第17話 庶民たち、お茶会を開くわよ!
うららかな午後、テラスのテーブルにいるエレンシアに、サティが紅茶を淹れる。
「どうぞ、エレンシア様」
「ありがとう、サティさん」
実に優雅な光景である。
「今日は小腹が空いちまって……」
その近くでは、アルゲンがスコーンをむさぼるように食べていた。
実に粗野な光景である。
エレンシアが言った。
「アルゲン、そういえば私たち、近頃お茶会に出ていないわね」
「まあな。俺たちも婚約して、領主になって、そういった社交イベントは全然出なくなったからな」
あちこちの夜会やサロンを荒らした二人がいなくなったので社交界はずいぶん平和になったと言われている。
「私もお茶会が恋しくなってしまって……どう? この町でお茶会を開いてみない?」
「茶会を?」
「ええ、庶民たちにもお茶会の楽しさを教えておいた方がいいと思うの」
アルゲンはあまり乗り気ではない。
「愚民どもに茶の味なんて分かるのかねえ?」
「分からないからこそやるのよ」
「ほう?」
「お茶会はエレガントなイベントよ。庶民たちに教えれば庶民はみんなエレガントになって、アルゲンを尊敬してくれるかも……」
「なるほど! それいい!」
途端にアルゲンは身を乗り出す。
「お茶会をやろう! そして、愚民どもに俺を崇めさせてやる!」
「惚れ惚れするわ、アルゲン!」
この様子を見ていたサティは密かにこう思った。
(エレンシア様も、若様の操縦がだいぶ上手くなってきた気がしますね)
***
エレンシアによってお茶会の開催が発表され、その数日後にはテラスでお茶会が開かれた。
テーブル席がいくつも用意され、平民は到底口にすることは叶わない高級ブランド茶が存分に振舞われる。
近頃はフィーユを助けた一件もあり、エレンシアの悪評もずいぶん収まり、若い女性を中心に大勢が集まった。
エレンシアはサティ、フィーユと同じテーブルでお茶を楽しむ。
「こうして静かに飲むのもいいですわねぇ」
サティもうなずく。
「ええ、本当に美味しいです……」
フィーユは紅茶の味に感激する。
「こんなにいい紅茶を飲ませて下さってありがとうございます!」
エレンシアは顎を上げる。
「いいのよ、庶民のフィーユさん。庶民にたまにはいい思いをさせてあげるのも貴族の務めなのだから」
「はいっ!」
一方のアルゲンはというと――
「どっちが多く飲めるか勝負だ!」
「やりましょう!」
なんと男たちを集めて紅茶の大飲み勝負をやっていた。
子供たちが煽る。
「頑張れー!」
「アルゲン様いっけーっ!」
「負けたらバカ息子って呼ぶぞー!」
「呼ばれてたまるか! ……うおおおおっ!」
エレガントさの欠片もない婚約者の姿を横目に、エレンシアはにっこり微笑む。
「こうして騒がしい中飲むのも楽しいわねぇ」




