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悪徳令息と悪徳令嬢が婚約し、しかも町の領主になり、住民は「もう終わりだよこの町」と嘆くも意外と善政を敷く模様  作者: エタメタノール


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第10話 愚民ども、俺とエレンシアはこうして出会った!

 昼食後、モレス家邸宅のテラスにて――

 ティーカップに入った紅茶を一気飲みするアルゲン。


「ぷはーっ! 美味い!」


「いい飲みっぷりだわ、アルゲン!」


 エレンシアが褒め称える。


「とても貴族の紅茶の飲み方じゃないですね」


 サティは呆れる。


「俺は貴族の常識では計れない男なのさ」


「意味が分かりません」


「私には分かるわ、アルゲン!」


「だろう!? エレンシア!」


 二人はハーハハハオーホホホと笑う。

 実にいつも通りの光景である。

 これを見ながら、サティはこんな疑問を口にする。


「そういえば……お二人ってどのように知り合ったんですか?」


 アルゲンは腕を組む。


「俺とエレンシアの出会い? おいおい、野暮な質問をする奴だな」


「ええ、そんなの聞かれても恥ずかしくて言えませんわ!」


 サティはそっぽを向く。


「じゃあ聞きません」


「待て待て待て! そんなこと言うな!」

「別に話してもよろしいのよ!」


 慌てふためく二人にサティはため息をつき、向き直る。


「では聞かせて下さい」


「話せば長くなるがな……。三時間ぐらいかかる」


「では結構です」


 再びサティがそっぽを向く。


「待て待て待て! 短めにするから!」

「そうよ! なるべくコンパクトにまとめるから!」


 サティは長いため息をつく。


「では、話して下さい」


 アルゲンは珍しく真面目な顔つきになり、振り返る。


「あれはそう……ちょうど二年ぐらい前のことだったかな」



***



 二年前――

 アルゲンはすでに社交界デビューを果たしており、今と全く変わらなかった。


「ハーッハッハッハ! みんな、俺の話を聞きたいだろう? よし聞かせてやろう!」


 さすがに同じ貴族相手に「愚民」とは言わないが、こんな調子なのでだんだんと敬遠されることが増えていく。


「おい、アルゲンが来たぞ……」

「向こうに行こう……」

「うっとうしいよな、あいつ……」


 誰にも相手にされず、夜会でも孤立する日々。


「ふん! どいつもこいつも……」


 アルゲンも、人間性が人間性なので不貞腐れる。自分に原因があるとは考えない。

 だが、次第に思い悩んでいく。


(このままでいいんだろうか……。俺もこのままじゃ、いけないのか……?)


 一方、時を同じくして同じような悩みを抱える令嬢がいた。

 伯爵家出身のエレンシア・ユーベル。

 彼女もまた、夜会に出ては自慢話や高飛車な言動を繰り返していたので、友人と呼べる人間は一人もいなかった。

 気にしない素振りをしつつも、心の内では悩みが芽生えていた。


(私もこのままじゃ、いけないのかしら……?)


 二人とも、『変わらなきゃ』と思い悩む――そんな矢先のことだった。

 ある屋敷での夜会に二人は出席する。


 アルゲンはこう考えていた。


(今までのように振る舞うのは今日までだ……。だから今日は、今日だけは、俺の思うように夜会を楽しんでやる!)


 パーッと騒いで、今日で今までのアルゲン・モレスとお別れする。

 心からこう決意し、夜会に出向いた。

 そして高笑いする。


「ハーッハッハッハ! 今日の主役は俺だぜぇぇぇぇぇ!!!」


 その瞬間、同時に――


「オーッホッホッホ! 今日の主役は私ですわ!!!」


 アルゲンとエレンシアが初めて出会った瞬間であった。


 エレンシアもまた、今日が自分らしく振る舞う最後の夜会のつもりで臨んでいた。

 今日で自分を変える。

 オホホホなどと笑わず、自慢などせず、他の貴族令嬢と同じように、慎ましく謙虚なレディになる。

 だから今夜は思いきり自分らしくパーッと――そんなことを思っていた。

 ところが――


(なんだ、この女は……)


(なんなの、この男の人……)


 二人は全く同じことを思う。


(最高だ!!!!!)


 アルゲンとエレンシアは初めて出会ったばかりだというのに、瞬く間に意気投合してしまう。


「さあ、踊ろう! えーと君は……」


「エレンシアですわ! あなたは?」


「俺はアルゲン! アルゲン・モレスだ! よろしくぅ!」


 二人ともダンスは得意なので、あっという間に夜会の主役になってしまう。

 鼻つまみ者同士のスタンドプレーに、他の令息令嬢は何も言えなかった。

 その後も二人は揃って数々の夜会や晩餐会に出席しては、好き勝手に喋るわ、ダンスをするわ、延々自慢話をするわ、“伝説”を作っていった。


 元々二人を知っていたある貴族の若者はこうつぶやいた。


「最悪の二人が揃ってしまった……。あの二人が揃ったら、もはや止めることは……」


 この予感は現実となる。二人は止まらないし、止められなかった。

 やがて、アルゲンとエレンシアは勢いのままに婚約。

 二人の婚約は「爆弾同士の結婚」「トリカブトとマンドレイクの結婚」などと評される。

 エレンシアは婚約者としてロクスの町に住むことになり――今に至る。



***



 出会いを話し終えたアルゲンとエレンシアは互いに見つめ合う。


「今思えば、エレンシアがいたからこそ、今の俺があるんだなぁ……」


「私もよ、アルゲン……」


 目を輝かせる二人に、サティが冷たく突っ込む。


「惜しかったんですねえ。もう少しでお二人が素晴らしい令息、令嬢になるところだったのに……」


「おい!? 惜しいってどういう意味だよ!?」


「今でも私たちは最高ですわよ!」


 サティはそのままどこかへ行ってしまう。


「くっそ、無視かよ! よぉし踊るぞエレンシア!」


「ええ、アルゲン!」


 そのまま二人は庭に出て踊り出す。優雅に、派手に、息ピッタリで。

 出会ったあの時のように――

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― 新着の感想 ―
正に運命の出逢い! というかそれまでは運命が呼んでいなかったんだな。
混ぜるな危険と割れ鍋に綴じ蓋って、両立し得るんだなってwww
自己肯定感最強なふたり。 似た者同士は往々にして同族嫌悪に陥りがちですが、心が折れそうな時に巡り合ったからこそ、素直にお互いを認めることが出来たのでしょうか。 ダンスの息もピッタリ、最高のペア。 悪役…
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