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悪徳令息と悪徳令嬢が婚約し、しかも町の領主になり、住民は「もう終わりだよこの町」と嘆くも意外と善政を敷く模様  作者: エタメタノール


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第33話 愚民ども、取材を受けることになったぞ!

 ある昼下がり、モレス家に来客があった。


「若様、お客様です」


「誰だ?」


「新聞社の方ですって」


「新聞社!?」


 来客は新聞社からの使者であった。

 王都には『キャスタウン紙』という新聞社があり、王都民に情報を提供し、楽しませるための新聞を発行している。

 新聞が出回るのは、流通ルートの関係もあり王都とその周辺のみであるが、新聞社の記者は王国中を取材する。それだけ王都民は娯楽や国の情報に飢えているのだ。

 アルゲンは領主として応対する。


「ほう、取材したいと?」


「ええ、若い領主様がすでに一年近く町を切り盛りされているとのことで、インタビューをさせて頂きたく思いまして、今日は許可をもらいに……」


「いいだろう、受けよう!」


「ありがとうございます! では本格的な取材は一週間後となりますので、どうぞよろしくお願いいたします」


「うむ、任せておけ」


「それと、この町の町長さんにも同席頂ければありがたいかと」


「愚民町長を? ……まあいいか、呼んでおく」


 そのまま使者は帰っていった。


 アルゲンがリビングのソファにふんぞり返る。


「……どうよ。ついに俺に取材だってよ!」


「すごいわ、アルゲン!」


「これで俺の名は全国に轟く! エレンシアもその婚約者として名が轟く! 俺たちのバラ色の未来は約束されたようなもんだ!」


「素敵ッ!」


 抱きつくエレンシアを、アルゲンが優しく迎える。


「二人でどこまでも羽ばたこう、エレンシア!」


「ええ! 空の果てまで、いいえ、輝く星々まで!」


 ダンスを始めてしまう二人を見つつ、サティはぼそりとつぶやく。


「全国に悪名が轟かなければいいのですが……」



***



 取材当日になった。

 モレス家邸宅のリビングには、スーツ姿のアルゲンとスタットがいる。

 サティとエレンシアは脇役に徹する。


「お、おい……愚民町長、緊張しすぎじゃないか?」


「アルゲン様こそ……」


 二人とも顔が強張っている。


 サティが声をかける。


「新聞社の方が来ましたよ」


「来たか……。よし、入れろ!!!」


「なんなんですか、そのテンションは……」


 新聞社の記者は二人組だった。

 聞く係とメモを取る係に分かれている。


「このたびは『キャスタウン紙』の取材を受けて下さり、ありがとうございます」


 頭を下げる記者たちに、アルゲンは早くも汗をかいている。


「い、いや……かまわんよ。なぁ、愚民町長?」


「え、ええ。取材ぐらいどんと来いですよ」


 二人ともカチンコチンである。

 エレンシアは温かい眼差しで、サティは冷めた目つきでそれを見守る。


「ではまず、お二人がそれぞれ領主、町長として大切にしていることから教えて下さい」


 アルゲンが咳払いしつつ答える。


「そ、そうだな。やっぱり一番大切なのはエレンシアで、二番目はこのスーツ、愚民どもは百番目ぐらいかな」


 完全に赤点なアルゲンの答えであった。

 続いてスタットも答える。


「そ、そうですな。とりあえず、アルゲン様が余計なことをしないことが一番大切で……本当にいつもハラハラしてまして……」


「誰が余計なことをしてるだとぉ!?」


「ほら、そういうところですよ!」


「な、なんだとぉ!?」


 二人とも浮足立ってしまい、インタビューはちっとも進まない。

 しかし、時間が経つにつれ、二人もだんだん緊張がほぐれてくる。


 ティーカップ片手に、リラックスムードで質問に答えるアルゲン。


「あの銅像を作るのには苦労したんだ」

「図書館があった方が住民の教育水準が上がると思ってな」

「最近は馬を買ったんだ。グリントっていうんだが、後で触らせてやるよ」


 だんだんと調子に乗ってきて、話もそれにつれ長くなり、記者の顔にも疲れが見え隠れする。


「ま、俺にかかればこんなちっぽけな町の一つや二つの経営、余裕ってことよ。ハッハッハッハッハ!」


 隣に座るスタットもすっかり名士気取りになっている。


「私も伯爵様から命を受けて長年町長を務めておりまして、私がいればこそのロクスの町と自負しております」


 アルゲンが睨みつける。


「誰が、お前いればこそだ! お前なんかいなくても何も変わらねえよ!」


「アルゲン様こそ! 我々がブレーキになってるからあなたは無茶できるんでしょうが!」


 喧嘩を始める二人にエレンシアは目を輝かせる。


「まあ、楽しそう! 私も混ざってみたいわ!」


 サティは呆れる。


「記事にするために取材されてるのに、恥を晒しているだけのような……」


 やがて取材は終わり、二人の記者は王都に帰っていった。

 アルゲンとスタットは――


「まあ、こんなところだろうな」


「ええ、いい記事になりそうですな」


 揃って自信に満ちた表情をしていた。この二人、案外似た者同士なのかもしれない。



***



 後日、『キャスタウン紙』の新聞がアルゲンの元にも届いた。

 普段は王都民向けの新聞であるが、アルゲンが取材を受けた号は特別に届けてもらう手筈になっていた。

 アルゲンはウキウキして紙面を覗くが――


「なんだこりゃ!?」


「どうしたんですか?」サティがやってくる。


「この記事を見ろ!」


『王国の面白人物特集! 今回はロクスの町の若領主!』


 アルゲンは完全に“面白い人物”扱いであった。

 記事の中でも軽快なジョークを飛ばすユニークな人物として紹介されている。

 アルゲンとしてはジョークなど飛ばしてはいなかったのだが……。


「……ふざけんな! せっかく取材を受けたのに! 俺をオモチャにしやがって……!」


 サティが尋ねる。


「じゃあこの新聞、破り捨てますか?」


「いや……取っておく」

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― 新着の感想 ―
いやあ、妥当だわ。 むしろヤバい領主扱いされないだけマシだった。 というか、領主(仮免)か。まだ。
面白人物枠www ………………………妥当だ!? 一歩間違えば険悪と捉えられかねない領主と町長の応酬を、エレンシアの反応が特に大事じゃないと判断させ、サティの冷静な反応が単なるボケとツッコミであると認…
「いや……取っておく」 うん。その気持ち分かる。 少し恥さらしのものでも、新聞やTVに出たときのビデオは撮っておきたいものだよな。それが番組最後に出てくるテロップの名前だけでも...
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