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悪徳令息と悪徳令嬢が婚約し、しかも町の領主になり、住民は「もう終わりだよこの町」と嘆くも意外と善政を敷く模様  作者: エタメタノール


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第34話 愚民ども、特に何もない平和な一日だ!

 朝、アルゲンは目を覚ます。

 窓を見ると、天気は晴れで、空気は澄み切っている。


「いい朝だ……」


 すぐさま髪を整え、紫色のスーツに着替え、ドレス姿のエレンシア、メイド服姿のサティとともに朝食を取る。


「トーストにバター……これが一流の男の食事だ」


「通だわ、アルゲン!」


 サティは冷めた口調で言う。


「極めてオーソドックスな朝食ですけどね」


 食べ終わったアルゲンはサティに問う。


「今日の予定は?」


「ありません」


「へ?」


「ですから……ありません」


 アルゲンはきょとんとする。


「何もないの?」


「ないですね」


「町内の会合も? 事務仕事も?」


「はい。事務仕事に関しては、この間珍しく頑張っていましたし」


 サティは“珍しく”を強調したが、アルゲンはかまわず鼻を高くしていた。


「そうだよなぁ。俺頑張ったもんなぁ……」


「すごいわ、アルゲン!」


「いやいや、エレンシアがいたからこそさ……いつも俺を支えてくれてありがとう」


「アルゲンったら……私こそ、あなたがいたからこそここまで生きてこられたのよ」


 うっとりし合う二人を見て、サティはため息をついた。


「二人で何もない日を堪能するか! 踊るぞ!」


「そうね!」


「そもそもお二人に“何もない日”などあり得ませんでしたね」


 二人は一時間以上、ダンスを踊った。

 サティは「お二人の体力はすごい」と一応の褒め言葉を与える。


 昼食では、三人はサラダとパスタを食べる。

 麺を飲み込むと、アルゲンが絶賛する。


「このトマトソース、イケるな」


 エレンシアも同意する。


「ええ、腕を上げたわね、サティさん」


 サティが食べながら頭を下げる。


「ありがとうございます」


 食後のコーヒーを飲むアルゲン。


「ん……これもいい豆を使ってるな、サティ」


「ありがとうございます」


 しかし、内心では――


(本当は安いやつですけど、黙っておきますかね)


 昼食後、アルゲンとエレンシアがリビングでチェスをする。

 アルゲンは血眼になって駒を動かすも、どんどん顔が険しくなっていく。


「私の勝ちよ!」


「うぐぐぐ……」


 その後も何連敗かした後、サティにトレーニングを申し込む。


「チェスなんて所詮駒の戦争! やっぱり俺は実戦派だ! サティ、稽古をつけてくれ!」


「かまいませんよ」


 運動着に着替えたアルゲンとサティが庭で稽古を開始する。

 しかし、やはりサティには歯が立たない。


「うぐぐ……強い……」


「いえ、若様もずいぶんお強くなられましたよ。今日は手加減する余裕がありませんでした」


「え、ホント?」


「ええ。この間、父が来た時に“岩砲”を会得し、エレンシア様のお兄様とも渡り合った。その自信があなたをレベルアップさせたのでしょう」


「マジかよ! やったぁ! 俺も確実に強くなってるのな!」


「すごいわ、アルゲン!」


「つ~よ~い~ぞ~、おぉれ~!」


「つ~よ~い~わ~、アルゲェ~ン!」


 恒例のカップルミュージカルが始まってしまう。

 サティは二人をまとめてノックダウンしたい衝動をなんとか抑えた。


 稽古後にはグミを食べる。

 ロクスグミはますます進化しており、アルゲンとエレンシアはもりもり口に入れていく。


「美味いな! いくらでも食えちまう!」

「美味しいわねえ~! やめられないし止められないわ!」


 しかし――


「グミ食いすぎて、腹いっぱい……」

「私も、ですわ……」


 サティは呆れる。


「やると思いましたよ……その分ではお夕食はあまり食べられませんね。いつも通りの量出しますけど、残して下さい」


「ああ、そうする……。夕食は残すわ……」

「無理して食べても仕方ないものね……」


 ――と思いきや、結局全部食べた。


「ごちそうさま!」

「美味しかったですわ~!」


 サティは唖然とする。


(そういえばこの二人が食事を残したところ、見たことないかも……)


 食事を済ませたアルゲンは、一息つく。


「何もない日ってのもいいもんだな」


「そうですわね」


 イチャイチャする二人を尻目に、サティは一人窓の外を覗く。

 やや強い風が吹いていた。


「今夜は外がうるさくなりそうですね……」


 サティは思う。


(今日のこの穏やかさが“嵐の前の静けさ”でなければよいのですが)


 そして、この予感は現実のものとなってしまう。

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― 新着の感想 ―
つまり、嵐が来る! どこの嵐が来るんだろう? タレント? ゲームセンター?
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