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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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50/68

これがほんとのイレギュラー

「ええと……まず何にしようかなぁ。あーもう面倒くさい。アルヴェンのとこ行こ」

「お前なぁ、無計画なとこまでアスヤに似なくていいだろ」

「なあんでよ。アスヤだって最終的には広げた風呂敷畳んでるじゃん」

「あいつの場合は大雑把に初めて最後は締めてるだけだが、普通は無理だ。死ぬぞ」

「良いよ別に。んじゃ、ダンジョン行こうよ。結構面倒な人だから気を付けてね」

「あいよ」


 ユイアとドラーゼ。現代ダンジョンにおいて、ふたりの守護者の名は各方面に広がっていた。

 かつて王国中を騒がせたお尋ね者、邪竜ドラーゼ。

 国を作ろうとしたダンマスの代理、神速のユイア。

 正直ユイアは思っていた。この二人がいて、負ける未来がほんの少しも見えないと。

 時は夜。暗がりの中向かった先はアルヴェンのダンジョン。武器一式を併設店で販売し、ダンジョンに挑戦しない冒険者からも高い人気を誇る。

かつて、併設して何かをするに辺り、アスヤは武具屋をまっさにき除外した。何故、自分のダンジョンを脅かすような武具をわざわざ販売して何になるのか、と。

裏を返せば、それほどまでに自信があるのだ、ダンジョンを、攻略されない自信が。


「やっほー、おじさん。ダンジョンぶっ壊しに来たよ―……って、え、留守?」


 明かりがついていなかった。いくら夜とは言え、ユイアはダンジョンを速く閉めて来た。人員に余裕のあるアルヴェンがダンジョンを閉めているとは思えない。


「妙に静かだが、人はいんのか?」

「いるはずなんだけどね……まあいっか。枠は物理的なオブジェクトにしてあるから。この位のひよこの銅像」

「なんでひよこだよ」

「かわいいじゃん」

「はっ、これだから……おい、小娘」

「知ってる。見てる。聞いてる。クソやべえ」


 暗がりの中、姿を現したのは……アルヴェン……の、首だ。

 剣の先にアルヴェンの首を串刺しにして黒いマントを羽織った、白装束の男が現れた。

 袴姿に足袋。黒いマントを羽織った二刀流。額からは左右長さの違う角を生やした、鬼人族の男。

 男は細長い瞳で静かな表情のまま、アルヴェンの首を足元に転がした。


「……ああれ、あんたらの出番って、まだじゃね?」


 雰囲気だけだった。別に何か確信めいたものがあったわけじゃない。

 ただ、一瞬で理解できた。鬼人族の男は、イレギュラーズ六人の内の一人だ。


「姫様……エトナ様のご命令だ。容易に奪われるような者を大舞台で殺したところで意味がない。三人程に絞れ、と」

「ああそう。ったく、あのお姫様、こっちの計画とか何も考えないでさあ。ああもう、お客さんにどう説明するわけ? 萎えるわぁ」

「邪魔するなら、殺す」

「男は無口なくらいがちょうどいいよ。寡黙な殿方がモテる理由って知ってる? 余計な事言わないから」

「お前、肌荒れてんな。寝不足かぁ?」

「ああはいこういうのです! 殺します!」

「では、殺す」


 剣線閃く。

 ドラーゼは最適解。

 ユイアは神速でそれぞれ回避を試みるが……剣が、当たった。


「あ?」

「は?」


 僅かに皮を斬るにとどまったが、ふたりが攻撃を受けた。

 ドラーゼはともかく、ユイアが剣線を全く見切れなかった。


「奥義、閃光」


 爆音。音が割れる程の衝撃が辺りを破壊し、気付いた時に男はもう、ふたりの背後にいた。

 鮮血、飛ぶ。

 ドラーゼは胸を深く、ユイアも肩口を切り拓かれていた。

 この暗がりで、正確に二人の位置はおろか、初めて見たはずのふたりの首を正確に狙っていた。傷の差は、後ろに逃げるか横に逃げるかの違い程度。動いていなければ二人とも死んでいた。


「おいおい、反応しきれねえって。ユイアぁ、こいつは、お前の同類か?」

「だとしたらちょっと厄介かもね」

「音をも超える。我が奥義を、その身に浴びて死ね」


 加速の前にユイアも神の次に早い世界に逃げ込む。

 ようやく捉えることが出来たが、攻撃を受けようとした瞬間……剣が弾かれた。


「え?」

「温い。そして、遅い」


 防御を崩され、空いた胴体を薄く刃が斬り割いた。体を捻って回避は出来たが、全く安心できた状況じゃない。

 ユイアの少し筋が入った腹筋に着いた傷から、一筋の血が流れ出る。


「ウチが、遅いって?」

「ただ速いだけのスキルに一体何の意味が?」


 またも、爆発のような衝撃。すぐに準神速の世界に逃げ込む。

 今度は、負けはしない。

 相対する二振りの剣。器用にクルクル回しながら、斬撃が来る。避けられない速さじゃない。確実に受ける――

 受けられるはずだった。

 しかし、何かがユイアの剣を弾き、気付いた頃には逆袈裟で切り上げられていた。


「つ……」

「弱い、遅い、救えない。貴様たちは、姫様に仇名す咎人。せめてあの男のように、気付かぬ前に殺すとしよう」

「ウチの速さが通用しない? 何、あれ」

「大体は理解した。ユイア、下がってろや。ここは俺が、やる」

「ちょっと待って。ウチでも分からないスキルなのに――分かった」


 ユイアは言葉を途中で切った。

 ドラーゼが語っていたのだ。口にはしていないが、その背中には怒りが満ちていた。

 今まで弱い敵ばかりを、適当に手加減しながら倒してきた。強い敵には悉く敗れ、成長し、最近は気持ちよく強者に勝っていない。

 フラストレーションがたまっておかしくなりそうだったのだ。


「ドラーゼ、あいつのスキルだけど、ウチじゃ追いつけるけど倒せない」

「わあってるよ。手前じゃ無理だ。速いだけから、速く戦える程度の手前じゃな」


 ドラーゼ、前に出る。

 黙ってみてろと言われた以上、手を出せば恐らく殺されるだろう。

 こういう時、アスヤなら絶対に任せる。仮にドラーゼが死ぬことになっても、信じたことを後悔したりはしないだろう。

 しかしユイアはアスヤではない。心配で仕方がない気持ちを押し殺して見守った。


「速いだけの女と戦ってんだ、大した速さのお前に俺はやれねえよ」

「戯言だ」


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