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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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フルバースト

 我慢の限界だった。体のダメージは思った以上に大きい。

 今は数人だったが、さすがは数百年魔王と魔竜を殺す事だけを考えて来た精鋭。普通じゃない。こんなものが大量に襲い掛かってきたら恐らく守り切れない。


「ユイアちゃん! すぐに僕の店に」


 肩を貸してもらい、治療のために店に戻り、すぐ病床に寝かされた。


「火傷が酷い。傷口は……ちょっと痛いよ」

「う、ぐう……」

「我慢して。古い組織を切り取って薬草とヒールで治療させる。医者も同じことするから安心して」


 久しぶりにちゃんと痛かった。ユイアは基本的にけがを負うことがない。まず当たらない。

 致命傷を負うより前に敵の方が倒れている。唯一、ドラーゼのような存在が相手だとボコボコにされかねないが。

 久しぶりの痛みに声が漏れる。思わず叫びそうになったユイアの視線の先に……ピンク髪の少女、ニフィアがいた。

 少女は怯えた瞳でユイアを見ている。

 ユイアは一度治療を止めてもらい、自分の服をちぎって口に詰め込んだ。

 ユイアの視線の先と、咄嗟の行動で全てを察したアシュリーは呼吸を整える。


「すぐ、終わらせる」


 今、少女に苦しむ姿を見せられない。これが自分を守ったせいで起きたことなどと、毛ほども思わせてはいけない。

 散々苦しんできたんだ、この後は、苦しみではなく、幸せであってほしいから。

 すぐ終わらせる、と言う言葉通り、治療は30分で済んだ。しかし、一瞬を生きるユイアにとっては長すぎる時間だった。


「……よし。しばらく安静だ。間違っても走らないように。終わるよ、本当に」

「ありがとうございます……ふう……やっほ、ニフィアちゃん」

「お姉ちゃん……痛い?」

「ん? 全然。マッサージしてもらってただけ。ていうかやっぱヒールってすごいわ」

「この子はまだ若いからね。治癒能力は段違いだよ。僕だとさすがにこうはならない」

「またまた。さて、ダンジョンに戻らないと」

「お姉ちゃん、また、どこか行くの? 私も、一緒が、良い」

「うええ? ちょっとこの子可愛い。持ってって良いですか?」

「君が助けた子だからね。好きにすると良いさ。僕のところにいると、襲撃される恐れがあるからね」

「確かに、それはそうですね。またお話しでもしましょう」

「ああ、待ってくれ。そのまま返すのは忍びない。ちょっとこっち来て」


 ユイアをいつもの席に案内すると、慣れた手つきで布をかける。

 ある程度鏡で状況を確認すると、ユイアの髪半分がチリチリになっていた。


「あんま剃りたくはないから、整えて、編み込んで……」

「アシュリーさんの親友の話しとかしましょうよ。せっかくなんで」

「不器用なやつでね、あんまりおもしろい話はないよ。ただ……ずっと一人だったから、最期がどうだったのか、僕に出来たことがあったのか。そう言うお話ならいいかもね」

「どうかは知らないですけど、ずっと一人だったのに親友なんだったら、その人はきっと、アシュリーさんを信用してたはずですよ」

「……なら、良いんだ。さあ、二日後、共に戦えることを祈ってるよ」

「はい!」


 最低限のセットが終わると、また雰囲気がガラッと変わった。

 元々長い髪だったが、高速移動を手中に収めたユイアにとっては邪魔だった。短い髪でもセットで遊べるって言うのは新鮮だった。


「よし。じゃあ本当に安静にすることだよ」

「分かってますってやめてくださいよも~。いこっか、ニフィアちゃん」

「うん」


 ニフィアを連れてゆっくりダンジョンに戻る。

 料理屋はかなり賑わっている。一応バイトも入ったようで、拡張すら視野だ。

 ダンジョンの方はかなり閑散としていた。目玉商品もないし、まずドラーゼに勝てない。解消するために、一刻も早く枠を手に入れる必要があった。


「ここが、お姉ちゃんの、ダンジョン?」

「てかまあ、家だね」

「お家?」

「そ。温泉もあるよ」

「温泉?」

「おっきなお風呂」

「お風呂入りたい。アシュリーおねえちゃん、入れてくれた」


 意外に面倒見がいいんなと、アシュリーの新たな一面を垣間見た気がした。

 でもそれはそれとしていい時間だ。何か美味しい物を食べさせてあげたい気持ちもあった。

 とりあえず、料理屋へ向かうといつも以上に賑わっていた。知られてしまえば人気店だ。

 ようやく世界がメルフィの魅力に気付き始めた。


「メルフィちゃん――」

「いい加減にして下さい。どうして、指示通りに動けないのですか?」


 厨房に向かうと、いつも無表情で一切の感情を表に出さないメルフィが苛立った様子でバイトと話をしていた。


「だから、シェフの指示が滅茶苦茶で何言ってるのか分からないんです」

「あなたたち、お給料をもらっている料理人でございますよね。私が面接を担当させていただいた時、よりクリエイティブでプリミティブで、少しばかりフィジカルな料理を作りたいと。私はあなたの熱意に感銘を受けて脳無い物質をリクルートしたのですよ」

「だから、そう言う覚えたての言葉を使わないで、ストレートに言ってください」

「そうです。切るとか煮るとか、料理人なら料理人の共通言語でお願いします!」

「わっかりにくいんですよ! なんなんですか、フィジカルにレイズアップしてとか、レッグレイズとレッグウォーマーを意識してって! 片方完全に防寒具じゃないですか!」

「あの、表に聞こえるから喧嘩は奥でやってください。シェフ、お客様です!」


 バイトに言われてメルフィが振り返る。不機嫌そうな表情に、ニフィアはユイアの後ろに隠れた。


「ユイア様。そのお方は」

「あ、ニフィアちゃん。町を焼かれちゃって、成り行きで預かったの」

「そうでしたか。お見苦しいところをお見せして大変申し訳ございません」

「あ、ううん。珍しいね、言い争いなんて」

「……料理人には、料理人なりの矜持がございます。私の手には余る、そう、例えるなら、砂上の楼閣でしょうね」

「なんで確固たるものの次に不安定なものを出してきたの?」

「お料理をお出ししましょう。お子様にはたくさん食べていただかないと、元気がフルバーストいたしませんので」

「そのフルバーストってほんと、なに?」


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