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ダンジョンマスターはじめマスター  作者: 聖音ユニア
笑って酔おうぜ

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19/68

可愛くないガキ

 連中、ダンジョンの作りが一辺倒で面白くもない。それに、組織単位で俺たちの情報が周知されてないのも問題だろうに。それか、隠しやがったか? 攻略された事実を。


「急に外連れだしたかと思ったら、何のお使いの時間でちゅか? ヘボマスター」

「そそ、それにここって階層が全部で82層ある王国三大ダンジョンだよね!? あーしらじゃ全力出しても攻略できるの?」


 相変わらず舐め腐った態度の馬鹿ドラゴンと、不安そうに辺りを見回すユイア。

 馬鹿ドラゴンはともかく、ユイアは国内のあらゆるダンジョンを囮か餌役として攻略に勤しんでいた。

 ここがどういう場所で、どれだけ攻略が絶望的か分かってるんだろう。そりゃ俺も、例の実験紛いの目的がなければ、まずソロでクリアなんて思わなかった。

 今回のダンジョンは豪奢な西洋の洋館って感じがする。装飾に滅茶苦茶凝ってる。どんなモンスターが出てくるか楽しみではあるが、そうも言ってられない。


「あの辺に管理室がある。ぶち抜けるか? 馬鹿ドラゴン」

「あー? 出来るとして、あんなとこに管理室があるか? ウチらのは結構深いとこに作ったろ。安全上」

「あいつらは高いところから直接見物したいのさ。誰が作ったのか知らねえが、作者のサインみたいな感じで、裏方の施設は同じようななものばっかなんだよ」

「でもマスター。逆を言えば、今まで管理室特攻を目指した人とかいないのかな」

「リスクが高い。単純に全てのダンジョンから出禁、なんてことも有り得るからな」

「俺らは良いのかよ」

「ああ? いいもなにも、攻略する気なんてねえんだから、どうでも良い」


 俺の話を聞き終わる前に、馬鹿ドラゴンは管理室があるっぽい壁を……蹴り抜いた。

 よし、馬鹿だがこういうところは正確だな。俺も行くとしよう。

 装飾の奥、壁、内部装甲、そして管理室の壁の合計四層ぶち抜き蹴りで空いた大穴を、悠々と抜いて行く。

 穴は中々長かったが、ぶち抜いた先の薄明かりは思った以上に近かった。


「お楽しみの時間は、終わりでいいか?」


 間抜け面二つ。

 ルダウと、やっぱりバックについてやがったか、ゼラール。ここまでは、想定通り。


「茶も出ねえのか? 辛気臭いとこだなここは、ええ?」

「あなたの妖精さんも逃げるばかりでお茶をくれませんでしたので、お相子では?」

「ああそうか、後で折檻しておくよ」


 互いに構える――


「ちょっと待て! お前らまさか、ここで戦うつもりか? ふざけるな! 管理室だぞ! 外でやれ!」


 吠えるゼラールに、毒気を抜かれた俺たちは適当にくつろいだ。


「ソレドラス、ヴィアン。お客さんの相手をしてもらってもいいですか? 僕は彼と少し話します」


 ルダウがアナウンスのスイッチを入れた瞬間、奥で何か爆発音が聞こえた。

 初期対応が速いな。普通は、ゼラールのように喚くなり呆けるなりするんだが……連れてきた二人は予定通り、ワンオンワンで釘付けってところかな。


「さあ、お望み通り、僕のメンバーとあなたのメンバーのタイマンの場を作りました。これで邪魔は入りません」

「かわいくねえな、お前は。おい、ゼラール。持ってけ、もうお前から金は借りねえ」

「何が持ってけ、だ。ウチのダンジョンを攻略した金じゃないか」

「金は金だ。そいつにまで嘘吐き始めたら、お前はもう、この道じゃ生きて行けねえぞ」


 大金の入った袋を投げ落とすと、ゼラールは神妙な表情を手で僅かに隠した。

 何を考えているのか、何に気付いているのか、何を隠しているのかは知らない。ただ、今のこいつはらしくない。確実に焦っている。


「いいや、ルダウ。依頼はまだ、生きていると考えていいんだな?」

「依頼内容が、ダンジョンをどうやっても手に入れろ、から変わっていなければ、イエスです」

「もっとかわいく答えられんのか、お前は一々癪に障る。そう言う事だ、アスヤ。俺様とお前の奇妙な関係も、ここまでだ」

「だから、なんでウチのダンジョンを狙うんだ? 金は返したぞ」

「そこが問題だってことに気付かないか? 俺たちの仕事は何だ?」

「金貸しだろ。営業マンが男同士の勝負に割って入るなよ、邪魔くさい」

「そうだ、俺は金貸しだ。ルダウ」

「もう良いですか? ダンジョンマスター」

「試合開始の合図がないと戦えないのか? お坊ちゃん」


 見えない斬撃――

 確実に貫いたはずなのに奴ではなく、デスクが切断されるだけに留まった。

 避けた? 思った以上にこいつ、速いな。

 戦闘プリセット。俺は今、この世界で散っていった英雄たちの戦い方が体に染みついている。どこへ逃げようと俺の目からは逃れられない。


「見えない攻撃に、歴戦演舞、でしたか。見えない斬撃だけでも厄介なのに、あなたは近接戦闘において無類の強さを誇る。そして弱点破壊の三つが戦闘プリセット、でしたね」

「お勉強できてえらいな、坊ちゃん!」


 斬撃を飛ばしながら、歴戦演舞で回避コースを完璧に読む。

 俺の進む足と、奴の引く足の交錯する瞬間――見えない斬撃。

 確実に剣線は奴の首を狙い、斬り裂いたはずだった。

 だが、ルダウは余裕の表情で避け切って見せる。動きが気持ち悪いな、なんだこれは。


「なるほど。実際に見て見ると脅威的ですね、戦闘プリセット。防ぐことや、弾くことが辛うじてできる見えない斬撃を、弱点破壊で強化。絶対両断の切れ味を作り出している」

「そこまで看破した奴は初めてだよ、考える前に全員死んでるからなあ!」

「野蛮は、斬ります」


 巨大な、鎌――

 こいつ、どこからこんなもの出しやがった。

 下の軌道からかち上げるような斬撃。

 紙一重、顎の先を通っていく鎌の切っ先は天井をまるでバターを斬るみたいに引き裂きやがった。切れ味半端ね。


「別に、絶対斬れるって触れ込みの武器は必要ありません。十分斬れればそれで良い」

「ほんっと、かわいくねえなお前は!」


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