って来た女性に俺の目は釘付けになり、すべての血液が下半身に集まるのを感じる。

 ダークエルフよりも美女かと言うと甲乙つけがたいが、それでも美姫という評価には偽りが全くない。

 耳が長く金髪碧眼と言うのは典型的なエルフの特徴だろうが、整った顔は女優と比べても遜色ないくらいに美しく、遠目からでも見事な曲線を描く肢体は見事と言うほかが無い。

 そしてしっかり出るところは出ているのに大事なところだけはしっかりと隠しているのにその他はスケスケのネグリジェ……その焦らし方は正しく俺の事を性的に誘うための物。

 彼女は一瞬で性的な目でロックオンした事に気が付いたハズなのに、嫌な顔一つ見せずにニッコリと笑った。


「初めまして魔王様。私はエルフ族族長の娘、レティと申します。今宵はどうぞ私と一夜を共にしていただけますよう……」

「うおおお、これぞ異世界テンプレ!! 状況がどうの倫理観がどうの知った事か! よ~しよしよし! 存分に楽しませて…………」



 そう言いつつ頭を下げた事で垣間見えた谷間は衝撃的、男の本能を限界突破まで引き上げて、最早これまで、直ちに戦闘態勢に移行、据え膳食わぬはの精神で彼女に飛びつこうとして…………その瞳を正面から見据えた瞬間に、一気に萎えた。

 すごいものでほんの数秒前まで臨戦態勢だったのに一気にスンとなってしまい、唐突にテンションを下げた俺にレティは首を傾げたが……そんな彼女に俺は男にとっては死亡フラグにしかならないセリフを吐いた。


「あ~…………俺がお前を愛する事は無い」

「…………は?」


 それは彼女にとって予想外過ぎる言葉だっただろう。

 つい数秒前までは完全に臨戦態勢、最初からその気が無かった様子ならまだしも性的に捕食する気満々だったようにか見えなかったヤツが唐突にそんな事を言ったのだから。


「あ、あの魔王様? 何かお気に召さない事が……」

「お前……絶対男がいるだろ。しかも将来を約束したタイプの」

「!?」


 その一言で彼女は全身を硬直させ表情を青くさせる。 ……やっぱりな。


「な、何故そのような事……」

「ああ、何となく想像が付いたぞ。昨日までは女性が魔王だった事で献上せずに済んでいたのに男が魔王になったからエルフ族としては一番の美姫を出さなきゃならんって、男と別れさせられたな? エルフ族を守る為とか何とか……」

「あ……あ……」


 その瞬間、レティの瞳から涙があふれ始める。

 魔王に対して不興を買ったと思ったのか、はたまた別れた男に対する未練なのかまでは予想できないけど。

 召喚チートは俺の能力を全て最高まで引き上げてくれたらしいのだが、どうやら余計な能力も向上してしまったようで……日本人特有の特殊能力『空気を読む』事すら引き上げられてしまったみたいなのだ。

 そんな能力は彼女の目を見た瞬間に表情に一切出していなかった『誰かに対する謝罪』を感じ取ってしまい……一気に理性を取り戻させてしまったのだ。

 不思議なモノでさっきまでアレほど興奮していた美貌にも肢体にも一切のエロさを感じ取れなくなってしまった。

 にゃろう…………気が付かなければ、気が付かなければ今夜俺は卒業だったのに!!

 それから俺はレティを含めた全員、いわゆる魔王の後宮に集められた各種族の側妃候補たちを全員呼び出した。

 幸か不幸か羽があったり角があったりと種族の違いはあれど、どの種族の女性もそれぞれ魅力的で、ハッキリ言って行こうと思えば行ける女性ばかりだった。

 しかし、俺はそんな彼女たちを前にハッキリと宣言した。


「全員、大事な男がいた者はさっさと帰れ、そんでもってキッチリ抱いてもらいやがれ! 寝取りはフィクションだから興奮出来るんであって、リアルはお呼びじゃねーんだよ!!」

「「「「「「……………………」」」」」」


 それだけを宣言した俺は早々に寝室に戻ってふて寝したのだった。

 期待からの急降下は案外精神的に疲労を齎したようで、その後は特に問題なく値付けてしまい……用意された後宮に集まった総勢50人の側妃候補たちは朝には全員いなくなっていた。

 ……どうやら全員に相手がいたらしい。

 ま、それはそうか、一族でも最高の美姫って事は相手がいない方がおかしいものな。

 そう思いなおしたけど、誰一人残らなかった事で自分でも少し勿体なかったかな~とか思ったりもしたり……。


                  ・

                  ・

                  ・


 そんな事があった数日後……俺は先日50人の側室候補たちを追い出した大広間に集まった別の50人の男たちすべてに膝をつき平伏されていて……困惑していた。

 種族はバラバラなのだがその眼光は鋭く体格も大小の違いはあっても鍛えこまれていて、全てが歴戦の戦士と素人目でも分かるほど圧倒的な強者のオーラ。

 しかし面を上げさせた連中の瞳は全て俺に対する感謝と尊敬に満ちていた。


「我らは貴方様に絶対の忠誠を捧げます!」

「俺たちの力、存分にお使いください!!」

「オレ、アンタ、マモル!!」

「な、なんと……私の勧誘には一切なびかなかったエルフ族最強の魔導師にオーガ族の中でも制御不能とまで言われた狂戦士、先祖返りの神龍までもが……」


 隣で驚愕するダークエルフの言葉に俺も驚きを隠せない。

 強そうとは思ったけどなんだよその評価は!? 

 しかし困惑する俺に最前列で平伏したまま件のエルフ族最強の魔導師が更に言い募る。


「魔王様、貴方は私の最愛を返して下さった。それも直前まではその気であったと言うのに状況を察した瞬間に解放して下さったのだと。歴代の魔王であれば逆に狂喜しそうであるシュチュエーションであるにも関わらず……」

「いや、だって寝取りとか気分悪い……」


 いやまあ……そういうヤツもいるだろうし、むしろ人間の歴史でも他人の女性に平気で手を出す暴君なんてありがち。

 ましてや魔王なら猶更だったのかもしれないけどさ……。

 そう本音を呟いた瞬間、一気に50人の男共から野太い歓声が上がった。


「それです魔王様! そこにこそ我らは貴方を主として、そして魂を共有する同志として仕える事を切望するのです!!」

「寝取りはフィクションだから良い。リアルは要らないは共感しか無い!!」

「しかも魔王様はその言葉を実践為されたのだ! やる気満々であったのにも関わらずたぎる欲情の火を消して!!」

「この人なら信用出来る! 何より彼女に手を出される心配が無い!!」


 感謝の内容と尊敬……と言うか“現実の寝取りは無理”という俺の考えに共感した事がこの事態の原因らしい。

 …………最後に若干の本音っぽいモノも聞こえて来たが。

 そんな盛り上がる野郎どもを前にダークエルフは感嘆の声を漏らしていた。


「す、凄い……たった一度の見極め、一晩の閨の拒否だけで魔王軍に最強の戦士が集まった。まさか魔王様はここまで計算して……」

「いや無いから! 誰が予想出来るかよこんな展開!!」


                 *


 後に世界を席巻する魔王軍『ユグドラシル』の魔王の手足として働く事になる最強の近衛兵団が誕生した秘話がそんな事だったと知る者は少ない。

 歴史学者は『魔王が近衛兵となった者たちに宝物を与えた』とまでは古文書を読み解いたのだが、それが何だったのかまでは解読されていない。

 ただ魔王の言葉だけは残されている。


『現実《リアル》は要らない』


 その言葉は現実社会の厳しさ、ままならなさを嘆いた為政者としての言葉であったとか、現存する全てを破壊、支配しようとしていた魔王の覚悟であったのか、解釈は様々に広がりあらゆる人々の論争になっている。






お読みいただきありがとうございました。

よろしければ別作品もよろしくお願いいたします。


『疎遠な幼馴染と異世界では結婚している夢を見たが、それから幼馴染の様子がおかしいんだが?』

https://ncode.syosetu.com/n2677fj/

『神様の予言書』

https://ncode.syosetu.com/n1516gi/


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― 新着の感想 ―
魔王が聖者のようなお方だったのですね。
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