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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
ダンジョンマスターいなくなりマスター

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43/68

今日の枠のコーナー

「ニフィアちゃん、ね。どうして、あのマントの人たちに捕まったの?」

「……分からない。私たちの村、気付いたら、燃えてた。青い炎、黒い人……怖い」


 震える少女を、ユイアが優しく抱いた。青い炎に燃やし尽くされた、村。

 鋭い瞳を、アシュリーに向ける。アシュリーもまた、瞳を鋭く細めた。


「イレギュラーズだ。奴らの中に、青い炎を使う奴がいたはずだ」

「みんな、何もしてないのに、来たの?」


 ニフィアは涙を流しながら頷いた。


「僕の情報網でも、彼女の村については聞いたこともない。生贄だろうね。難癖付けて、殺す。死と恐怖で国を支配する。実に帝国らしい」

「帝国に行ったことが?」

「ああ。帝国は皇帝と、六人の皇子たちによって国土を広げ続けている。女帝エトナは確か第五皇女だったはず。全く、ほぼ末の子でもあれだけのことをできる国だ。帝国は大きいよ」

「……ウチ、別に帝国の人になったわけじゃないから、めちゃめちゃイライラする。こんな子供を……帝国の物になったからって何してもいいって訳じゃないでしょ」

「そうだね。だからこそ、取り返さないといけない。しかし、イレギュラーズは強い。僕たちのように冒険者上がりでもなければダンジョンマスターでもなく純粋な武人。覚悟しないとね」

「今日の段階で、迷宮遊戯予選は12枠。そこそこ集まりました」

「そうか……楽しみなことだ。どうだい? 今日は休日なら、ネイルでもしようか?」

「良いんすか? やった!」


 王国を食い散らかした帝国の闇が巣食う。ぶっちゃけ、ユイアにどうにかしたいという気持ちはなかった。

 ただ、自分たちからヘイトを背けさせるためには迷宮遊戯しかなかった。

 アスヤが持ち込み、全員で賛同したツケだ。

 アスヤのせいじゃない。アスヤに全てを丸投げした、ユイアたちの責任だ。

 爪にネイルの施術を受けながら、ユイアはつかの間の休息に体を投げた。

 考えれば考える程に坩堝。リフレッシュのはずが、新たな問題を抱えた。

 胸がグチャグチャだった。少女のこと、処刑された無関係な人の顔。女帝の暴虐。そしていまだ底が知れないイレギュラーズ。

 ただ、ダンジョンを守って繁盛させたいだけなのに、そうはいかなずに問題ばかりくる。

 ただ、弱音は吐いていられなかった。アスヤの責任とまではいかないが、ユイアが始めた迷宮遊戯には責任がある。


「ええ、かわいい……え、アシュリーさんめっちゃうまいですね!」

「ありがと。また、何かしたいことがあったらおいで」

「はい。もちろんですよ」


 ユイアは一度に戻って迷宮遊戯の集計と抽選の準備を始めた。

 可能な限り、出来ることは全てエンターテインメントに昇華させる。

 アシュリーやアルヴェンの力を借りて大々的に宣伝を討つ。意外と今までなかった、ダンジョンマスター同士の戦い。

 宣伝したのは抽選終了後の僅か二日。二日でも、発表会場である帝都大広場は、喧噪で包み込まれていた。

 話題は話題を呼んで、発表するための広場には多くの人がにぎわったわけだ。

 店先から注目する者、野次馬、実際に抽選に参加した者、興味本位の者。

 元々、ダンジョンなどと言う血沸き肉躍るシステムが好きな国民だ。戦いが戦いを呼ぶような今回のシステムは人気が出てもおかしくはない。


「お集まりの皆さんこんにちは~。ウチは、あっちの方でダンジョンを運営してます、ユイアです。今日は、ウチら中小のダンジョン合同企画、迷宮遊戯の予選抽選を行います」


 大きな声で叫ぶユイアに、聴衆たちは拍手や口笛、思い思いの歓迎で応えた。

 心臓の鼓動が早くなるユイアは、整えた髪とネイルのお陰で、緊張を殺した。おしゃれは何者よりも優越する。


「この予選を勝ち抜いた六組を初期保有者として、今日より一週間の争奪戦をお行います。争奪の方法は自由です!

決闘、暗殺、ダンジョンクリア報酬、金銭による交換。なんでだって構わない!

好きな方法で奪い合ってください!

ただし、保有者は常にこの掲示板に名前を晒されます。自分が狙われる身と言う自覚を持って、足掻いてください!

そして最後まで勝ち残った枠保有者は、帝国第五皇女にしてこの町の支配者、女帝エトナの私兵、イレギュラーズと戦闘する権利を勝ち取れる! 色々不満があるでしょう、友達、奥さん、旦那さん、使えない部下や馬鹿なダンマス。でももう大丈夫! 日頃の不満は女帝に全部ぶつければいい! さあ、始めましょう、応援しましょう、世界を変えるお祭りを!」


拍手喝采。

イレギュラーズ。支配者への真正面からの反逆。既に話は着けているからこそ、大胆不敵な煽動。

ユイアはこの一瞬だけとは言え、町の支配を獲得した。大衆は熱に弱い。

圧倒的なカリスマさえあれば、人はついて行きたいと思う。

アスヤにならった、ユイアたちを酔わせたたった一つの方法。なんかすごそうで馬鹿みたいなことを抹消面からやって絶望の壁を打ち砕くこと。


「それでは最初の六枠を決めます! つっても、ウチらは名のあるダンジョンマスターじゃないから、ここに出るのは代表名です! 張り切ってどうぞ!」


 水魔法展開。噴水がテンションを現すように空へ撥ねる。炎魔法が場を盛り上げ、水と炎がぶつかりキリが吹き荒れる。

 たてかけた水晶版が、霧の後ろから出現し、抽選が始まる。


「それではまず人枠目……出ました! 美容室併設型ダンジョンマスター、アシュリー・アスラ!」


 さすがに一枠目を獲得するのは大した運命力だと、ユイアの声も大きくなった。


「続いて2枠目! 老獪さは本抽選会ピカイチ! 最高のダンジョン用品の仕入れ屋、アル・アルヴェン!」


 運しか介在しないはずなのに、アルヴェンの当選はなにか裏を感じて止まない。この発表演出を任せたのは彼だ。何か自分でおかしなことをしていてもおかしくはない。


「続いて……ライブ会場併設型ダンジョン、あなたの推しになりたいとか言った覚えないし、塩対応のお姫様、ショナ!」


 あれでアイドルなら相当だ。神を信仰するでもなく一人の人間の偶像を信仰させるなんて相当な魅力がないとできやしない。


「はいどんどん行きますよ!」


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