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“男かもしれない”という新しい可能性

五人の少女たち。

 どの子にも、妻・遥の“面影”があった。


 だが——そのどれもが、決定的ではない。


(……本当に、女の子の中だけを探していていいのか?)


 そんな疑念が静かに湧き上がり始めたころ、

 僕はふたりの男子と再び向き合うことになる。


 旧友、藤宮蓮と土岐晴斗。


 妻の影を追うなんて話、普通なら馬鹿げている。

 だが、最近のふたりにはどこか“妙な違和感”があった。


 昼休み、僕がベンチで弁当を開こうとすると、蓮が隣に座った。


「悠真、今日は顔色いいね。少し眠れた?」


「なんで知ってるんだよ……」


「わかるよ。目の下の色、昨日より薄いし」


 柔らかすぎる声。

 男であるはずなのに、どこか包み込むような優しさ。


(……遥が俺を気遣うときの声に、すごく似てる。)


「最近、悩んでる?」

 蓮は僕を覗き込むように言った。


「無理に話せとは言わないけど……

 悠真が辛いときって、すぐわかるから」


 妻がよく言っていた言葉と、驚くほど重なっていた。


 放課後。

 晴斗が僕の肩を軽く叩いた。


「おい、悠真。最近どうした? 目が死んでるぞ」


「お前に言われたくない」


「ははっ。でもさ……無理すんなよ」


 晴斗はいつも茶化すタイプなのに、今日は妙に真剣だった。


「……誰か失くしたみたいな顔してる」


 喉が詰まり、息が止まりそうになる。

 妻を失ったことは、誰にも話していないのに。


「ど、どうしてそう思う?」


「わかるんだよ、なんとなくな。

 ……俺も昔、同じ顔してたから」


 その横顔に、普段は見えない深い影を感じた。


(……晴斗の中にも、“妻の欠片”のようなものがある?)


 そんな考えが頭を過った。


 夕方、体育館裏でひとり座り込む。

 蓮や晴斗の言葉が頭から離れない。


(もし、彼女が“名前を変えて”だけでなく、

 “姿”そのものを変えて転生したのだとしたら?)


 輪廻に性別の制限なんてあるのだろうか。

 もしルールがないのなら——魂が“男”として生まれ直す可能性だってある。


(……本当に、男の中にも“妻の影”があるのか?)


 つぶやいた瞬間、背後から声がした。


「悠真、誰に話してるの?」


 振り返ると、蓮が立っていた。


「最近の悠真、すごく“誰か”を探してる感じがする」


 そして、穏やかな笑みのまま続ける。


「その人が……女の子とは限らないよ?」


 心臓が跳ねあがった。

 内心を見透かされたようだった。


「なんでそんなこと……?」


「なんとなく。

 ……でも、君が探してるのは“形”じゃなくて“心”でしょ?」


 妻がよく口にしていた言葉に、あまりにも似ていた。


 校門を出ようとした時、晴斗が急に僕の前に立った。


「悠真……今日、どうしても聞きたいことがある」


「……なんだよ」


「お前……誰か探してるだろ?」


 また同じ言葉。

 蓮とまったく同じ指摘。


「どうしてそう思う?」


「お前の目が……

 俺が“好きだった人”を探してたときと同じだったから」


 その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられた。


(どうしてだ……どうして“妻の影”が男にまで重なる?)


 混乱と不安が渦を巻く。


 夜、ノートを開き、震える手で書き込む。


藤宮蓮

→ 気遣いの仕方が妻と酷似

→ “心が大事”という妻の口癖を思わせる言葉

→ 僕の内面に異様に詳しい


土岐晴斗

→ “失った人を探す目”と言い当てる

→ 妙な優しさと孤独

→ 妻の表情と重なる瞬間あり


「……もう、この世界は“常識”が通用しないのかもしれない。」


 候補は七人。

 性別も関係なく、みんなが“少しずつ”妻に似ている。


「君は……本当にこの中にいるのか……?」


 ノートの文字が滲んで見えた。

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