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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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52/68

一方的

 ユイアが消えてから、ドラーゼは再び冷静な世界に身を投じていった。


「よそ見をする余裕が?」

「ねえよ。だからお前のことしか見てねえだろうが、嫉妬すんなよ早漏野郎」

「下郎が。死ね」


 まだ、攻撃の速度が上がる。

 ユイアと違って、加速に体が振り回されていない。

 亜人族の中でも強靭なフィジカルを誇る鬼人族だからこその無茶。

 スキルを最大限に活かせる状況はある意味羨ましかった。ドラーゼのスキルはドラーゼでなくとも使える汎用性が高い物だが戦闘には向かない。

 結局、攻撃の手段は己の肉体でしかないのだから。

 音を置き去りにするほどの斬撃。受ければ絶命必至の攻撃と比べたらあまりにか細い。


「おいおい、慣れてきたぜ、お前の動き。本気出さないと死んじまうぜ?」

「戯言を。追いついていないからこそ、傷が増えているのだろう?」

「傷? 何お前、傷もぐれだから弱ってるって? 傷があるから弱いって? 面白いこと言うじゃないの。ええ? 雑魚が」

「雑魚はお前だ」


 さらに加速。もう、視えない。勘と最適解便りの最悪な回避。

 スキルがなければとうの昔に死んでいる。圧倒的に完敗だった。

 だからこそ、命を天秤にかけて、勝つしかない。

 ずっと、いら立ちが募っていた。竜人族最強だと自負していたら、竜人族の女に殺され、アスヤに助けられた。

 それ以降、ドラーゼは一人で勝っていない。女神にも、ゼロネにも、そしてユイアにも、負けに負け続けていた。

 どんな、悪い冗談なのかと笑いが止まらなかった。

 これ程力を持っていながら、一切の活躍がない。負けてばかりの今に大きな苛立ちを持っているのは、何を隠そうドラーゼ本人だ。

 最適解はユイアとの共闘を促していた。ただ、ドラーゼが強く拒否した。頭の中で鳴り響く、まるでうるさい声をすべて無視して。


「もう終わらせよう、竜人族。竜を狩るには、鬼」

「そうさ、俺は、竜人族だ」


 炎の翼が出現する。

 ドラーゼの本気。肉体を竜化させることで身体能力がさらに向上する。

 ただの脅しと捉えて男は剣を引き抜き一機に突貫。

 攻撃パターンを全て、脳に叩きこんだ。最早見えていなくとも、攻撃が見える。

 耐え忍んできたのは、最適解へ情報を叩きこむための必要な儀式。

 終わるまで会話を長引かせてあらゆるパターン、攻撃の限界を引き出した。

 ならばもう……竜を止める力は、ない。


「しまいだ」


 ドラーゼの竜化した腕が、男の腹を貫いた。

 一瞬の隙を狙った完全なカウンター。

 剣の腕もスキルの使い方も、間違いなく、男はユイアより上だった。

 唯一、男にユイアが勝ったものがあるとすれば、覚悟の違い。ユイアはかつて、スキルに振り回されて衝突死しかねないリスクを持っていた。

 恐怖に打ち勝ち、怪我を恐れず、視えていないことに甘えない。

 男がたった一つ間違えたのは、こころのどこかで、視えていないという余裕があった。


「まさか……こんな、ところで……」

「名前くらい聞いといてやるよ」

「ザンク……」

「そうかい。じゃあな」


 腕を引き抜くと同時に臓物が外へ出て行った。どちゃどちゃと音を立てて地面に沈んだザンク。確かに強敵だったが、己の弱さを最後の最後まで知れなかったのは運の尽きだ。

 散々負けていなければ、ドラーゼもザンクと同じ未来を辿っていたかもしれない。

 二度と負けないと誓った。事実全く負けなかったドラーゼが負け続けたのは紙のいたずらとしか思えない。

 ストレスとフラストレーションは今この場で、立ち消えた。


「さあて、あの小娘、どこ行きやがった?」


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