表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪徳令息と悪徳令嬢が婚約し、しかも町の領主になり、住民は「もう終わりだよこの町」と嘆くも意外と善政を敷く模様  作者: エタメタノール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/40

第4話 愚民ども、ギロチンを作ったぞ!

 晴れた日、モレス家邸宅の庭に金槌の音が鳴り響く。


「できたーっ!」


 声を聞いたエレンシアとサティがやってくる。


「どうなさったの?」


「何ができたんです?」


「見ろ、これを!」


 アルゲンが作ったのは木製のギロチンであった。


「一から作ったんですか?」


「ああ、自分で設計図書いて、木材切って、刃を研いで……苦労したぜぇ~。俺にかかれば楽勝だけどな」


 アルゲンは自慢げに説明をする。


「まあ、すごい!」


 エレンシアは素直に目を輝かせる。


「ダンスもそうでしたが、本当に領主以外は何でもできそうですね」


「領主もできてるから!」


 サティのツッコミに、アルゲンはたまらず抗議する。


「で、これをどうするんです?」


「う~ん、作った後のことは考えてなかった」


「見切り発車にも程がありますよ」


 すると、エレンシアが――


「庶民たちに見せつけるというのはどう?」


「それいい! 庶民たちに俺の傑作を見せつけてやる!」


 アルゲン、エレンシア、サティの三人は仲良く公園までギロチンを運ぶのだった。



***



 公園までギロチンを運んだアルゲンは、町民を集める。


「これはすごい……」

「マジでギロチンだ」

「よく作ったわね……」


 出来栄えそのものは完璧といっていいので、町民らは賞賛の声を上げる。


「そうだろう、そうだろう。もっと褒めていいぞ、愚民ども」


 アルゲンが調子に乗って苦労話を語り始め、町民たちはげんなりする。

 それが落ち着いたところで、スタットが尋ねる。


「アルゲン様、これを何に使うんです?」


「そりゃ当然、処刑だろ」


「誰を?」


「誰って……うーん」


 アルゲンは腕組みする。


「この町で一番いらない奴を粛清するってのはどうだ!?」


 すると――


「お、おい! ……なんでみんな俺を見るんだよ! や、やめろッ!」


 ほぼ全員の視線を注がれ、アルゲンは青ざめる。

 エレンシアが寄り添う。


「アルゲンが斬首されるなら私も刎ねられますわ!」


「おおっ、エレンシア!」


 二人はそのまま見つめ合う。


「あなたと私、二人で首だけになるのよ!」


「ありがとう、エレンシア……」


「アルゲンと二人でなら、首がなくなっても悔いはないわ!」


「嬉しいぞ……。俺はそんなお前に首ったけだ!」


「まあ、アルゲン……!」


 恍惚とした表情で、歯の浮くような会話を交わす。

 サティが呆れる。


「このままお二人だけでミュージカルが始まっちゃいそうですね」


 スタットがため息をつく。


「君も苦労してるみたいだね」


「これも仕事ですから」


 アルゲンとエレンシアはしばらく自分の世界に入り浸り、何分かダンスをすると、ようやく元の世界に戻ってきた。


「で、どうするんです。これ」サティが尋ねる。


「銅像の隣にでも飾るか?」


「さすがに危ないですよ」


 小さな子供も遊ぶ公園で、ギロチンを放置はさすがに危険すぎる。


「残念ながら、物置行きですね」


「物置!? せっかく頑張って作ったのに……!」


 アルゲンががっくりしていると、そこへ――


「おやおや、面白いものがあるねえ」


 老婆のランネだった。

 年は90歳を超えており、ロクスの町最高齢を誇る。白髪頭で腰は曲がっているが、まだまだ元気である。


「愚民婆さん、なんの用だ!」


「おやアルゲンちゃん。大きくなったねえ」


「“ちゃん”付けすんな! 俺は貴族で領主だぞ!」


「まあ、いいじゃないか。あたしはアルゲンちゃんが立派になって嬉しいよ」


「ぐ……!」


 アルゲンもたじたじになってしまう。傲慢という字がスーツを着て歩いているような男だが、昔からこの老婆には弱いのだ。


 すると、ランネは大きなスイカを取り出した。自分で持ってきたようだ。

 それをギロチンの刃の落下位置にセットする。


「おいおい、愚民婆さん、何する気だ。危ないぞ」


 ランネは止める間もなくレバーを引き、刃を落とすと、スパァンといい音がした。

 スイカが綺麗に切断され、中の赤い果肉があらわになった。


「おお、すげえ! 真っ二つかよ!」


 自分で作ったにもかかわらず、アルゲンは切れ味に驚いてしまう。

 二つになったスイカをランネは袋に入れる。


「これをひ孫たちに食べさせてあげるわ。どうもありがとうねえ」


「いや、どういたしまして……」


 ランネはそのまま公園を去っていった。

 しばらく皆、呆然としていたが、アルゲンがひらめく。


「……これだ! 硬くて切れない野菜とかを切る器具として使うんだ!」


「いいアイディアだわ、アルゲン!」


「悪くありませんね」


「よぉし、ギロチン! お前の役割が決まったぞ!」


 アルゲンに叩かれたギロチンは、心なしか嬉しそうに刃を光らせた――ようにも見えた。



***



 アルゲンお手製のギロチンは邸宅の庭に置かれることになった。

 モレス家の人間に届け出をすれば、誰でも使うことができる。

 ただし、アルゲンやエレンシアに申し込むと自慢話がうっとうしいので、ほとんどの人間はサティに申し込んでいるが。


 サティがギロチンの使用記録を報告する。


「今日もカボチャ、カブ、スイカなど、さまざまな硬い食べ物を切ってましたよ。中には角材や氷を切らせて欲しいという依頼もありました」


「さすが俺のギロチンだな!」


「素晴らしいわ!」


「……だが、そんなギロチンでも切れないものがある!」


「なんです?」


「それは……俺とエレンシアの愛だ!」


「まあ、素敵!」


 二人は二人だけのミュージカル世界に入っていく。

 その外の世界にいるサティは首を横に振ってつぶやく。


「二人そろってギロチン台に送り込みたい気分ですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
人間の首を切るよりも野菜を切って人間に喜ばれる方がギロチン冥利に尽きるでしょうな。
包丁代わりのギロチン……………。 キチンと掃除をしないとカビが生えそうだ。 頑張れ、サティ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ