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お茶会に乱入する 1

 ここのバラ園は、ウイルクス帝国の皇宮にあるバラ園よりずっと立派で、その種類も数えきれないほどある。


 一目見て、わたしのお気に入りの場所になったことは言うまでもない。


 だから、ひとりでもチャーリーとでも頻繁に訪れる。


 そのバラ園にある東屋がまた素敵で、バラのアーチをくぐるとバラをあしらった東屋がデンとその威容を誇っている。ちょっとしたお茶会を開くことが出来るほど大きな東屋は、実際にお茶会やパーティーが開かれているという。


 宮殿付きの庭師がお茶にも精通していて、よくローズティーを振る舞ってくれる。


 ローズティーとマフィンやクッキーといったスイーツを味わうのが、ここ最近のわたしの楽しみのひとつになっている。


 その東屋に、朝っぱらから王族のレディたちが集まり、お茶を楽しんでいる。


 訂正。今朝は、どうやら第四王子の正妃を標的にして楽しんでいるみたい。つまり、嫌味や誹謗中傷を並べ立て、いびっている。


 バラのアーチをくぐった。すると、国王の側妃の一人がわめいている。


 第四王子の正妃の侍女が、給仕をした際に粗相をしたらしい。


(なるほど。ただの言いがかりね)


 第四王子の正妃の侍女二人は、国王の側妃にギャーギャーわめかれてすっかり委縮してしまっている。それを、王子妃は為す術もなくうなだれてきいている。


「みなさん、おはようございます」


 まずは、人間ひととしての基本の挨拶をした。


 庭用のテーブル席に着いている全員、それからすぐ近くに佇んでいるそれぞれの侍女たちがいっさいにこちらを見た。


「今朝は、いいお天気ですね」


 さわやかな笑みを浮かべつつ、両腕を頭上の太陽に向けて伸ばした。


(この静寂よ)


 様々な感情がうごめくこの沈黙がたまらない。


「大聖母」時代からよく味わった感覚が蘇る。


「あら、『ニセモノ大聖母』だったかしら?」

「キャサリン。意味合いは同じだけれど、少し違うわ。『まがいもの大聖母』よ」


 第一王子の側妃の言葉を、すぐさま第一王子の正妃が訂正した。


 嫌味ったらしく。わたしに対しての嫌味ではない。側妃に対してである。


 ここにいるレディたちは、つねに他者を貶めようとしている。隙あらばとって食おうとしている恐ろしい魔女たちなのである。


 正直、ゾッとする。


 契約結婚などしていなければ、こんなところは勘弁してもらいたい。いくら悪女ぶるといっても、本物の悪女相手だと身も心も持ちそうにない。


 なにせわたしは、悪女初心者だから。というよりか、「まがいもの悪女」だから。




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