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悪徳令息と悪徳令嬢が婚約し、しかも町の領主になり、住民は「もう終わりだよこの町」と嘆くも意外と善政を敷く模様  作者: エタメタノール


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第39話 愚民ども、俺とエレンシアの結婚式だ!

 アルゲンの怪我がすっかり癒えた頃――モレス家邸宅のホールで結婚式が開かれた。

 司会はサティが務め、客席にはモレス家とユーベル家の親族はもちろん、サティの父サルダス、そして大勢の町民が招かれている。


 メイド服姿のサティが式を進行する。


「それではお二人に入場して頂きましょう。どうぞ!」


 白のタキシードに身を包んだアルゲンと、純白のウェディングドレスを着たエレンシアが登場する。いつもの必要以上の派手さは抑えたようだ。

 このまま額縁に入れて絵画にしても様になるような、貴族のカップルとしての風格を醸し出している。


「どうだぁ! 俺のこの晴れ姿! かっこいいだろ! イカしてるだろ!」

「オーッホッホッホ、見とれても私はもう結婚しちゃうわよ! 残念だったわねぇ!」


 しかし、そんな風格は一瞬で消し飛んだ。

 アルゲンの両親は笑っているが、殆どの人間はため息をついている。


 二人が神父の前まで歩く。

 ロクスの町に教会はないので、他の町から招待した神父である。


「健やかなる時も病める時も、永遠の愛を誓いますか?」


 アルゲンは元気よく――


「誓いまぁす!!!」


 エレンシアもはきはきと――


「誓いますわ!!!」


 こんな二人を見てサティが冷たくつぶやく。


「ムードもなにもありませんね……」


 だが、誓いのキスを交わす二人の所作は優雅で完璧であり、さすがは貴族というところを見せつけた。

 もっともその後の高笑いで、何もかも台無しになってしまうが。


 そのままホールで食事会が始まる。

 アルバートが皆に言う。


「料理はたっぷり用意しているので、遠慮なく食べてくれ」


 町民たちは豪勢な料理に舌鼓を打つ。

 しばらくは自由時間が設けられる。

 タイミングを見計らってサティが――


「ではここで、町長様にスピーチをして頂きましょう」


「え、私!?」


 礼服姿のスタットが焦る。


「私よりも伯爵様や、エレンシア様のご親族の方が……」


「いや、君がやってくれ。この一年間、よくこの町を支えてくれた」


 アルバートがうなずく。


「支えたのは俺だけどな!」


 アルゲンは無視される。


「では……」


 スタットが席を立つ。軽い自己紹介の後、おもむろに話を始める。


「正直な話、私はアルゲン様がこの町の領主になった時『これでこの町は終わった』と確信しました」


 どっと笑いが起こる。アルゲンだけは怒って野次を飛ばす。


「きっとこの人は税を三倍ぐらいにし、無茶な政策を行い、町民は地獄のような生活を強いられるのだと……」


 当時スタットを始めとした町民は絶望していた。

 その絶望度は『緋色の浄化団』が攻めてくる時よりも上だったかもしれない。


「しかし、アルゲン様は税を上げるどころか、下げてしまいました。あれには私も驚きました」


「あん時、お前ら俺に金渡そうとして暴動起こしたよな! あの恨み忘れてないからな!」


 アルゲンの怒声をスルーし、スタットは続ける。


「その後も銅像を建てたり、ギロチンを作ったり、グミを作ったり、まあ色んなことをやりました。実力と経験のある貴族らしく安定した統治をしていた伯爵様とは大違いでした。しかし、不思議と町民たちはまとまっていきました」


 町民たちがアルゲンの数々の施策を思い返す。

 無茶な試みもあったが、決して悪い結果はもたらさなかった。


「アルゲン様には悪い男に引っかかった娘を助けてもらった時もあります。あの時は本当に感謝しました」


「あの時の俺はすごかった……」自画自賛するアルゲン。


「そして、盗賊団との戦い。アルゲン様は皆に避難しろと言いつつ、自分一人で戦うことを決意されました。いくらなんでも無茶すぎますが、そのことがかえって町民たちを一致団結させたのです。アルゲン様は見事盗賊のリーダーを打ち倒し、町民に犠牲が出ることなくこの事件を解決しました。本当にありがとうございます」


 スタットが深々と頭を下げる。

 アルゲンはやや照れ臭そうに応じる。


「いや、いいってことよ」


「そんなあなたがついに正式に領主となり、エレンシア様と新たなステージに羽ばたこうとしている。私は町長として、また一人の男として、あなた方の結婚を祝福します。おめでとうございます!」


 スピーチが終わった。

 町民たちからは歓声が湧き、アルゲンの両親、エレンシアの両親も拍手でスタットを称える。


 アルゲンは腕を組み、スタットに呼びかける。


「……まあ、なんだな。俺もこうまで祝福されちゃ、領主として何もしないというわけにはいかないだろうな」


 一息置くと――


「お前らへの愚民呼ばわりは、そろそろやめてやってもいいかなって思ってる」


「はぁ」


「なんだその気のない返事は!? せっかく愚民から卒業させてやろうってんだぞ!?」


「いや別に……もう慣れちゃいましたし」


 スタットだけでなく、他の町民たちも――


「我々も別に……」

「なぁ?」

「むしろ今更変えられても感が……」


 アルゲンは顔を真っ赤にする。

 自分としては最上級の褒美のつもりで与えた“愚民呼ばわり終了”が全く喜ばれていない。


「くっ、くそ! だったらこれからも愚民呼ばわりしてやる! いいんだな!?」


「どうぞどうぞ。お好きなように」


 ホールは笑い声で包まれた。


 そして、アルゲンとエレンシアは手を繋ぎ、堂々と宣言する。


「愚民ども、支配してやるぞ!!!」

「庶民たち、支配してあげますわ!!!」


 高笑いする二人を見て、スタットは思う。


「うむむ……こうして見ていると、やはりこの二人に領主を任せるのは不安になってきた……」


 フィーユが笑う。


「きっと大丈夫よ、お父さん」


 サティも拳を握り締め、うなずく。


「ええ、いざとなったら若様はしっかり教育しますので」


 白いタキシード姿のアルゲンはそれを見て、ひどく青ざめていた。

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― 新着の感想 ―
神父さん、ビックリしただろうなあ。 これが……………領主?って。 まあ、噂には聞いているだろうけど。
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