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赤鎧の男たちと、燃える村

村を襲った“何者か”との遭遇。

これまでとはまったく異なる、“人の形をした敵”との初交戦が描かれます。

レオンにとっての剣の意味、そして戦いの現実が、ここから本格的に動き出します。

赤い風が、山を下った先の村に吹き荒れていた。


 草も木も、家々も、何もかもが焼けていた。


 黒く焦げた家の壁。地面に転がる、ひしゃげた鍋。

 そして、血の跡――人の形に残された影。


 レオンは、息を呑んで立ちすくんだ。


「これが……“戦争”……?」


 足元で、まだ燻ぶっている家の柱が、ぼたぼたと崩れる。


 村の名前は《トロア》。アルス村よりも少しだけ大きな、交易の拠点だったはずだ。

 だが今、その面影は一切残っていない。


「……生存者は?」


 ガラードが静かに尋ねる。


 レオンは、首を横に振った。

 答えたくなかった。目にしたものが、現実だと認めたくなかった。



 そのときだった。


「――……キ、シ、カ……ナイ……」


 ひび割れた地面の向こうから、妙にくぐもった声が聞こえた。


 レオンとガラードが振り向いた先に、それはいた。


 漆黒と深紅の混じる甲冑。

 全身を鎧に包み、面頬すら隠すその姿。


 しかし、明らかに普通ではなかった。


 炎に包まれた空気の中で、鎧の模様が赤く脈動している。


「……あれが、“赤鎧”の兵士……」


 レオンが剣を抜こうとした瞬間、ガラードが手で制した。


「下がっていろ。あれは、貴様の剣では斬れん」


 その言葉の意味はすぐに明らかになった。


 赤鎧の兵が、重々しい足音とともに近づく。

 その右手には――炎をまとった剣が握られていた。


「燃える……剣……っ!?」


 剣先を振ると、空気が熱で歪んだ。


 レオンは、本能的に身構えた。


 次の瞬間――


 赤鎧の兵は地を蹴り、レオンへ向かって突進してきた。


(来る……! 逃げられない――!)


 咄嗟に短剣を抜いて受け止める――が、


「うっ……がっ!!」


 衝撃で全身が吹き飛ばされる。


 手がしびれて動かない。短剣は弾き飛ばされ、地に落ちた。


(だめだ、力が……まったく違う……!)


 震える身体をなんとか立たせようとしたとき、ガラードが前に出た。



「――貴様に、それを振るう資格があるか」


 低い声。だが、それは空気を切り裂く“圧”となって赤鎧の兵にぶつかった。


 ガラードは、鞘から剣をゆっくりと抜き、ひと息で構える。


「見ておけ、レオン。これが、“技”だ」


 一瞬の静寂。次の瞬間――


 ガラードが踏み込み、横一閃。


「斬ッ!!」


 重い音とともに、赤鎧の兵の身体が、真っ二つに裂けた。


 火花が散り、鎧の中から黒い霧のような“なにか”が噴き出して、霧散した。


 レオンは、ただ呆然と立ち尽くしていた。


「……あれは、人じゃない……」


 それは、人の形をしていただけの“兵器”だった。



 戦いの後。ガラードは言った。


「これから、こういう敵が増える。貴様の剣も、ただ振るうだけでは通じぬ」


 レオンは唇を噛み締め、強く頷いた。


 もう逃げられない。


 守るためには、通じる剣を、学ばねばならない。


【次話予告】

第六話『ガラードの過去と焔紋の謎』

→ 帝国騎士だった男が、なぜ辺境にいたのか。

そして、“赤い鎧”を纏う兵たちの正体とは何か。

過去が語られ、未来が動き出す。

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