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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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妹の叫び


 エトナにいきなり襲撃をかましたユイアを咎めるべく、ゼロネが剣を引き抜いた。

 紫のオーラを身に纏い、鬼気迫る怒りのままに歩を進める。


「私が相手を致します。黒騎士さん」


 ちょっかいをかけるメルフィをゼロネが素早く斬り割くが、斬れない。

 メルフィは決して負けない。ゼロネとマッチアップを組ませることはあまりにも有利だった。


「ちっ、フェルデス!」

「はいはい」

「おっと。君の相手は、僕だよ」

「おやっ、わたくし、相当人気なようでっ」


 攻撃をどこへでも飛ばすフェルデスとマッチアップしたのは、視界に映ったもの全てに重さを加えるアシュリー。

 重さを加え続けることで、フェルデスに押し付けを相殺。単純な剣術に持ち込む。計画通り。


「兄さん。また、来たんだね。せっかく、助けたのに」

「うるせえや。お前をもう一度取り戻す」


 ドラーゼのマッチングは、妹のティアル。行き別れた兄妹の再会を邪魔出来ようはずがない。能力的には互いに戦闘に向いていないが、普通に考えればドラーゼが勝つが、紹巴まではユイアは知らない。

 とにかく作り上げた。女帝エトナとの、一対一を。


「ここまで、よう考えたんやなぁ」

「偶然です」

「そ。じゃあ、ここからの計画はあるん? まさか、真っすぐ私と戦って、勝とう思うとるんじゃないやろな?」


 女帝の瞳が、冷たく光る。

 冷静さ、冷たさが首筋にナイフの用に突き刺さる。理解すれば理解する程、話せば話す程、明確に恐怖が背中を撫でて来た。

 思わず冷や汗が出る。剣を交えて気づいた圧倒的実力差。マイナススタートのこの戦い、差を縮めるここが、至上命題。


「ふふ。来るんや」


 指を揃えて綺麗な掌を自分にくるりと向け、軽く何度か曲げる。挑発的なポーズに乗りつつ、ユイアは剣を振るう。

 たたき落とした剣は手の甲をするりと抜けて地面へ落ちた。軽く下がった胴体に向けて鋭すぎる蹴りが炸裂する。

 まるで大木に殴られたかのような衝撃だった。重すぎて、ダメージが体の芯に通る。

 砂地を転げて口の中に溜まった唾液を吐き出した。


「ぺっ。まっず」

「敗北の味や。私も随分、味わったよ。帝国で」

「へえ、エトナさんはもっと強いんだと思ってましたけどね」


 よろよろと立ち上がりながら砂を払った。ボロボロになって、汚れて、爪も割れて、とてもじゃないが無事ではない。

 襲い掛かる。いなされた後、強烈な反撃を受ける。

 腕、足、体全てがまるで凶器だった。


「帝国では、スキルよりも本人が強いことが一番なんよね。私、エトナ・ナハト・ジアードは元々帝国の姫じゃなかった。本当に一般的な農民だったのよ」


 余裕をかまして雑談を始めたエトナ。その間にも部分加速、準神速の背後取りを試すが、全て見切られてしまった。空間把握能力が普通じゃない。後ろにも横にも目が付いている。

 また、むしろついてでもいなければユイアを捌くことはできない。


「それがなんで、帝国のお姫様に?」

「私はこの世界に転生する時、ある女神様に会うたんよ。あなたと仲のいいアスヤ君とは別の女神様」

「へえ」


 転生――

 眉唾な話だが、死者を蘇生させる規格外な男を知っている以上、嘘だと言い切れない。


「彼女はすごく優しくて、少しばかりのジョークを持ち合わせた素敵な人だった。私ね、転生前に男性に暴行を受けた後殺されたの。バラバラにされて」


 この世界では、決して珍しい話ではなかった。戦争がいたるところで起きている昨今は猶更。魔王との戦いがあった昔ならさらに多く。

 もしかしたら、アスヤも転生前は随分と幸せで平和な生活を送っていたのかもしれない。そうでなければ、あんな風に笑い続けていられない。

 平和な世界を知っていないと、明日を信じて進むことなんてできない。


「だからすごく不思議だったの。この人はなんで笑えてるんかなって。でも、女神と聞いて分かったんや。ああ、力があるからなんやって」

「その話、長くなる?」

「だから女神を殺して帝国の姫様を殺した」

「……ごめん、説明は欲しいです」

「私は私が一番強くなれば、彼女みたいに笑えるんかなって思っただけなんよ。だけど、殺した時には何も残らなかった。だから、全員殺すことにしたの。気づいたら、お姫様も殺して街も焼き尽くして私は英雄になってた」

「端折りすぎですよ。マジで何があったらそうなるんですか」

「さあね。でも、意外と人生って自分の思い通りにいかんってことかな。長くなったね、それで、どないして私を倒そうっていうんや?」

「そりゃもちろん、皆でやる」


 下がる。

 同時にせり上がっていたのはメルフィ。

 両斧を掲げて、エトナに飛び掛かる。

 エトナは斧の刃を手首で挟んで受けきると同時にしゃがみながらメルフィの足を払う。

 メルフィ、足払いを受けつつも地面を斧で叩いて体勢を立て直し、さらに斧を振るう。

 負けないメルフィなら、十分任せられる。

 代わりにスイッチした先は、怒りの炎を燃やすゼロネだった。


「いつもより怖くね?」

「黙れ。殺す」


 鋭い剣線。強烈な一撃はオーラに裏付けされた確かな力。単純な筋力、敏捷力アップ。当たれば一撃で切断される驚異的な暴力だ。

 戦いも荒々しいながら、針の穴を通すように嫌なところに剣を打ち込まれる。

 その上、スキルが一切利かない。汎用性が高くシンプル故に、やり辛いことこの上ない。


「あのさ、なんでそんなに姫様を守ってるわけ? あの人かなりキちゃってるよ?」

「それが、なんだ」


 大ぶりで隙のある一撃だが、風圧と滲み出るオーラがいとも簡単に地面を叩き割った。

 砂塵と瓦礫が舞う中、ユイアの逃げ場は斜め前たった一つ。

 釣り出されている自覚はあったが、あえて乗ることで意識外のカウンターを狙う――


「フェルデス!」

「はいはいっ」


 ユイアが逃げたエリアで、ユイアは動きを完全に封じられた。食らったことのある技。

 アシュリーの負荷だ。


「しま――」


 フェルデスのスキル、ダメージのなすりつけにまんまとはまってしまった。

 今までのフェルデスはこの密集地帯では誰に当たるか分かったものじゃなく、全て空か自身の近くにダメージを擦り付けていた。

 しかし、ユイアが丁度いいポイントに入ったことで手痛い反撃を受けた。


「ベストタイミングっ」

「死ね」


 強い言葉で強い斬撃を突き落とされた。

 受けた剣が、オーラを纏う剣に叩き割られる。

 砕けた剣の破片が顔の横を飛び、ゼロネの斬撃は胸の中央を鋭く捉える。

 出血。致命的な一撃を受けるが、すぐに駆け寄ったアシュリーがゼロネを見て止める。

 アシュリーの意図を察したユイアは言葉もなく、素早く高速世界に逃げ込む。ヒールを自分にかけた。土壇場で編み出した超高速ヒールで出血だけは止めた。

 ただ……高速世界を叩き割ってゼロネが追撃してくる。どういう理屈でそんな動きが出来るのか分からないが、ユイアは即座にスキルを解いた。

 味方のカバーを間に合わせるための咄嗟の英断。戦いの中で成長していくユイアが作り出した大混戦。

 次――

 ユイアは敢えてゼロネとフェルデス、そしてアシュリーの二対一の状況を押し付けて、ドラーゼの元へ向かった。

 完全に兄とのワンオンワンだったティアルの背を高速で叩き切る。


「つ……何を!」

「浅かったか」

「邪魔すんじゃねえよ女!」

「さっさと勝負着けろよクソトカゲ! こっち全然余裕ないの! アスヤの居場所を聞き出さないと、全部終われない!」

「分かってる!」

「伝えなよ、あんたが何で魔王を目指してんのか、妹をずっと探してたことを!」

「何を、言ってるの……」


 ドラーゼはあまりにもらしくなかった。

 話したいことも言いたいことも言わず、ましてや殺人的な暴力性もない。

 ユイアから見たらまさしく――


「舐めんなよ、ドラーゼ。ウチらがやってることはあんた一人に潰されていいような甘い事じゃない。あんたが出来ないなら、ウチが妹を殺す」

「……分かった」


 ドラーゼは両腕を竜化させて攻撃を加速させた。要約傑に火が付いた状態だ。

 まずこの戦いを終わらせる。それも、可及的速やかに。


「兄さん、なんで、皆を裏切って帝国に就いたの」

「就いちゃあいないさ。皆殺しにして帰ったらもうお前たちはいなかった」

「嘘吐かないで。だって、約束したじゃん、無理なことはしないって」

「そうだな。俺が悪い。だが、俺らの故郷を潰したのはあの女だ」

「あの人は……逃がしてくれた。だけどその後帝国に捕まって……私以外はほとんど殺された。竜人族ってだけで、殺された!」

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