私がダンマスだ
「……何、言ってんの?」
「あなたの、生き方、戦い方、全部、誰かを追ってる。それ、無理になるよ」
「は?」
「あなたも、ていうか、みんなも、誰かにはなれないから。私は、知ってる。誰かになろうつぃた人が、死んじゃったから。だから、私がダンマス。あそこで死んだ、トーアと一緒。ぶっちゃけ、どうでもいい。イレギュラーズも、帝国も」
「なら、ショナさん? は不参加ってこと?」
「ううん。やるよ。私、あなたのことは嫌いじゃないし……イレギュラーズは、許さない。ダンマスを殺した罪は償わせる」
「僕も、参加させてもらうよ。その争奪戦」
「既に始まっていると、解釈した方がよいな。では、あとのことは任せろ。噂を広げるのは得意だ」
アルヴェンの言葉と共に会は終了した。
全く以って波乱だったが、物事が先に突き進んでくれた。ようやく、ひとりでも何とか解決への糸口を模索出来た。
ただ、ショナに言われたことが、ずっとささくれみたいに心をチクチク撫でていた。
ユイアは小さな痛みを腕で思い切り押し付けて、グッと飲み込んだ。このままで、良い。
アスヤになると決めた。アスヤなら解決できるのだから、至って合理的なのだと。
「ユイアちゃん。今日はトンだことに巻き込んでしまってすまない。僕を殴ってくれても構わないよ」
申し訳なさそうなアシュリーの顔。アシュリーは悪人じゃない。全く以って臭いがしない。
ただ、何か裏があることは確かだった。今のところ、何だか分からないが。
「じゃあ、またスタイリングしてください。戦う前に、あなたに整えてもらいたいなって」
「それは構わないけど……どうしてだい?」
「簡単です。自信が着いてくるから。ウチは自信がないんで。ショナさんに当てられたけど」」「……君は、何故、冒険者に?」
「それしかなかったんです。ウチが生まれたのは戦場でした。生まれてから親もいない。体を売るか、戦うかでウチは後者を選んだ。速いだけで囮に使われ、馬鹿みたいに危険な任務も速さだけで乗り越えた。自分を消費する戦い方しかできなかった。最後は相手が悪すぎました。普通に、あ、死んだなって。死にたくなかった、何も出来ない、怖い、嫌だった。だけど……あいつは、手を差し伸べてくれた。ウチも知らない、ウチの力を引き出して、ヤバい時はいつも、こう言ってた」
「笑って、酔おうぜ」
「そう」
「……僕はその言葉を最初に聞いた時、笑ってしまったよ。自らを鼓舞して無理でも笑う。笑うことで絶望を超える快感に酔って、結果的に回りも巻き込む。自分がまず笑って余裕を持つことで、味方の心の平静を保つ。上手い手だと思ったよ」
「あはははははははは」
ユイアは笑った。
まるで、アスヤが訳の分からないギャグを言ったときと同じ感覚だった。
まったく常識にとらわれない、本当に的はずれなこと。
「あの不器用馬鹿にそんなことできるわけないですよ。計算じゃない、アレを素でやるから、色気があるんすよ」
「色気、ね。確かに。もし、戻ってきたら僕も話してみたいな、彼と」
「ええ。お話しましょ。じゃあ、ウチも急がしいので」
こうして始まった、迷宮遊戯、その予選。
王国が滅び、帝国への動乱が収まりかけてきた今、ユイアは鉄が冷めないうちに一石を投じた。今のところ、アスヤが敗れた今のところ、全て女帝エトナの思うがままに推移していった。
許せなかった。アスヤの仕掛けも一切が使われていないし、また使い方も分からない。
このままにしておくつもりは毛頭なかった。掻き乱すだけ、掻き乱す。




