表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪徳令息と悪徳令嬢が婚約し、しかも町の領主になり、住民は「もう終わりだよこの町」と嘆くも意外と善政を敷く模様  作者: エタメタノール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/40

第19話 愚民ども、王子が来たぞ!

 人々が働き始める朝の時間、町の大通りに一台の馬車がやってきた。

 屋根に竜の紋章がつき、いたるところに金箔が施された豪奢な馬車であった。

 一目で「高貴な人が乗っている」と分かる。緊張が走る。


 そして、中から一人の少年が降り立つ。年齢は十代半ばといったところか。

 輝くような金髪で、透き通る青い瞳を持ち、赤いマントをつけている。

 明らかに只者ではなく、周囲がざわつく。


 そして、開口一番――


「聞け下民ども!」


 げ、下民……!?

 誰かを思い起こさせるような一言だった。


「僕は第一王子セオドア・ローン・フィリウスである」


 さらに周囲がざわつく。

 第一王子といえば王太子である。次期国王が、この中堅ロクスの町にやってきたということになる。


 騒ぎを聞きつけた町長スタットがやってくる。


「みんな、どうしたんだ?」


「どうやらお前が町の有力者のようだな」


 再びセオドアが自己紹介をし、こう言い放つ。


「今僕は見聞を広めるため、国中を回っているんだ。今日は夕方までこの町で遊びたいと思う。せいぜい僕を楽しませてみせろ、下民ども」


 周囲の人間から血の気が引いていく。


「ああ、そうそう……」


 セオドアが近くにいる従者をちらりと見る。


「しばらくは一人になるが、もしこの町で僕に何かあったら、その下手人はただちに処罰しろ。処刑してもかまわん!」


「はっ!」


 これを聞いてスタットは青ざめる。


(アルゲン様を超えるとんでもない奴が来てしまった……!)



***



 スタットの不安は的中していた。


 セオドアはあちこちの店で飲み食いし放題。もちろん代金など払わない。

 しかも――


「ふん、不味いな」

「なんだこれ? こんなものを王子である僕に食わせるな!」

「下民はこんなもの食ってるのか……王子に生まれてよかった」


 食べては暴言を吐きまくる。


 しかし、怒ってはいけない。たしなめてもいけない。全てを肯定せねばならない。

 下手すれば関係者全員が処刑されかねない。処刑は大げさにしても、王子に目を付けられていいことなど何もないだろう。

 スタットはひたすらお世辞を繰り返し、セオドアを接待する。


「殿下のお口に合わないお食事ばかりで申し訳ありません……」


「本当だな。チンケな町の下民はチンケな食事しか出せないようだ。もっと努力しろ」


 スタットは内心では歯を食いしばりながらにっこり笑う。

 この王子が町にいるのは夕方まで。それまで辛抱すれば何とかなる。

 半日足らずの辛抱だと


 菓子屋のウィリーの店を訪れる。


「この『ロクスグミ』いかがでしょう? 町の名物でして……」


「グミか……」


 セオドアがロクスグミを口にする。その目がぱっと開く。


「これはなかなかイケるじゃないか! 美味いぞ!」


「ありがとうございます!」


 今や改良に改良を重ね、すっかり銘菓となったロクスグミは王子の口にも合ったようでホッとする。

 これである程度ポイントも稼げた。

 少なくとも「ロクスはひどい町だった」と報告されるようなことはないだろう。


 順調に接待を進めつつ、スタットは思った。


(この王子とアルゲン様を絶対に会わせてはいけない……!)


 アルゲンは言うまでもなく劇薬で、この王子セオドアもまた劇薬である。

 そんな二人が出会ったら、どんな化学反応が起こるか分からない。

 それに、アルゲンは間違いなくセオドアに粗相をしてしまう。そうなれば、厳しい処分を受けるだろう。貴族籍を剥奪されてしまうかもしれない。

 フィーユの件では助けてもらった恩もあるし、アルゲンをそんな目にあわせたくないという思いもあった。


(アルゲン様は今の時間、家にいるはず……公園に行こう)


 スタットはセオドアを公園まで連れていく。


「こちらがロクスの町の公園です」


「これが公園? 王都の公園に比べると、しょぼいもんだなぁ」


「おっしゃる通り。王都にはとても敵いませんよ」


 張り倒したくなる気持ちをこらえつつ、スタットはどうにか笑顔を作って接待する。

 ところが――


「なんだあれ?」


 セオドアがアルゲンの銅像を指差した。


「ああ、あれですか……。領主様の銅像です」


「領主? ふーん、いかにも無能そうな、バカっぽい奴だな」


 かつてはアルゲンをバカ呼ばわりしていた身としては複雑な心境だが、スタットは不快にも感じていた。

 そんな自分の変化にも少し驚いていた。


「まだお若いですが、よくやってくれていますよ」


 自然とかばう言葉が出てしまう。


「ふうん。で、その領主には会えるのか?」


「ええっと……今日は難しいかもしれません。出かけておりますので……」


 スタットは嘘をついた。


「まあ、こんなバカそうな奴に会っても時間の無駄だしな。会わなくてもいいか」


 そして――セオドアは銅像に唾を吐きかけた。

 けらけら笑う。


「ふふん、これで少しは綺麗になったんじゃないか?」


(メチャクチャするなぁ、この王子……)


 スタットが顔をしかめたその時だった。


「何やってんだコラァァァァァッ!!!!!」


 アルゲンであった。


「ん?」セオドアが振り返る。


「今俺の銅像に唾吐きやがったな! 何してんだてめえ!!!」


 いつもの紫スーツ姿でアルゲンがいた。怒りで前髪も心なしかいつもより跳ねている。

 まさか公園に来ていたとは……スタットは青ざめる。

 最悪な王子と最悪な領主が出会ってしまった。まさしく――


(最悪の事態になった……!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
劇薬×劇薬の結果は一体何が出来上がる事やら。 毒か兵器かまさかの薬か。
愚民と比べると、庶民や下民はただの身分差なのでマトモなはずなのに…… 言ってる人間がただ傲慢なだけなので印象が違いますね。可愛げがないから不快度が高い……
混ぜるな危険
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ