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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
笑って酔おうぜ

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31/68

魔王様

 ユイアはまだ、諦めていなかった。全ての攻撃を封じられ、圧倒されても、まだアスヤがいた。


「お前らの全部を俺に寄こせ」


 契約更新。意味はよく分からなかったが、直感が、この間ドラーゼがやっていたように、スキルを貸す契約スキルの能力。

 何だって構わない。アスヤが来なければ、既にユイアの心は折れかけていた。

 強力すぎる取り巻きと、自信を守る完璧な盾。まさに攻守のバランスが優れたどんな状況でも戦い続けることが出来る強者。


「あーしの閃光撃、背中を取ることは出来たけど触れられない」

「知ってる」

「んだー? 諦めモードですか、ヘボマスター」

「んなわけあるか、こいつを倒すために色々準備してきたんだ、まあ信じろ」


 アスヤの背中は大きかった。

 だからこそ、ユイアもそしてドラーゼも、全てを託すと決めた。

 ふたりの体が輝き、契約更新完了。

 追随を許さない判断の速さと、追随を許さない物理的速度を得たアスヤが、幼女の化け物へ飛び込んだ。

 最早、目で追えない攻めと防御。全く歯が立たなかった相手に、アスヤは見えない斬撃のトンボ精霊と、猿人間の精霊三人態勢で挑んでいた。

 今まで見たことのない全力の戦い。打ち合いに次ぐ打ち合い。

 驚くべきは幼女の方。

 アスヤの契約スキルをフルに使った攻撃を、涼しい顔で防ぎ切っていた。時折反撃の構えも見せ、全く余裕がない戦い。一方的でないだけマシとばかりの戦いが続いていた。

 全力アスヤが、国内で敵なしの力を持っているアスヤが、完全に封じられていた。


「ユイアさん」


 熾烈さを極める戦いの最中、手伝い妖精のファルマがゆっくり近づいて来た。


「ご主人様の計画、最後のワンピースになってください」

「何言ってんの、あんた……こんな戦い、割って入れない」

「大丈夫、そのための町です。この町には、ある仕掛けがあります。ただ、王国兵士が邪魔で、発動が難しくて」

「何それ、仕掛けって言っても、もう破壊されてんのよ?」

「大丈夫です。私を信じてください」

「おいおい、内緒話かあ? 俺も混ぜろや」

「ドラーゼさんは、足が……」

「るせえよ、バカ妖精、殺すぞ」


 ドラーゼと頷き合い、ユイアは足を叩いて、走り出した。


   †


「あなたを復活させ、このような愚かな行いをさせたのは、どいつでいやがりますか?」

「黙秘権を行使する」


 この馬鹿幼女……強すぎんだろ。

 見えない斬撃と歴戦演舞、あとは戦闘に使えそうな反射まで利用して攻防一帯の全力をぶち込んでるっていうのにこいつ、傷一つつかねえ。無理ゲー過ぎんだろ。

 ああくっそ、魂賭けた契約なんかするんじゃなかった。勝つとか負けるとかいうより硬い。

 この全力の死闘、全てがブラフに過ぎない。

 過ぎないが、あのバカ妖精がきちんと働いてくれるか分かったもんじゃねえ。せめて最初かった分の仕事位はしてほしいところだ。


「私はあなたをあるべき場所に戻したいだけです。大人しくしやがってください」

「それやめね? 上司に報告しとけよ。俺は死にましたって」

「別にここじゃなけりゃそれでよかったのに、ここに来やがったあなたが悪い。ここでちょっかい出すのは、ルシエル」

「ピンポン!」


 斬撃連打。惜しげもなく、申し分なく、撃ち続ける。こいつが今までの俺の攻撃を知ってれば虚をつけるが、うん、無理。こいつ、俺の攻撃関係なく全部捌いていやがる。

 何かもっと悪い装置積んでるんじゃないかこの機械チート野郎。


「分かっているならとっとと消えやがってください。何故この世界にこだわりやがるんです。望むなら、他の世界だって」

「やだね。与えられた世界で何が楽しいってんだよ、バーカ」

「しね」

「ストレートなお言葉ありがとうございます」


 口撃はするが致命的な一撃は与えられない。分かっちゃいたがこんなに強いか、上位種が使う機械って言うのは。

 頼むぜ、ファルマ、間に合ってくれよ。


「下らない、理由でやがります。従ってればいい。幸せとは最適化された生活で合ってただの数字。抗ったところで仮初の自由が一瞬得られるだけで何も出来やしないんでやがりますよ」

「仮初だろうと楽しけりゃそれで良いさ。問題は、楽しくもねえのに死んじまったら、ぜってえ後悔するってだけだ」

「理解に苦しみます」


 攻撃の速度が上がった。こいつのロボットアーム、どんなモーター詰んでるんだ。

 しかも、斬撃をアームが噛みついて引き千切りやがった。見えないもの見てんじゃねよ。

 攻撃の手数が少ないせいか防御性能が段違いだ。決めきれねえ。

 のは、織り込み済み!

 最適解が導いた抜群の隙も、こいつの前じゃ予定調和のただの蹴りでしかない。

 閃光撃も見切られて愉快な仲間たちも通用しねえ。詰んだ。


「終わらせましょう。私の連勤を」

「ご主人様!」


 視界の端に見えた、クマリス犬妖精。お前がこのタイミングで声かけて来たってことは、そう言う事でいいんだな? 信じるぞ、秘書妖精!


「残念ながら、残業(オーバータイム)だ!」


 バチン、と足元から電流のような光が漏れた。これが、街づくりを完全なブラフに作り上げた俺の計画。

 さあさあ皆さんお待たせいたしました、こっからが、千両役者の逆転劇!

 エクシアのロボットアームがゆっくり床に落ち、何度かヒューズが飛ぶような、異世界でいよいよ聞かない音が聞こえた。上手くいってくれて助かった。


「これは……何ですか」

「異世界版、EMPだ。消費するのは魔力。お前ら女神の機械にかかるようにするのに苦労した。町自体が、発動するための充電装置になってる。魔力自体は普段生活している亜人から少しずついただいております悪しからず」

「この――」

「一緒に落ちようぜ。何、短い旅路だ、エクシア」

「クソ野郎――」


 エクシアを抱いて、見えない斬撃で俺ごと貫いた。

 暗転、即座に見える、光の階段。目を開けてすぐに辺りを見渡すと、ぼうっと会談を眺めるエクシアが見えた。

 既に諦観しているようで、俺を見つけても特に抵抗する様子もなかった。


「行くぞ、馬鹿女神」

「ここは、死後の世界でやがりますね。管理者がいないせいで、自由に登っていきやがる。このせいで、来世は完全にランダムになりやがります」

「別にいいだろう。それで」

「嫌だから、私は今の職に就きました。それで、どこへ連れて行くんです?」

「大丈夫。連れていかれる」


 言ってすぐ、足元から手が出て来た。段々かわいく見えて来たよな、この手のエレベーター。乗り心地もスムーズだし。

 降りる最中も、降りてからも、エクシアは完全に諦めた様子だった。

 今日も死んだ俺たちを迎えてくれる行燈の灯。修行を終えて戻ってからはそんなに戻ってないけど、落ち着くようになってきた。


「何でやがりますか、この居酒屋みたいな風体は」

「居酒屋だからな。おっす、大将」

「ご苦労。久しぶりだな、エクシア」

「やはり、こんなところにいやがりましたか……ルシエル」


 角を生やしたガキは、カウンターに頬杖をついて、俺たちを中に入れた。

 長いようで長かったが、ようやくこれで、俺は目的を果たすことが出来たわけだ。

 馬鹿幼女を座らせ、俺はガキの方を見る。


「契約は完了したぞ、魔王様」


   †


「ゼラールよ、首尾はどうだ?」

「順調です。国王陛下。例のダンジョンの主は裏で帝国と繋がっていました。今なら売国奴の殲滅と、ダンジョンの奪取も可能です」

「だが、大丈夫なのか? その主が相当の手練れと聞く」

「そのための女神様です」


 ゼラールはルダウが敗れた時点で先手を打っていた。ダンジョンを襲撃させていた。

 女神の力さえあればどうにでも出来ると踏んでいた。これはもう、戦いではない。一方t的な蹂躙だった。


「そういう、ことだったんやね。通りで国境付近が騒がしいと思ったら、はーあ、おもんないわぁ」


 突然現れた女と、全身黒装束の剣士。見張りは何をしていると扉を見ると、音もなく、兵士が殺害されていた。

 すぐに国王を振り返ると、国王の首を、黒剣士がはねていたところだった。

 有り得ない話だった。

 王国、いや王都で、国王が一瞬で死ぬようなことがあるのか。有り得ない。

 王国と帝国の戦争中ですら、国王の命が危ぶまれることはなかった。それが今、一瞬で刈り取られた。


「さて、おいたが過ぎたみたいだから、代わりに私がやってやらんとあかんなって思って」

「馬鹿な……何者だ、貴様!」

「しししー、しー。死ぬ間際位、静かに死んだ方がええと思うで?」


 女はいつの間にかゼラールの傍に寄って、人差し指を唇に当てて、空いた手をゼラールの口に回した。あまりにいきなりのことで、反応が出来なかった。混乱が、先に勝つ。

 なんで、こうなった。勝つことが決定していた戦いが、いつの間にか負けていた。

 女は口を手で塞いだまま、ゼラールの首へし折った。


「じゃあね」


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― 新着の感想 ―
読了記念 色々感想並べるのもよろしくないので一言だけ 「こういうのでいいんだよこういうので」 今後も期待してます
この終わり方は続きが気になるよ! 誤字報告 鉄大妖精⇒手伝い 会談⇒階段 五峰的⇒誤字?
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