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専属の侍女のジャニスとカイラ

 この日、チャーリーは他国の外交官と会談があるということで不在である。


 王宮の広大な森に散策に行き、お気に入りの木陰で読書でもしよう。料理人に言ってサンドイッチでも準備させ、それを持って行けば日がな一日読書三昧出来る。


 シリーズ物の小説を持って行けば、一日で読破出来るかもしれない。


 そんなことを考えていると、侍女のジャニス・アボットとカイラ・ギボンズがやって来た。


 二人は、わたしの専属の侍女である。ジャニスは赤毛にブラウンの瞳。カイラは髪も瞳もブラウン。どちらも大柄で大胆な性格をしている。二人は同郷で仲が良く、変わり者だとか。だから、侍女仲間で浮いているらしい。


 そういう人たちだからこそ、わたしの専属侍女になったのかもしれない。


 とにかく、二人とは初対面からなぜか気が合った。もちろん、悪女のわたしはそれなりに横柄な態度を取り続けている。だけど、それもしだいに面倒くさくなってきた。


 だから、いまでは曖昧な態度になってしまっている。とはいえ、二人は豪胆かつ大胆すぎる態度なので、わたしが横柄な態度をとろうと媚びようとまったく気にならないようだけど。


 とにかく、今朝も二人は元気にやって来た。


「おはようございます」

「おはようございます」


 天蓋付きの豪勢な寝台の上で上半身を起こし、ボーッとしている頭に彼女たちの挨拶が響き渡る。


「おはよう」


 それから、伸びをしながら欠伸をする。


「今朝もいいお天気ですよ」

「ほら、光り輝いています」


 二人は、入ってくるなりカーテンを開けたり散らかした本を直したり衣服を整えたり、洗顔の準備をしたりとテキパキと行ってくれる。


 ジャニスがカーテンを開けると、室内に強烈な光が満ち溢れた。


「まぶしい」


 おもわず、腕をかざして光をさえぎる。


 まるで夜行性の動物か陽の光に弱い魔物みたい。


 なんてバカなことを考えてしまう。


「ラン様、今日の予定は?」

「殿下はすでに発たれました。なんでも、朝食会の後に会談をされるそうです」


 カイラに続き、ジャニスが報告する。


「らしいわね。今日は、一日読書でもしようかしら」

「そういえば、侍女たちが噂していました。今日、『怖いレディ』たちが、バラ園の東屋でお茶会をするらしいですよ」

「そうなのです。ですから、侍女たちはみんなピリピリしています」


 ジャニスに続いてカイラが続ける。


「へー、そうなの。って、それに呼ばれていないわたしって、なんなのかしらね?」

「嫌われているからじゃないですか?」

「煙たがられているからじゃないですか?」


 カイラとジャニスが同時に答えた。


 そういうのって嫌いじゃない。


「やっぱり? だと思った」


 笑いだすと、笑いは伝染するから二人も笑いだす。


「それなら、わたしも参加しないわけにはいかないわよね。急襲しちゃおうかしら。いきなり登場! そして、嫌がられることとか煙たがられること、ついでに不愉快だとか鬱陶しいことをバンバン言ってやるの」

「うわぁっ! それっていい考えです。面白そう」

「ほんと。最高ですよ。是非ともそうして下さい。侍女たちの顔もみてみたいですし」


 ジャニスとカイラは、ほぼ同時に言った。


「一緒に来る?」

「もちろん」

「当り前です」


 またしてもカイラとジャニスは同時に答えた。


 二人は、息もピッタリなのである。


 それはともかく、というわけで今日の予定はお茶会襲撃に決まった。


 ちなみに、彼女たちが呼ぶ「怖いレディ」というのは、王妃を始めとした王族のレディたちのことである。


 そこにわたしが入っていないのは残念よね。


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