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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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一つずつ片付けよう

 敵ってなんだって、いっつも思う。勝手に憎しみ合って、悲しみ合って、苦しめ合って、痛めつけ合って。

 それって別に、敵って訳じゃねえだろって。


「お前に言っても、分かんねえか」

「何をごちゃごちゃと」

「聞いてみればいいんじゃねえか? 長い間、騎士をしていたんなら分かることもあるだろう」


 この土壇場での裏切り。俺じゃあ計り知れないほどの恨みが、怒りがある。

 だけど、ゼロネは芯から強い奴ってイメージがない。むしろ、ずっとぶれている、そんな弱弱しいイメージがあった。

 太刀筋から見ても、奴はずっと揺れていた。暴力的で破壊的、まるで自分が死ねば、もう復讐なんてしなくていいのにって。そんな風に思えてならなかった。


「エトナが死ねば、お前は幸せなの

「幸せだと? そんなくだらないことを言う時代はとうに終わっている。そこをどけ、貴様も殺すぞ」

「正直になったらやってやるよ。さっさと消えな。エトナ、死んでるか?」

「……まだ、残念な、ことに、ね」

「そうか。このままだと死ぬが、どうする? 死ぬか?」

「……嫌、や」

「分かった。なら、さっさと治療して――」

「ふざ、けるな!」


 ゼロネが叫び、剣が再びエトナに振り落とされる。

 間に入ったのは、戦いそのものに興味を無くしてその辺にいたビャク。

 ビャクは戦闘能力がほとんど皆無だ。相手のスキルを破壊スキルだけで生き延びて来た。

 そんなビャクでも簡単に剣を奪える程、ゼロネは狼狽していた。


「震えてるぞ」

「黙れ! 私は! 姉の、皆の、復讐のために、やってきたんだ!」

「知っとるよ。あんたがいるときは、スキル解除しとったのに……ほんま、お利口さん」

「なに……?」

「罪滅ぼしのつもりだろ。こんな、不器用なバカは初めて見たし、こいつがやったことを擁護する気はないが、悪いなゼロネ。俺は俺の仲間以外にゃ甘くねえ。ユイア、ドラーゼ、こいつの処遇はどうする」

「ああ? 知るかよ。俺はそいつじゃなく、あの女に話がある」

「ウチも、そのクソ野郎にしか用事、ないよ。ぶっちゃけ、恨みがあるのはその辺のダンマスくらいなんじゃない?」

「そうか。よし、ゼロネ、じゃあ好きにしていいぞ」

「貴様、遊んでいるつもりか!」

「生きてるだけだ馬鹿が! 俺は笑って生きてればそれでいいのに目の前で殺し合いばかりしやがって。酷い目に遭った奴が偉いのか? 復讐してる奴らが一番優先なのかよ。ちげえだろ。必死に生きてる連中の方が、偉いに決まってんだよ。それにお前、この数を相手にするつもりか?」


 さすがに分が悪いと感じたのか、はたまたエトナはもう死pに体で、止めを刺す必要もないと感じたのか、ゼロネは剣を納めて踵を返した。


「ゼロネ、あんたのお姉さんな――」

「黙れ」


 エトナとの会話を拒否して、黒騎士は姿を消した。

 本当に、不器用なふたりだけど……俺ももう、こいつらに付き合ってやるほど暇でもない。

 広がりすぎた風呂敷を畳まないとな。帝国を連れてきたのは、俺の責任だ。


「悪かったな、ユイア。俺のせいで」

「ほんっとに、そうだよ、アスヤ」


 ボロボロになったユイアは疲れた様子でしかし力強く剣を振るった。


「さて……あんた、覚悟出来てるよね」

「この驚きピエロな奴はなんなんだ?」


 シルクハットにタキシードの男。めちゃめちゃ悪役のピエロみたいな。どういう考えでこういう風に生きていったのか単純に気になる。


「こいつの名前はフェルデス。今からウチが殺す奴だよ」


 ユイアが……来る奴をただまっとうに叩き殺してきたユイアが、明確な殺意と怒りを持っている。変わった、というか、色々あって成長したみたいだな。


「わたくしを、殺すっ? それは、どのような冗談ですかっ?」

「俺、こういう喋り方をする奴無理なんだ。やるならさっさとやれ。復讐も恨み事も、反吐が出る。ドラーゼ、お前はどうしたい」

「わりいなヘボマス、俺もユイアに同意見でな」

「僕ならいくらでも話を聞くよ。ただ、おとなしく殺されるつもりはない」

「どいつもこいつも……メルフィ」

「はい、マスター」

「ビャク」

「なに、マスター」

「メルフィ、この獣っ子は碌なもん食べてないから何か作ってやってくれないか? 先に戻っててくれ」

「かしこまりました。それではご案内いたします、ビャク様」

「食べ物、くれるのか?」

「腕に塩コショウ少々を振りかけさせていただきます」

「手塩にしとけよそこは。さて、と。俺のダンジョンを見に行きたいとこなんだけど……」

「そいつらが燃やしたよ、アスヤの大事なもんを」

「えマジ? ぶっころなんだけど」


 適当に腰を掛けた。こいつらの戦いに水を差すつもりは一切ない。

 さて、まずはドラーゼか。


「ようやく話し合いってとこか? 女」

「そうだね。何が話したいのかは知らないけどね」

「兄さん、この人は、私たちを助けてくれたんだよ? だから……」

「うるせえ、黙ってな。落とし前は着けねえとなぁ」


 ドラーゼが、結構クール系の美女に詰め寄っている。名前はええ……アシュリーか。

 ふたりが怪しげな雰囲気で対峙している。でも、俺は何も心配しちゃいなかった。

 ドラーゼの顔にも雰囲気にも、殺意が一切なかった。こういう時のこいつは弱い。


「分かっているが、僕も僕で、死にたくはないんでね」


 ドラーゼはアシュリーの元へ近づく。既に二人とも互いの間合い。どちらかが剣、いや拳か。武器を出せばどちらかが間違いなく死ぬ距離。

 アシュリーのスキルがどんなものかあんまり見てないが、ドラーゼの最適解はこの近距離を確実に封殺できる。

 ドラーゼが更に距離を詰める。互いに一触即発の中……ドラーゼは頭を下げた。


「一度しか言わねえ。妹を救ってくれて、ありがとう」


 言うだけ言ってすぐに頭を上げ、ばつが悪そうに頭の後ろをかいた。

 やっぱお前はそう言う奴だよな。元々……最初に会った時からお前はなにかを探しているようだった。

 上手くいかない事への不満も、失いたくないっていう不安も、全部透けて見えていた。

 ドラーゼ。見つけたようだな、お前がほしかったもの。探していた物を。

 さて次は……ユイアの方だな。


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