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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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63/68

一度戦ったことのある中でしっかり負けた相手

 久しぶりに戻ってきたと思ったら、なんだ、この様は。

 見知った顔と、知らない奴の顔。まあもうめちゃめちゃどうでもいい。

 俺の見立て通りなら、そもそもこのエトナ以外は大した強さじゃない。


「同じ手は二度と食わねえぞ、お転婆お嬢様」

「へえ? じゃあ、どないするっていうんやろか」

「女を殴る趣味はねえが、必要とあらばぶん殴る覚悟は持ってるぜ」

「そういう、男目線の言葉、反吐が出るわぁ。殴られる覚悟も――」


 目に見えない速さで懐に入り込まれた。

 全くこいつは……スキルなし、人間の性能だけでここまで速いのか。

 勢いよく降られた大ぶりの拳が、俺の腹を的確にとらえる。


「出来とんのよなぁ」

「当たり前だろ」


 それでは俺も最終兵器、自前の腹筋を取り出して受けきった。

 逆に撃ち込まれた腕を掴んで捻ろうとしたが逆に掴んだ腕を軸にエトナは回転。

 俺の頭右側に蹴りを入れる。

 辛うじて腕を離し、腕の横で避けるが、足を軸にさらに回転。自分の足を踏んでさらに蹴りをぶつけて来た。

 さすがに吹き飛ばされ、乗ってきた列車の側壁に背中を叩きつけられた。


「やっぱあんた、もう、スキル持ってへんな?」


 追撃――掌底打が腹に突き刺さった。

 こいつ……この前戦った時より数倍強くなってねえか?


「がっは……バレた?」

「バレバレやぁ。あんたを違う空間に送った理由は二つ。殺しても生き返るのが一つ。もう一つは、日が経てば経つほど増えるスキルが厄介すぎるから。だけどどうなんやろ。今殺したら、生き返らへんのかしら?」

「試してみるか? お転婆お嬢」

「それもええねえ。私の渇きを埋めてくれるんかしら?」

「知らねえよ。手前がやってることは赤ちゃんの駄々だ。力を持ったまま成長しない赤ちゃんが、思い通りにならなくて癇癪を起してんのさ。お前の本質は、優しくされたことがないから優しさへの返しが分からないコミュ障なんだよ」

「あんたに、何が分かるん……?」

「俺もそうだった。だけどな、こんな俺でも信じてくれる奴は世界のどっかにはいるもんなんだよ。ありがとよ、旅をさせてくれて」

「ああそう。そりゃよかった」

「他人に優しくされて、困ったろ? だから傷つけるんだろ? 傷つけて、試して、自分がやられたことを当たり前だと思って我慢と無理やり納得した自分を、無駄にしないために」

「黙れ」


 顔面を掴んで、列車の奥に叩き潰された。

 そう。間違いなく、俺の頭はトマトみたいにぺちゃんこに潰された。

 かかったな、女帝様。

 お察しの通り、俺はまだ黄泉還りを使える。

 しかも蘇生ポイントは自分で選べるおまけつき。お前は今、自分から俺への集中を外した。

 冷静さを欠いたお前の――


「で? 生き返るから何? それなら何度も、殺せば――」

「おしゃべりが好きな奴だな」


 掌底打。回転をかけた百パーセント人由来の攻撃だが、これは骨身に染みるだろ?

 遅真美らの顔を手の甲で拭って、さらに方肩へ掌底打。よろけてバランスが崩れたところで足払い――

 逆に俺のバランスを崩され地面を滑った。


「体幹強いんよ、私」


 両手で顔を抑えられ、ヘッドバッド。

 寸前で俺もでこをぶつけて衝撃を相殺。同時に手刀を放ち、避けたところで腰を奪う。

 マウントポジションだ。


「男はそうやってすぐ上に乗りたがる」

「童貞なもんで」

「ああそう」


 腰を強く浮かせてマウントが一瞬で解除される。

 どういう肉体構造だ。こいつ本当に人か?

 戦いの中、紡ぐ攻撃。今の俺に、戦闘プリセットも防御プリセットも、存在しない。

 それはもうバレてる。だったら俺が唯一持っているスキルを盛大に使ってやるしかない。


「ここまで打ち合わせてくれる人がいるなんてなぁ、嬉しいで、アスヤ」

「俺は長旅で疲れてるんだ、速く終わらせようぜ」

「あんたさぁ、私のスキルは攻略出来たん?」

「大体無理」

「ほな、死んでもらおうか」


 切断――

 俺が使っていた見えない刃どころの騒ぎではない、防御不可、視認不可の最強技。

 初見で89回殺された、その名も次元斬。

 俺の腕の半分から上の空間と半分から下の空間をずらすことで切断する馬鹿チート。それを同じ要領で体中を斬り割く。しかもこいつ――

 攻撃を当てた瞬間、俺の体が奴の体に吸い込まれた。

 手を抜くと、入った拳が丸々消えて血に塗れていた。

 亜空間。自分の体に全く別の空間を用意することで、攻撃を防ぐ技。副産物として、侵入してきた攻撃が中の空間で磨り潰される。武器も人体も関係なく、消え去る。

 俺も前、これにやられた。しかも苦肉の策で打開した技ももう、奴は対応している。


「前回は、私が唯一亜空間を発生させることが出来ない目を潰したせいで自爆覚悟で別の空間に吹き飛ばしたけど、今回は、あんたの両腕両足を殺いで地下に監禁してあげる」

「その趣味はないんだよね」


 まあ、想像の話だが、こいつ……まさか目を閉じてでも攻撃できると? じゃあもう無理だなぁ。

 無理だし、攻撃に転じようとした瞬間、こいつは自分の亜空間を展開させて俺の方へ歩いてハグでもすれば即死。強すぎる。

 極めつけは――


「どこみとるん?」


 この、俺と自分の間の空間を消し飛ばして物理的につなげる縮地。避けるとか速いとか、そういう次元じゃない。


「気を付けてアスヤ! その人、ウチの速さにも対応できる、空間能力がずば抜けてるんよ!」


 ユイアの言葉で成る程納得。

 自分のスキルを拡張して、空間把握能力を向上。見えてなくても見えてるわけだ。

 おい、俺が離れてそこまで時間経ってねえだろ。とんでもない修正力だな。


「まずは、貴様を殺さないといけないようだな」


 黒騎士とユイアが戦闘開始。見たことない二人組は俺の襲撃で動けないようだ。

 さて、じゃあもうひとつ。


「おい、クソトカゲ、いつまで寝てんだ」

「だあってろや、ヘボマスター。今から起きるっての」

「また、混戦? 君たちのところはいつだって同じことをしてくるね」

「良いや違う。俺はお前を今から無視する」

「え?」

「お前の周りを全部倒して回って一人にしてやる。俺を殺したきゃ殺せ。俺はいくらでも、黄泉還る」

「じゃあ、私もあんたの周りを全部殺して回るわ」

「やってみな、お嬢様。思い通りにいかない世界でお前を孤独死させてやる。俺の国造りは良いとこまで来てるんだ。ひとりじゃ何も出来ない癖して他人を傷つけるお子様に、大人の力を見せてやる」

「馬鹿にして」


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