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契約結婚の相手は王子みたい

 ほとんどわからない状態で生活が始まったけれど、なんの制限や束縛はなく、プレッシャーやノルマっぽいものをかけられることもない。精神的にずいぶん楽になったおかげか、ここでの生活にすぐに慣れ、しかも心から楽しむことが出来ている。


 チャーリーといっしょに王宮内を散策したり、絵画や彫刻品を鑑賞したり、ときには王都の劇場に観劇に行ったり、さらには乗馬を教えてもらったりといままでのがんじがらめの生活から解放された反動もあるのかもしれない。とにかく、エンジョイしまくっている。


 楽しすぎて仕方がない。


 チャーリーのエスコートは完璧で、しかも彼はデートの相手としては親切で面白くて申し分ない。


 彼とすごすことが、すぐに普通になった。


 まるでほんとうの夫婦のデートのように、二人でいっしょにすごすことが日常化した。


 わたしたちにあるのは、癒しと笑い。


 いつしか彼がなくてはならぬ存在になっていた。


 とはいえ、彼の存在が大きくなる半面、不安や心配が大きくなっていく。


 こんなにわたしと一緒にすごしていいの? 彼の愛する人は、彼を待っているのではないの? しょせん契約妻であるわたしが、彼を独占していていいの?


 彼の愛する人のことを思うと、たまらない気持ちになる。そして、彼自身にも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


 もちろん、そういうことはおくびにも出さない。


 可愛げのないこと、不快に思うであろうことばかり口走る。


 きっと彼は、不愉快だったり面白くないと感じているはず。


 だけど、それが契約。わたしは、悪女であることが大前提。だから、悪びれずに可愛げのない態度を貫いている。


 チャーリーとの楽しいひとときとは別に、違う意味で楽しいひとときをすごすことがある。


 それは読書、といいたいところだけど違う。もちろん、読書も楽しんでいる。だけど、それはチャーリーといっしょにということが多い。ひとりで本を読むのは、夜眠る前に寝台で横になっているときだけ。とはいえ、たいてい読み始めてニ、三行くらいで眠ってしまっているけれど。


 毎日、全力で楽しんでいる。充実した一日をすごしている。結果、心地よく疲れる。だから、ついつい眠ってしまう。しかも深く。翌朝、スッキリと目覚めることが出来る。


 これらもまた、昔とは正反対。


「大聖母」のときは、ダラダラと面白くない一日をすごし、眠れぬ夜に辟易し、朝はダルすぎて気分が悪かった。


 楽しいというのは、王宮内にいる人たちとの関係である。


 具体的には、王宮で働く使用人たちや王族。


 とくに王妃や側妃、王子のパートナーたち。つまり、レディたちが面白い。


 いいえ。実際のところ、彼女たちはとんでもなく手ごわい。みんながみんな、きつい。王族の男性に嫁ぐだとか婚約者であり続けるには、そこまで超ハードな性格でなければならないのか、とさえ思ってしまう。


 このことでもわたしはチャーリーにだまされていた。


『悪女になる決意をしたわたしでもいいの?』


 そう尋ねたとき、彼は『そのほうがいい』というようなことは言ったけれど、それ以上の詳しいことはいっさい言わなかった。


 きつい性格の王族のレディたちに対抗する為には、こちらの性格も同様にきつい方がいい。


 というようなことを。


 まあ、彼は嘘をついたわけではないか。だから、だまされたわけではない。


 情報のすべてを伝えていなかっただけ、かしらね。


 それでも、ちゃんと伝えてくれていたら、こちらもそれなりに心の準備をしていたのに、それをしていなかった。


 だけどまあ、いいんだけど。

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