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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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竜を狩る者

 竜人族の一人が口にしたのは、誰もが思っていたことだった。

 これ以上、反旗を翻した種族だというだけで虐げられる意味が分からなかった。亜人族全員が同じような状況だというのに、声を上げることが出来ない。

 魔竜と魔王を殺す事だけを考え続けた帝国の魔法使い。

 強力なスキルを持つ騎士団。ダンジョンと言う暴力的なシステムを使って強さを練り上げた冒険者。またまだ見ぬ豪傑を抱えた各国。

 とてもじゃないが、相手に出来る程数が多いわけがない。

 しかし、当たり前に竜人族の若者の間では、独立の兆しが燃え広がっていたのだ。


「なんだぁ、英雄にでもなりたくなったか?」

「そうじゃねえが、このままだとただ死ぬだけだぞ、俺たち」

「そうだな。だが、俺らの中で一番強いドラーゼでも帝国には勝てねえし、王国にも勝てねえ」

「だが、亜人族が固まったらどうだ?」

「確かにな。亜人族がまとまれば、脅かす程度の集団にはなる」

「烏合の衆に軍隊は倒せないだろうなぁ」

「兄さん、危ないことは……」

「俺はなあ、ティアル。魔王になりてえんだ。魔王になれば、他の雑音も聞こえやしねえ。お前らも余裕で養える。そうだな……国でも作っちまえばいい」

「はっ、相変わらずスケールのデカい男だな。妹、これ持って一旦村に戻ってくれ。お兄ちゃんと俺らはまだ借りを続けるからよ」

「もう、遅いよ? 速く帰ってきてね」


 森の中へ姿を消したティアルを視線で追い終わると、竜人族の少年が再び口を開いた。

 わざわざ、ティアルに聞かせたくない事だというのはその場の誰もが感づいていた。


「近々、帝国で亜人狩りがあると聞く。いつまでも、逃げてばかりじゃいられねえ。戦えるってところを見せなきゃいけねえだろ。このままじゃ……」

「そうだな。王国だと亜人は別に迫害されちゃいないらしい。もしかすると、王国の騎士団に入れる可能性すらある」

「手土産、か。先に討てば、村の人間が逃げる時間すら稼げる」

「はっ、小さいねえ。そんなことしても何の意味もねえ。だったら、俺はさっさと全員連れてここから逃げるさ。ダンジョン攻略ってのを試したって良い」

「それがお前の最適解か?」

「どっちかっつうと、理性が導き出したもんだぁ。辞めときな、俺らに出来ることなんて――」

「いいのかよ。お前だって、両親を亜人狩りに……俺も、兄貴ふたり攫われてんだ。ティアルだってこのままじゃあぶねえだろ」

「そうだ、もう、さらわれてんだ、いつまで経ってもこのままじゃ、終われねえよ俺らの人生! 俺は行くぞ」

「俺も。恋人が村にいるんだ。これ以上不自由はさせたくねえ。冒険者になった竜人族の話を聞いた。戦えるってところを見せねえと」

「だな。家族も友達もいる。俺らの代で、変えるんだ」


 若い炎を消すことは、出来ない。

 ドラーゼは最適解を使わずとも、この蛮勇が失敗することをしっかりと理解していた。

 しかし、理解だけでは止まらない。竜人族はフィジカルの強さのお陰で大して強くないスキルも強くなる。そして、奥義である竜化が使えさえすれば、確かに難しい話ではない。

 難しくはないが、絶望的にリスクが高い。

 彼らの胸と瞳に光る炎は既に燃え盛っていた。止めたって止まらない。ならば、ドラーゼが加勢することが最適解だった。

 そして、亜人狩りが控えるキャンプ地を、ドラーゼたちは襲撃した。

 結果は、成功。

 闇に紛れた奇襲と、竜人族の強さだけでキャンプを焼き尽くすことは難しい話ではなかった。

 多くの戦利品と、勝利に、竜人族の若者は酔った。村へ帰ると、凱旋とばかりに迎えられ、さらに襲撃に向かうための都合が出来た。

 亜人狩りキャンプを襲撃する度に参加者が増えた。他の亜人族も巻き込んで、勢力が膨らんでいった。

 ただ、ドラーゼが参加したのは最初の一度きり。他は一切参加せず、妹であるティアルと共に狩りに出ていた。


「ドラーゼ、また参加してくれないか? お前の力があれば、もっとデカいところが狙える」


 狩りの帰り、ドラーゼは少年たちに囲まれていた。

 驚異的に酔ったような熱にドラーゼは辟易として溜息を吐いた。


「あのなぁ、俺は反対してんだよ最初から。お前らどんどん歯止めが効かなくなるぞ」

「ドラ――」

「おい。放っておけよ、そんな口先だけの臆病者。俺らで魔竜になればいい。いいや、邪竜だ。俺らは邪竜。魔王様も魔竜も関係ない、俺らだけが最強だ」

「待て、これから先、こいつの力がないと――」

「兄さんは行きたくないって言ってるんだから、もう、辞めて。私たち、両親もいなくて……兄さんを失ったら、私……」


 不安そうなティアルの頭を、ドラーゼは軽く撫でた。

 ドラーゼの両親は亜人狩りから必死に二人を守った、ドラーゼ兄妹たちにとって英雄だ。

 ドラーゼもティアルを守ると誓い、ティアルもまた、兄妹揃って幸せになる夢を持っている。

 ティアルの表情に何も言えなくなった竜人族の少年たちは、ばつが悪そうにどこかへ消えた。家族さえいればそれでいい。

 だから、ドラーゼは強さを求め続けた。強い奴を食らい尽くすことで、最強の牙を手に入れることで、暴力から身を守る。

 守るために強くなりたかっただけだった。


「大丈夫だ、お前は俺が守る。安心しろ、どこへも行きやしねえよ」

「……逆だよ、兄さん。兄さんは好きに生きたらいい。私も、足かせにならないようにする。だけど、危ないことは、辞めてね。最近皆、おかしくて、心配で」


 若者たちの間に燃え盛るど億率の熱。熱に酔っているからこそ、誰も彼もが見失っている。

 ティアルと同じように、ドラーゼも感じていた。最近の、やり過ぎ感を。

 そして、ドラーゼの心配は、最悪なことに現実になってしまったのだ。


「大変だ、ドラーゼ」


 自分の家で農作業用の器具を修理していたドラーゼの元に来たのは、竜人族の少年。鬼気迫る表情で息も絶え絶え。どこかから走ってきたようだった。


「なんだぁ、血相変えて」

「捕まっちまった……」

「何が」

「全員、捕まっちまった! 帝国領土じゃなく、王国領にまで手を出して、冒険者共に、捕まって!」


 まずいことに、なった。

 帝国領土で適当に騒ぎ散らかす分には問題なかった。帝国は圧倒的な領土と兵力を持つまさに帝国。

 そんな帝国が何年も戦争して勝てずにいるのが王国だ。王国には、たった一人で戦の軍勢を屠る程のスキル保持者がいる。

 当然だ。技量を練り上げ精度の高い数で誰か一人でも確実に魔王や魔竜を絶対殺すことに特化した帝国と、まるで違う。

 王国は日常的にダンジョンで生きるか死ぬかの戦いでスキル保持者を選別している。

 王国のアカデミーでは攻略者はもちろん、ダンジョンマスターなどと言ういかがわしい物まで輩出している。

 そう。手を出す相手を完全に間違えた。

 王国の冒険者は、ある程度のスキルじゃ倒せない。全力で練り上げたスキルでしか、倒せない。


「こっちはあと何人いる?」

「ま、まだ行く予定だった10何人かは」

「んじゃあ、全員で村から退避させろぉ。冒険者は軍人と違う。来るぞ、討伐って名目で」

「ば、お前ひとりで行く気かよ!」


 ドラーゼは竜人族の少年の胸ぐらを掴み上げ、自分の顔の傍に持ってきた。


「それ以上喋ると殺すぞぉ、お前。俺ひとりで充分だ。助けに行ってやる。良いか、絶対に逃がせよ、全員だ。もう次の場所は見つけておいた。詳しい場所はティアルに聞けや」


 少年たちが解放の熱気に酔う中、ドラーゼは最適解を取っていた。次の移住先の選定だ。

 ある程度目星はついている上に、すぐキャンプできる程度には整えてある。

 ティアルに任せればおかしなことにもならない。ドラーゼは安心して、狩に行く。

 竜人族と他の亜人族の混成連合。向かった先は大体把握している。

 急いでいけば間に合う公算は十分あった。

 唯一、状況が飲み込めない部分があるとすれば、まず間違いなく冒険者のレベル。

 そこまで考えて、ドラーゼは笑った。

 別に何でもいい。全部殺してしまえば、間違いはないのだから。

 ドラーゼのフィジカルと深い洞察。狩りで培った追跡能力、そして何より、スキル最適解が最短ルートを構築。

 結果、ドラーゼは風になった。

 疾風の如く目的地へ、最短で、到達――


「へえ、また来たか。まったく、思った以上に亜人は多いね。殺し甲斐があるよ」

「た、たすけ――」

「ああ、まだ生きてたんだ。君、もう良いよ」


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