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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
笑って酔おうぜ

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29/68

契約スキルの始まり

「お前は運がいい。最初に出会ったのがこのトンボの英霊。ドラゴンに歯向かっていなければ。こいつは空の覇者だった」

「ああ。しかも見えない斬撃は正確には斬撃を飛ばすわけじゃなく、奴が爆速で直接斬りつけるって言う驚き付き。初見じゃガード出来ない」


 過去が流れる不思議なテレビで行うショータイム。結婚式場で見る感じだ。俺の大学生の友達が学生企業と学生結婚してて、こいつ今年死ぬんじゃないかなって思ったのを思い出した。社会人でニートやってる友達は今年も元気にしてるだろうか。


「あいつは変にいたぶらずに即死させてくれるしな。次が世界樹か。お前、木とどうやって契約した」

「蔦にペン握らせて俺が書いた」

「あくどい。そしておもしろい。普通は樹と契約しない」

「普通が一番おもんない」

「次が、深淵の鑑。攻撃を反射するスキルだな。外で一度だけ使ってたな。あのデカいダンジョン攻略のために」

「ああ。防御プリセットで使ってた。この鏡はこっちのダンジョンの奥にあった。踏破するのに、2、3、年かかったな。あと、こっちのダンジョンを目安にダンジョン作ったけど、こっちが強すぎて外は意外と楽な感じだったっけな」

「ダンジョンのボス、蛇野郎を倒すのは難しかったようだな。スキルと内心を看破され、まるで蛇みたいに絡みついて殺してくる」

「こいつに5年締め続けられた時は死んだ方がマシだと思ったが、ここでスキル深化を使えるようになった。トンボ精霊が出てきて蛇を刻んだ時は驚いた。蛇も驚いてた」

「ここで気づいたのが、殺しても魂が無事なら無理やり契約できるってこと。そしてそのスキル全てを使い、何とか倒したのが、このサル型か」

「孫悟空さんマジ強かったし、歴戦演舞があるせいで俺は基本戦闘で負けなくなっちまっておもんなかったな」

「満を持して外に出て、あの使えない妖精と土地を買ったか」

「その後会ったのがドラーゼで助かった。あいつが俺と同じように戦闘経験を積めば、恐らく俺を超える」

「最適解か。覚醒した奴は最適解すら無視して自分を通すなんて荒業さえも取得した。ドラゴン族という元々高いフィジカルを持ち、奴の野望が成就するのに必要なパーツはそろいつつある」

「あいつは優しいんだよ。他のドラゴン族が良い奴に見えるよう、自分が飛びぬけて、突き抜けて悪になる」

「知ってるか? 奴は邪竜を越えた魔竜になりたいそうだ」

「考えそうなことだな。お陰で初期のダンジョン経営は上手くいった。その後はまあ、思わぬ広いものだな、ユイアにメルフィ。国の土台は着々と作られている」


 俺は運に恵まれていた。何度か死ぬ程度の苦労はあったが、出会った人にだけはほんとに恵まれたと自負している。

 テレビを見て、ソフドリを喉に流し込みながら一層深く考えることが出来た。

 こいつとの、魂を消滅させるなんてクソ面白くない契約もしっかりと履行しつつある。

 俺の目的は、幼女女神を殺す事じゃない。


「女神を殺すのではなく、無力化の道を進むか、アスヤ。そっちの方が面倒だぞ」

「殺すよりも面倒はないと考えただけだ。ここまで来るのに壮大だったっていうか、面倒だったのは認める。あんたの情報がないとシンプルに無理でした」

「ふん。まあ、あんまり運命はお前の思い通りに運んでくれるわけじゃないとは思うがな。上がどうなってるかは、俺にもわからない。アスヤ、もしも上手くいかなかったら、今のお前に奴は殺せるのか?」

「取り敢えず、スキルは封じられたが、まあやってみるさ」


 席を立った。結構食ったな。お会計があったら怖い。この店は一応全部出世払いだから、最悪出世せずに積み立てておこう。


「後で全部払えよ」

「分かってるよ……ツケといてくれ」


 奴はにやりと凶悪な笑みを浮かべ、指を鳴らした――

 視界が明天、俺はついさっきぶち殺された場所に立っていた。幼女女神のエクシアからすれば、俺を殺して逃がすよりも、捕まえておきたいはずなんだが、いないな。

 俺が死んだら蘇生されるからくりだって言うことはそりゃ、知らねえか。

 どのくらい経った? 向こうで何年いようとこっちじゃ一時間もかからないはずだが。

 微かに、背後で叫び声が聞こえた。叫びと言っても悲鳴じゃなく、雄たけびだ。

 こんな風に騒ぐ奴を知らない。亜人の人たちの声でもない。ダンジョンの方は無事か?

 すぐ背中に見えるダンジョンは静けさの塊だった。中には誰もいない……はずはないんだがな。いそうにない。

 仕方がなく、ダンジョンから街を一望できる例の場所から見下ろした。


「ざけんなよ、クソが」


 思わず悪態が口を突いて出てきやがった。

 見下ろし眺め展望できる場所から見えたのは、破壊し尽くされ、それでも業火を上げて燃える町だった。景観を壊さないように調整された建物は根こそぎ破壊され、舗装された道は砕かれている。

 火矢でも放たれたのか、屋根も道も草木も全て、丁度いい燃料扱いで燃やされていた。

 破壊された町の先で、白銀の甲冑に身を包んだ兵士たちが、亜人を殺していた。

 この町は、俺のダンジョンがあるって言うのが唯一の警備機能だ。町が襲撃されれば俺やドラーゼで対応するつもりだった。

 だが、こんなに早く、襲撃されるとは思わなかった。格好から見て、王国の兵士たち。探せばスキルホルダーもいるだろう。

 俺は次に、ドラーゼやユイナを探した。メルフィは旅に出たせいでいないだろうしタイミングが本当に最悪で笑いも出ねえ。


「いた……」


 二個目の町。一つ目は破壊されているためか既に撤退し、二つ目の町でユイアとドラーゼが戦っていた。

 王国軍の猛攻を退けつつ、ふたりが戦っている相手は……エクシアだ。

 俺相手でもほぼ即死の攻撃を仕掛けてきたエクシア相手にふたりで善戦……というには厳しい戦いだった。

 スキルチャフであいつにスキルは上手く使えない。あとアームが固すぎてドラーゼの足じゃまず壊せない。ユイアの神速もとどのつまりただの剣。

技術の粋を集めた単純な科学力の差に押されている。

隠しているだけでまだまだ装備は多いんだぞ、そいつ……。

にしても……

もう一度、破壊され尽くした町を見渡した。

 体が勝手に動いていた。

 生まれて、いや、生まれ変わって初めてかもしれない。

 誰かを、こんなにも殺したいと思ったのは。


「待たせたな、第二ラウンドといこうか、エクシア」

「私の名を、知ってやがるということは、やはり接触したということでいやがりますか」


 初めて、侮蔑の意味が籠った表情で、エクシアは俺を睨んだ。良い顔じゃんか。


「邪魔すんじゃねえよ、馬鹿アスヤ!」

「てか、あーしら頑張ってたんだけど、良いとこだけ取るつもり?」

「ご、ご主人様、そのお方は、人ではありません!」


 揃いも揃って、馬鹿ばっかだな、本当に。


「馬鹿ども、契約更新の時間だ。俺に全部、よこせ」

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