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お茶会に乱入する 2

「まぁっ! わたしの正体を知って下さっているんですね。光栄です。『まがいもの』も『ニセモノ』も正解です。ついでに言いますと、『役立たず』でもあります。それから、『お飾り』なんてものもあります」


 全員を見ながら、にこやかに告げる。


 隠す必要はない。どうせウィルクス帝国であったことをつぶさに調べているでしょうから。


「それで、せっかくの素敵な朝ですのに、侍女虐めですか?」


 ほんとうは、嫌味でもって「バカじゃないの?」とまわりくどく伝えたかった。が、急に面倒くさくなった。ネチネチ嫌味を言って相手を貶めることは、まさしく目の前にいる彼女たちと同じになってしまう。


 そんなことを考えながら、いまだにうつむき立ちすくんでいる侍女たちに「下がるよう」そっと合図を送った。それに気がついた侍女たちはすぐに他の侍女たちのところまで下がった。


「なんですって? あなた、王妃殿下のことをバカにするの?」


 みんな気色ばんでいるけれど、言葉に出して言ったのは、日頃から王妃にいいように使われている第二側妃だった。


「バカにする? まさか。事実を指摘したまでです。だってそうでしょう? これだけの天気ですよ。虐めとかいびりとかで時間を費やすなんて、『バカじゃないの』としか言いようがないのですもの。せっかく縁あってこの王宮で知り合ったのです。仲良くしたり尊敬しあう方が、よほど心と体にいいですよ。他人を貶めたり蔑んだりなんてことばかりしていたら、心も体も歪んでしまいます。ひずみがでてしまいます。そんな事態を招かないよう、みなさんいまから仲良くすごすことをお勧めします。是非ご検討願います」


 言いたいことをいっきに言った。息継ぎなしでいっきに言いきったものだから、酸欠で頭がくらくらしてきた。ほんとうは、深呼吸をして呼吸を落ち着かせたかった。ついでに心も。だけど、やめておいた。そのかわり、もう一度全員をゆっくり見まわした。


 視線を合わせてきて「ギロッ」と睨みつけてくるのがほとんどで、友好的なサインを送ってくる人は一人もいない。


(まぁ、いいんだけどね)


 ひととおり見まわした後、体ごとクルリと反転した。


 今朝はここでひとあばれしようと思っていたから、わざとシャツにズボンという男性っぽい恰好をしている。


 だから、よりいっそう彼女たちに反感を買ったに違いない。


 というわけで、クルリと反転してもドレスの裾が翻ることがない。そのまま歩き続けた。


 チビはチビなりに恰好よく見えるよう、お尻をひきしめ歩き続ける。


 罵倒や文句が発せられるかと思いきや、うしろからいかなる言葉も飛んでこない。


 もしかして、驚かせすぎたのかしら? それとも、相手にするほどでもないと判断されたのかしら?


 異様なまでの静寂を背中で感じながら、バラのアーチをくぐった。


 そこではじめて、ジャニスとカイラが追いかけてくる気配を感じた。


 そうして、わたしたちは颯爽とバラ園をあとにした。


 この日、わたしは一日中森で読書をしてのんびりすごした。

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