表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪徳令息と悪徳令嬢が婚約し、しかも町の領主になり、住民は「もう終わりだよこの町」と嘆くも意外と善政を敷く模様  作者: エタメタノール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/40

第2話 愚民ども、俺の銅像を建てるぞ!

 ロクスの町には公園がある。

 広い芝生があり、遊具も完備され、休日は大勢の家族が集まり賑やかになる。

 町民たちの憩いのスペースといえる。


 そんな公園に、派手な紫色のスーツでやってきたのは――


「相変わらず愚民どもがたむろしていやがるな」


 ロクスの町の現領主アルゲン。


「庶民たちをこうして見下すのは楽しいですわね」


 横にはアルゲンの婚約者エレンシア。

 真っ赤なドレスを着て、桃色の扇子をあおいでいる。


 あまりにも場違いな二人の登場に、公園の利用者たちはげんなりする。


「アルゲン様だ……」

「エレンシア様もいるぞ」

「二人揃って何しに来たんだ……?」


 こんな冷たい視線も彼らの中では「愚民どもが俺たちに注目している」「庶民たちが私たちに目を奪われている」と脳内変換してしまう。


「しっかし、この公園、どうも殺風景だとは思わないか?」


「ええ、エレガントさに欠けるわね」


「だろう。何かオブジェでも作りたいところだが……」


 アルゲンが閃く。


「そうだ! 俺の銅像を建てよう! 領主となった俺の銅像を建てて、愚民どもにさらに俺を崇めさせるんだ!」


 エレンシアは同調する。


「それはいい考えね! きっとみんな喜ぶわ!」


「よし、そうと決まれば、予告しておくか。俺の銅像を建てるとな!」


 アルゲンは町長スタットを始めとした町の主立ったメンバーを公園に集めた。


「アルゲン様、何をする気で……?」


 スタットは露骨に顔をしかめるが、アルゲンはふんぞり返る。


「この公園に俺の銅像を建てる!」


 スタットはため息をつくが、アルゲンはまるで気づいていない。


「建てるのはいいとして、誰が作るんです?」


「俺だ」


「え、自分で!?」


「当然だろう。お前ら愚民にこんな偉大な事業を任せられるかぁ!」


「……自分でやるなら、勝手にやって下さい」


「おう、勝手にやってやる! ハーッハッハッハッハ!」


「頑張ってね、アルゲン! オーッホッホッホッホ!」


 笑いながら自宅に戻っていく二人を、スタットは呆れた表情で眺めていた。


「なんなんだ、あの二人は……」



***



 モレス家の邸宅――アルゲンは自室にこもり切りとなる。

 サティがエレンシアに尋ねる。


「若様、このところ食事の時以外はずっと部屋にこもってしまって……どうしたのでしょう?」


「銅像を作ってるのよ」


「まあ、銅像」


「アルゲンのことだから、きっと素晴らしい銅像を建てるに違いないわ! オーッホッホッホッホ!」


「私はあまり期待せずに待つことにします」


 サティは静かな目と声で答えた。



***



 二週間後、アルゲンが町民らを公園に集める。

 彼の横には何かを包んだ白い布があった。


「愚民ども、ちゅうもーく! これより銅像の除幕式を行う!」


 町民たちはささやく。


「マジで作ったのか」

「口だけだと思ってた」

「どうせ酷い出来に決まってる……」


 あまり盛り上がらないのでアルゲンが不満げな顔をする。


「おい、拍手がないぞ! 拍手!」


 パラパラとまばらな拍手が沸く。


「コラァ! もっとちゃんと拍手しろ!」


 大きな拍手が鳴り響き、アルゲンは満足げに微笑む。


「よしよし、それじゃ除幕式を始めるぞ。見て驚けよ。これが俺の――銅像だ!」


 アルゲンが布を取り去ると、そこには等身大のアルゲン像があった。

 スーツ姿で左手は腰に当て、右手はまっすぐどこかを指差している。

 かなりリアルにできており、素直に感嘆の声が上がる。


「へえ、すごい!」

「よくできてるなぁ!」

「本人にそっくりだ……!」


 町長のスタットも目を丸くしている。


「これはすごい! アルゲン様にも意外な才能があったんですな」


「だろ! ん、意外?」


 エレンシアとサティも――


「さすがアルゲン、素晴らしい出来栄えだわ!」


「よくできていますよ、若様。正直見くびってました」


「そうだろう、そうだろう! まあ、この程度、俺にかかれば楽勝だがな!」


 アルゲンは銅像作りの苦労話を始める。

 やれ材料は厳選しただの、鏡を見ながらポーズを決めただの……あまりに長いので、町民たちもうんざりしてくる。

 そんな時だった。


「ねえねえ、これ蹴っていい?」


 赤毛の少年クルムが銅像に近づいてきた。


「いいわけねえだろ――あっ!」


 アルゲンが制止する間もなく、クルムは銅像を蹴ってしまった。


「このクソガキィ!!!」


 アルゲンは激怒するが、クルムは目を輝かせている。


「すっごーい!」


「ん?」


「この銅像、ビクともしないや!」


「ん? おお、そうだろ。なにしろ超頑丈なスケイル銅を使ったからな!」


「領主さま、もっと蹴っていい?」


「お? いいぞ、蹴れ蹴れ! 蹴りまくれ!」


 アルゲンはつい許可を出してしまう。すると――


「俺も蹴っていいですか!?」

「殴っていいかしら?」

「僕も!」


 アルゲンも機嫌をよくしてしまう。


「どんどんやれ! 愚民ども程度の攻撃じゃ、この銅像は壊せないぜ!」


 町民が次々にアルゲン像を殴る蹴るするが、銅像は全く壊せない。


「私もやっていいですか?」とスタット。


「いいとも!」


 スタットがキックを叩き込む。アルゲン像は傷一つつかない。


「私もよろしいですか?」とサティ。


「いいぞ!」


 サティの拳が炸裂。かなりいい音がした。


「私のパンチでも壊れないとは……さすがですね」


「なんなんお前……?」


 サティのメイドらしからぬパンチ力にアルゲンはたじろぐ。


 次々にアルゲン像は攻撃を加えられたが、壊されることはなく、無事除幕式は終わった。


「あー、スッキリした」

「気持ちよかった~」

「スカッとしたわ!」


 アルゲンも満足そうにうなずく。


「愚民どもからも好評だし、最高の除幕式になったな、エレンシア!」


「ええ、とても素晴らしかったですわ!」


 そんな中、サティはじっと自分の拳を見つめていた。


「私もまだまだ未熟ですね」



***



 その後、公園のアルゲン像はすっかり名物になった。


「くっそ~、今日はムカついたぜ! アルゲン様の銅像でも殴りに行くか!」

「俺も行く!」

「あれ殴るとスカッとするよな!」


 アルゲン像は町民のストレス解消役として大活躍。

 少しずつ傷は増えていくが、相変わらず自信満々のポーズを取っている。


 邸宅で、アルゲンはそれを自慢げに語る。


「今日も俺の銅像がみんなからボコボコに殴られてたが、ビクともしてなかった! 最高の気分だ!」


「それはいいことだわ、アルゲン!」


「だろう!? ハーッハッハッハッハ!」


 サティはそんな二人を冷めた目で見つめていた。


「まあ本人が満足しているのならこれで良しとしましょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アルゲン、ホントに『やれば出来る』人間なんだな。 まさかお手製の銅像とは……………。 というか、蹴れる高さって事は台座みたいなのはないなか。
おだてられると木に登りそうなアルゲン様。 戦闘力が高すぎるメイドは、何を目指しているのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ