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ある日私はピンクブロンドになった ~ 大事なフラグはすべて私が利用させていただきます ~

作者: とと
掲載日:2026/04/10

読んでいただきありがとうございます。

チュン チュン。


あれ? 私の部屋に鳥の声なんて聞こえたことあったかしら?


重い瞼を持ち上げて見えた視界には豪華な装飾が施された壁に大きな窓……私のアパートじゃない。


さらにベッドは大きくてふかふか、シルクのサラサラシーツ。


起き上がると私の胸元には見慣れないピンク色のふわふわ髪!


「だれ?」


慌てて姿見を覗くと、お肌ぴちぴち小柄だけどスタイルもばっちりな少女が映っている……。


私この子見たことある。


寝る前に攻略した乙女ゲームのヒロインだ!


「私……。斎藤 さくら 25歳は、死んだのかしら?やーそんなに過労死するほど働いてないし、持病もない……はず」


独り言をつぶやくとドアがノックされる。


「お嬢様、起きていらっしゃいますか?」


「ええ。起きているわ、ミミ入っていいわよ」


きゃ♪ 私アスターにうまくなれてる?


わあ。侍女のミミだ!おさげかわいいのよね~。眼がパチパチしてる。生きてるのね~。


「お嬢様、……私何かついてますか?」


私にじっと見つめられて、ミミは心配そうに私に尋ねてくる。


「何でもないのよごめんなさい」


「それではお支度をお願いします」


私はミミに朝の支度を手伝ってもらい、ダイニングに向かう。


「アスターおはよう。今日は遅いわね」


コーラルオレンジの綺麗な髪にキャラメル色の瞳。私の義理の妹がニッコリ笑ってこっちを見ている!


ダリア無茶苦茶かわいい。


このゲームは私達が産まれた産院で取り違えられたことから始まる。

髪色が全然違うじゃないか!と私もゲーム機に突っ込みましたよもちろん。


私はダリアの両親である地方のブレン子爵家の子供としてすくすく自由に育ち。


ダリアがあまりにガルシア伯爵の色味と違う事を気にした伯爵夫妻(お父様とお母さま)は、その時産院で生まれた子供たちの家をひとつひとつ時間をかけて回り、一番遠くに暮らしていた私にたどり着くまでに5年かかった。


その時ブレン子爵は領地に災害が起こり途方に暮れていた。

私を引き取りたいとの申し出は渡りに船で、復興支援をガルシア伯爵家から受ける事も出来た。


ダリアはと言うと、ガルシア伯爵夫妻も5年も我が子として育てた情がありそのまま伯爵家の養子になることになった。


そんなわけで幼少期から双子の様に育ち、姉妹の仲は良い。


「ダリアおはよう。今日の朝食は何?」


「アスターの好きなフレンチトーストよ。たっぷりクリーム付き」


「わー♪美味しそう」




✿ ✿ ✿




姉妹で学院に登校するとそこはまさに乙女ゲームの世界!


しゃべってる!動いてる!触れる!


「アスター今日はなんでそんなに興奮してるの?」


「あら。興奮してるように見える?」


「まあ。今日で二学年も終わり、期末の休みを挟んで最終学年の始まりだものね、最終学年は爵位別のクラスでは無くて成績順のクラス分け、私もアスターもSクラス。

Sクラスは社交界で有名な方も多いから、ドキドキしちゃうわよね」


「ダリア!それホント!もう最終学年になるの?」


「今日は本当におかしいわね、先週の期末試験でアスターは第一王子のシリウス殿下を抜いてトップだったじゃない」


ややや。それは宰相のご子息でシリウス殿下の側近!ハワード侯爵令息ルイス様のフラグ!


「あは。そうだったわね、ダリアだって5位だったでしょ~」


「まあね」


「それにしても先週はテストなのに大変だったわよね、野犬が校内に入り込んでアスター危うく池に落ちそうになったじゃない、エイデン様に助けられて本当によかったわね」


ややややや。

それはホワイト伯爵令息エイデン様(騎士団長の息子)のフラグ!


「はあ。ダリア私、鳥のブローチは拾ってないわよね」


「…………」


「え!拾った?私シリウス殿下のブローチ拾ったの~」


「アスターほんとにどうしたの。拾ってシリウス殿下に王宮に招かれたじゃない、結局その日は高熱が出ていかなかったけど」


ややややややや。

シリウス殿下のフラグも立ってる~!


この休みの間に作戦を立てるわよ、すべてのフラグをへし折ってやる!


こんな設定ゲームだからいいのよ!

わーときめくなんて言っていられるのは、実際に傷つく人がいないから楽しめる。


生きている人間同士なら話は別!婚約者のいる人を奪うなんて人としてダメだ。


人から奪って幸せなんてどんな神経してるのか!

少なくとも私は無理。


自分がやられた時のこと考えてみなさいよ!


まだひとつ目のフラグだもの、どの攻略対象者も私のことは気になる子くらいなはず、誰も傷つかない様に頑張るわよ~。


「ちょっとアスターなんで拳を突き上げてるのよ」


「あーごめんごめん。ちょっと考え事してた」



それに、私には好きな人がいる!


これはさくらじゃ無くて、アスターが思いを寄せていた人だと思う。


でも今の私が見ても胸がドキドキ高鳴る。


私は見えてきた騎士科の訓練場で彼を目で追う。


黒に近いアッシュブラウンの髪が剣を振るたびに揺れて汗が跳ねる。


はあ~素敵。

彼はシュタルク伯爵令息のアーロン様。


よし。みんなを幸せにして私も幸せになろう。


この休みに万全な準備を整え新学期には作戦開始よ!




✿ ✿ ✿




アーロン様ともお近づきになりたいし、まずはエイデン様の婚約者、ウインター伯爵令嬢のルビー様とお友達になりたい。

ゲームの中でも、私の一押し。

あのサバサバした性格もハニーブロンドのサラサラポニーテールも素敵なのよね~。


今日から始まるSクラスの教室に続く廊下に私は、その素敵なポニーテールを見つけた。

ルビー様も私と同じSクラスだ。


淑女の全速力で近づく。


「おはようございます。突然お声がけしてすみません。

私ガルシア伯爵家のアスターと申します。

あの私ルビー様のファンでして……お友達になってください。よろしくお願いします」


私は勢いよく頭を下げて手を差し出した。


ルビー様は私の手を優しく握り返す。


「私もあなたのことは知っているわ、学院で一番の才女ですもの。こちらこそよろしくねアスターって呼んでいい?私のことは好きに呼んでちょうだい」


顔を上げると満面の笑み。


わぁ~。美人の笑顔はなんて眩しいの。


私が眩しさに目を細めていると突然男性の声がした。


「よお。さすが、女性騎士ナンバーワン。朝あら女子に告白されてるのか?」


ここの声は!

見上げるとアーロン様!


突然の急接近に思わずルビー様の後ろに隠れる。


「ちょっとアーロン!騎士科の女子とは違うんだからね、怖がらせないでよ」


「ええ。俺……怖い?」


アーロン様が私を覗き込む。


「こ 怖くないです!」

近くて心臓が潰れそうなだけです。


「アスターごめんね。アーロンはデリカシーがなくて!でもいい奴だからゆるしてあげて」


私はこくこくと頷く。


うなずいた拍子にルビー様の肘にある傷が目に留まる。


「ルビー様。肘に傷が」


「あー朝の稽古で擦りむいちゃって……でも血も出ていないし大丈夫よ」


私はルビー様の手をガシリと掴む。


「だめです。ばい菌が入ったらどうするんですか」


「ばい菌?」


「とにかく、洗ってばんそうこうです」


私は近くの水場に走り、ハンカチを濡らしてルビー様の傷を拭いて、小さく切ったガーゼにテープを張って傷を覆った。

「はいできました。」


「ありがとう」


「アスター手際がいいな~」


アーロン様がアスターって……名前読んだ!

今、私の頭が絶対蒸気爆発した。


もーアーロン様の美丈夫攻撃に負けるな頑張れ私、気をしっかり。

気持ちを立て直して準備した巾着をルビー様に差し出した。


「ルビー様、この袋差し上げます、傷の処置に必要な物がみんな入ってますから使ってください。

そして訓練の時は必ず持っててくださいね」


この巾着はエイデン様の最重要フラグに必要なアイテムだ。


「もらっていいの?この刺繍された花はなんて言うの?」


「アルストロメリアです。凛とした花で艶やかでしょ~ルビー様をイメージして作りました♪」


「わあ。ありがとう大切にするね」


「ルビーだけずるいな~。俺にもくれない?」


アーロン様がまたも私を覗き込む!近い!


「アーロン様には今度ハンカチでも!だから怪我はしないでください」


「はは。ありがとう、怪我しないようにするよ」


アーロン様が私の頭をポンポンする。


真っ赤になり固まった私の肩をルビー様が抱え歩き出す。


「アーロン!淑女に気軽に触らない、さあ教室に行こうアスター」


「おい待てよ、俺も同じSクラスだぞ」


あれ?アーロン様そんなに成績良かったかしら。でも同じクラスなんてうれしい。


ドキドキが止まらないまま教室に入ると!


まさにそれは、ゲームのオープニングの光景が広がっていた。


攻略対象の三人とその婚約者が勢ぞろい。


シリウス殿下とその婚約者であるローラン侯爵令嬢のオリビア様。エイデン様。ルイス様とその婚約者であるブルックス伯爵令嬢のセレーネ様。


目映いばかりの光景にうっとりしてしまう。


夢見心地でルビー様と席に着く。


「あらルビーもうアスター様と仲良くなったの?」


オリビア様が声を掛けてくる。わあ。オリビア様とも仲良くなりたい!


「そうなのオリビア、さっき廊下でアスターに傷の手当てをしてもらって、仲良くなったのよ~いいでしょ」


オリビア様と眼が合う。ふわふわのプラチナブロンドに澄んだ青い瞳。

かわいい。


「アスター様、私はローラン侯爵家のオリビアと申します。私とも友達になってくださいませ」


「オリビア様と友達になれるなんてうれしいです。是非よろしくお願いします」


「なになに私も仲間に入れて」


私達の輪にセレーネ様が入ってきてにっこり笑う。


見た目は銀髪のサラサラストレート、水色の瞳がクールビューティーなのにこのかわいい笑顔!


美しい皆さんに囲まれてそれだけで嬉しい。


「ねえねえ。アスター様のピンクブロンドのふわふわな髪に、前から触れてみたかったの私。

触ってもいい?」


セレーネ様に両手を握りお願いされる。


「はい。どうぞ」


私はくるりと後ろを向いた。


「わあ。ツルツルなのにふわふあわ♪いいな~かわいい髪」


「セレーネ様のサラサラが私はうらやましいです」


わいわい盛り上がっていると、ダリアが教室に入ってくる。


「ダリアこっちに来て、皆さん妹のダリアです。私ともどもよろしくお願いします」


「姉ともどもよろしくお願いします」


「ねえねえ。お友達になった記念に、今日はみんなで中庭ランチにしない?」


ルビー様の提案で、ランチ女子会が決定した。




✿ ✿ ✿




5人でランチボックスを持ち寄り中庭でお昼にする。


学院の中庭は広く、大きめのガゼボがいくつもあり気軽に集まりランチができる。


「ねえ。アスターとダリアには婚約者はいないの?」


皆で広げたランチボックスを食べ終わると、セレーネ様が話し始めた。


「はい。ガルシア伯爵家はアスターと私しか子供がいません。アスターが家督は継ぐ予定ですが、両親はのんびりさんで、好きな人がいればその人でいいわよ。なんて感じです」


「いいわね。ご両親も恋愛結婚なのかしら?」


「そうではないですけど、仲はいいですね~。皆さんはしっかりした婚約者がおいでですから安心ですね」


「「「そうね…………。」」」

三人がため息交じりに返事をする。


ん?あんまり順調じゃないのかしら。でもこの話の流れはチャンス!


「はい! みなさん私ですね、10日ほど前に高熱を出してからすごく感が良くなってピンときたものはだいたい当たるんです、それで今朝もこの処置の道具は役にたつと持ち歩いていたらルビー様とお友達になれました」


ルビー様が腰につけてくれている巾着を指さす。


「さらに、ルビー様にはこれを絶対持っていて欲しいと強く感じたのでプレゼントしました。

ん~。そしてですね……。

今他の皆さんのことも強く感じたことがあるんですけど……笑わずに聞いてくれますか?」


「なになにおまじないみたいな感じ?」


「そうですね、幸運の場所と言うか、お守りと言うかですかね、皆さんにいい事あるかな~って感じです」


私はみんなの顔を見回す。


「まずはオリビア様。ん~慰問などは興味がありますか?」


「もちろん、時々 孤児院や養護院に行くわよ」


「では!15日後の休日に、私とマルク孤児院に行きませんか?」


突然の誘いにオリビア様は眼をぱちくりさせたけれど行くことを承諾してくれた。


「次にセレーネ様は、裏庭のベンチはご存じですか?」


「ええ。行ったことは無いけど、あるのは知っているわよ」


「では、こちらを」


私は一冊の本を差し出した。


「なに?」


セレーネ様は本を受け取りしげしげと見つめる。


「それは、マルシェと商業街のスイーツ食べ歩き案内本です、これを持って裏庭のベンチに行くといいことがありそうな気がするんですよね~」


「ふふ。アスターは凄い才女で、クールな子かと思ってたけど面白いのね、でもこのお店の焼き菓子美味しそうね~」


よし。二人にも最重要アイテムと場所を伝えることが出来た!


「あとダリアは一人で、マクロ通りのカフェに行くといいわ」


そのカフェは、サービスステージで出て来たダリアとロディオ子爵令息のパウル様の恋物語が始まる場所なの、そこで二人はお互いを見た瞬間に魅かれあい♪

パウロ様は子爵家だけれど商才があり、のちに事業が大成功して伯爵位を賜る有望株なのよ。


このサービスステージはシリウス殿下をクリアすると出てくるのだけれど、私はシリウス殿下をゲットしようなんて思ってないから、ちゃんと出会ってもらわなきゃね。


そのあとはおすすめのカフェの話をして盛り上がった。



✿ ✿ ✿



数日後。

ルビー様が話したいことがあると、みんなを中庭のガゼボに集めた。


「みんな。聞いて聞いて」


「アスターのくれたこの袋で本当にいいことがあったの」


「なになに?どんなこと?」


「昨日の騎士科の訓練でエイが腕に怪我をしてね。アスターに貰ったこの処置のセットで、私が手当をしてあげたの。

恥ずかしい話だけれど昨日までのエイと私はその、別にお互い嫌いでわないけど……、幼少期に結ばれた婚約の上に、私が学院に入るまでほとんど領地で過ごしていたから、お互いにどう接していいかわからないでいたんだけど。

手当をきっかけに話が弾んで、今度の週末からは毎週一緒に出掛けたりお茶にしたりお互いを知る時間を作ることになったの」


いつも凛としたルビー様がふにゃふにゃでかわいい。


「アスターのおかげよ。この間私の傷の手当てをしてくれたえでしょ、そのおかげで手際よくできたの。

エイにも褒められたわ~」


「良かったわね~。何気に呼び方も愛称になってるし」


セレーネ様がルビー様をつついて祝福する。


「アスターの感は当たるんじゃないかしら!」


「すごいわね。アスター」


「「「………(私もやってみよ)………」」」




✿ ✿ ✿



それからは、幸せの報告が続いた。


オリビアは、マルク孤児院に私と出かけ、子供たちと遊んでいるところにお忍びで市域内を見分していたシリウス殿下と偶然出会い。

お互いの国を思う気持ちと、慈悲の姿勢に感銘し今やラブラブ。


(私は孤児院の事務仕事を手伝い隠れてました)


セレーネも、裏庭に案内本を持って行くと一人読書をしているルイス様とばったり出会い。

ルイス様の甘党が判明、案内本で盛り上がり今は毎週二人でお出かけしている。


ダリアもカフェで、無事にパウル様と出会うことが出来て、婚約の話が進行中。


やった♪ みんな幸せになれた。


私 頑張ったわー。

夕日に向けてガッツポーズしながら自分を褒める。


楽しそうな笑い声がして目を向けると、アーロン様が女性と連れ立って帰る姿が目に飛び込んできた。



「……あれ……私……馬鹿じゃない。自分のこと忘れてた」


夕焼けに照らされながら、私の眼から涙が溢れた。


そのまま呆然と立ち尽くしていると、訓練場からルビーが走ってくる。


「アスター。どうしたの?」


私はルビーに抱きついてボロボロ泣いて……私の片思いを吐露した。


「私……前からアーロン様が好きだったんだ。自分のことには感が働かないみたい。

さっきアーロン様、サラサラ髪の女の子と楽しそうに帰って行った。うぅ…………告白もしないで……私の初恋、終わっちゃったよおぉ~」


ルビーが私の両頬を手で挟み顔を上げさせる。


「アスター。早まっちゃダメ、とにかく明日とびっきりにおしゃれして、アーロンに渡す約束してたハンカチ持って訓練場に来て」


「うぅ。明日はお休みでしょ……ぐず」


「とにかく明日の10時に来るように!わかった?」


「は……い」




✿ ✿ ✿



次の日私は、ミミに髪もメイクも完璧に仕上げてもらい、思いを込めてアーロン様の瞳と同じ青い鳥を刺繍したハンカチを握りしめ、心配するダリアと共に学院の訓練場に向かった。


なぜだか、傷の手当用巾着も持ってくる様にルビーに言われて持ってきたけど……。


訓練場の扉の前で深呼吸する。


よし!失恋に終わっても、好きな気持ちを伝えて前を向こう。


厚い扉を開けると、剣を打ち合う音と叫び声が聞こえる。


「悪かったよ、勘弁してくれ」


「乙女を傷つけてタダで済むと思わないで」


訓練場の真ん中ではアーロン様 対 ルビーとエイデン様チームが剣を交えている。

2対1で、アーロン様は既にボコボコのボロボロだ。


少しの間剣がぶつかる音だけが響いていたが、エイデン様の渾身の一撃でついにアーロン様が膝をついた。


「降参だー」


アーロン様は叫びながら両手を広げてひっくり帰った。


慌ててアーロン様に駆け寄り声をかける。


「アーロン様……。」


アーロン様の瞳が開く。


「すげーかわいいアスターがいる」


アーロン様がにっこり笑った。


私はハンカチでアーロン様の汚れた頬を拭う。


アーロン様は私の手を握りグイッと引き寄せ、寝ころんだまま私を抱きしめた。


「アスター。俺がへなちょこで、今まで告白できなくてごめん。

俺はずっと前からアスターが大好きだーーーーー。」


学院中に響きそうな大きな声でアーロン様が叫ぶ。


「昨日も誤解されるようなことしてごめん。昨日は……新入生に道を聞かれて……ごめん」


アーロン様は私を抱きしめたまま体を起こす。


「もう二度とアスターを悲しませたりしないから。

どうか俺を選んでください」


今度はつぶやくように耳元でささやくとアーロン様は私の顔を覗き込む。


ミミが完璧に仕上げてくれたのに、私の顔は、涙でボロボロだ。


「わあ。なんで泣いてるのアスター。俺がいきなり抱きついたから?

嫌だった? 臭かった?」


オロオロするアーロン様に私はハンカチを差し出して叫ぶ。


「私も前からアーロン様が大好きだーーー。」



「キャー。アスターおめでとう」「やったー」


気が付けば観覧席に、シリウス殿下、オリビア、ルイス様にセレーネ。

すぐそばにはエイデン様とルビーに泣いてるダリア。


「ようやく言ったなアーロン。ほんとこいつ振られたらどうしようとかぐずぐずしててさ、ルビーと気合入れてやったんだ」

「次にかわいい私たちのアスターを泣かせたら容赦しないからね!」


エイデン様とルビーはコツンとこぶしを合わせた。


アーロン様が私の方に倒れこむ。


「アスター。怪我しない約束守れなかったけど、俺の手当してくれる?」


「ふふ。この袋だけじゃ足りないみたいなので、我が家に行きましょ」


それから私とダリアはボロボロのアーロン様を連れ帰り、両親に紹介した。




✿ ✿ ✿



アーロン様はシュタルク伯爵家の長子だけれど、もともと騎士が続けたくて家督はひとつ下のデイビス様に譲るつもりでいた。


今はアーロン様が婿に来てくれる方向で婚約の話が進められている。


そして私の隣にはいつもアーロン様がいる。

距離の近さにはまだ少し慣れないけれど、好きな人の隣は幸せだ。


~ 終わり ~













爵位クラス分けは男爵・子爵で2クラス、伯爵で2クラス 侯爵家以上で1クラス。

1年、2年ともにクラスわけに敗北したアーロンは死ぬ気で勉強して何とかSクラスに入りました。


誤字脱字などいつもありがとうございます。

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