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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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笑劇のスキル

 ユイアは信じられないとばかりにしばらくの間狼狽した様子だった。

 俺はユイアの手を奪い取って、席に座らせた。


「飲め。それはずっと忘れらえない、お前が持つべき痛みだ。吞み込め」

「無理だ、よ。ウチのせいで、死んだんだよ? ニフィアは、ウチのせいで!」

「アレは貴様のせいじゃねえです。客観的に見ても――」

「関係ない! ウチのせいで、死んだの!」

「話になりやがらない。まだまだガキでいやがりますね。こんなもので、魔王を討とうなどとは片腹いてえです」

「そう言うな。ユイア。死んだ人間は本来戻らない。俺もお前も、ドラーゼも、悪人だかから長生きしちまってるだけなんだ」

「だって、そんなの……神様って、いないの?」

「いらっしゃります。ただ、一個人の願いをいたずらに叶えるようなことはなさらない。貴様、これだけの力と資質を有していながら、中身が伴ってねえです」


 混乱と狼狽。受け入れがたい現実の中、ユイアは項垂れた。

 それが、本来俺たちが味わっておくべき絶望だ。ここを乗り越えることが出来れば、お前はもっと強くなれる。

 自分で道を切り開けるようなそんな人間に、なれるさ。


「今は飲め。その傷は絶対に忘れるな」

「……うん」

「それで? 貴様の用意した策っていうので、ルシエルは討てるんでいやがりますか?」

「お前は本当にうるさい奴だな。策はあるだけで上手くいくかまでは知らねぇ」

「そんな勝手な……言ったはずです、空から奴らが降ってくれば、あなたたちは終わりです」

「うるさい上にネガティブな奴はモテねえぞ」

「それが、なにか、問題でも、ありやがるんですか」


 チラッと横のユイアを見ると、瞳が、星のような輝きを放っていた。

 ああ、そうか……乗り越えられなかったんだな。


「ルシエル。そいつは俺の大事な仲間だ、返してもらうわけにはいかねえか」

「私は魔王だ。いつまでも肉体の檻に閉じ込められているわけにもいかないのでね」

「人の弱みにつけいって無理やり契約するお前のやり方は本当に悪魔だな」

「悪魔? それは魔竜を封じ込めた連中のことを言っているのか? なあ、そうだろう? エクシア」


 話を振られたさっきまでうるさかったのにすっかり押し黙ってしまった。


「私は魔竜を使役したから魔王と呼ばれているだけだ。まあ昔話をするつもりはない。この体は良いな。スキルも申し分ない。気に入ったよ」

「まったくお前は本当に世話がかかる。殺しちまうぞ、魔王」

「やってみろ、アスヤ。ここは地獄、体も手に入れた、私に勝てると本気で思っているのか?」

「アスヤ。ルシエルは……元天界最強の男。神に最も愛された存在でいやがります。今の貴様じゃ、まず勝てねえです」

「どいつもこいつもやってみる前からうるせえ奴らだな」

「昔だと死罪だぞ、アスヤ。それに、いまだに女神と謀るただの天使にもうんざりだ。どいつもこいつも、舐めるなよ」


 肉体を手に入れ、ここは奴のホームグラウンド。

 エクシアたちから聞いた話ではあるが、エクシアたちは女神ではない。女神に仕える存在だ。ただ、異世界へくる人間たちに説明するのも面倒だからと言う理由で女神を名乗っていた。

 ルシエルは元天界の軍隊を統べる者にして、エクシアの上司だったそうだ。

 何があったか知らないが、この世界に落ちて魔王をやっていたとかいないとか。

 だけどな、偉そうなことを言っているこいつには明確な弱点があった。


「お前、一回討たれてんじゃねえか。あんまり偉そうな態度とるんじゃねえぞ、クソ魔王」

「魔竜のせいだよ馬鹿が。下らねえこと言ってる暇あったら今すぐ殺してやろう」


 こいつが持っているのは恐らくユイアの神速と、俺の契約スキル。いや、契約スキルは復活のために分解しているはずだから、素の力プラスめちゃ速い位か。


「本気を出した魔王にはまだ勝てねえです。アスヤ、策ってやつを出し惜しんでる暇はねえですよ」

「あのなぁ、エクシア。思い出してみろよ。俺がお前を出し抜いた時を」

「アレはルシエルが介入しただけで私は出し抜かれてねえです」

「いいから。俺はお前を出し抜いて裏紙で契約スキルを手に入れた。だが、その前に表に書いていた本当のスキルは何だ?」

「……まさかそんなバカな……あのスキルを、持っていやがるっていうんですか!」

「その、通り! さあさあ皆さん、ご唱和ください、これが俺の本来のスキル、笑劇世界」


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