6-3 TS美少女と自分の居場所
「……頭がおかしくなりそう。なんで紬さんみたいにかわいい人が、お兄ちゃんなんかにこんなでれでれしてるの?」
桜さんの待つ家に帰ったとたん、この言いぐさだ。
あきれたようにそう言って、桜さんはキッチンの方へ離れていった。
しかしどのような言葉でも、今は甘んじて受けなければならない。
桜さんが私を見つけてくれたおかげで、今こうして和也にまた会えたのだし。
自分の顔がふにゃふにゃのあまあまになっていることも、間違いなく事実だから。
「なあ紬。お前はいつ退院してたんだ? 今までどうしてたんだよ」
和也のその低いゆっくりとした声も、ずっと私が聞きたかったものだ。
五臓六腑に染みわたるなあ。
「一週間ちょっと前に退院したんだ。それからは……死んでたかな。なーんにもしないで、お前のことばっかり考えてたよ」
桜さんがこちらを見ていないのをいいことに、私は居間に座っている和也の後ろにまわりこんで、その大きな背中にしがみつくように抱きついてみる。
和也の驚いた、でもまんざらでもなさそうな、その情けない表情がたまらなく嬉しい。
病院にいたときはこういうスキンシップはしていなかったから、和也もきっと私の変化に戸惑っているはずだ。
私だって、自分の変わりように驚いているくらいなんだから。
だけど和也は私を振りほどこうとしないので、そこはありがたく、全力でその背中の感触を堪能させてもらう。
「良かったなあ和也。こんな美少女にくっつかれて。もちろん、嬉しいよな?」
「ん、まあ、ちょっと暑いけど……そりゃあ嫌じゃねえよ。いや、ありがたい。ありがたや」
照れたように言うその童貞臭さに、私もニヤニヤしてしまう。
私の美乳の感触も存分に味わわれてしまっているだろうけど、私だってそのくらい、全然嫌じゃないよ。
「もうスマホもゲットしたから、後で登録してね。また会えなくなっちゃったら、大変だし」
童貞くんの和也にはきっと言い出せないだろうから、かわいいかわいい私の方から、連絡先の交換も言い出してあげなければならない。
おはようとかおやすみとか、メッセージも送ってあげないといけないだろうな。
ほんと、困ったやつだよね。仕方なくだよ、仕方なく。
まあ万が一連絡がとれないとしても、和也の通う学校のこともわかったし。
なんと私がもうすぐ通う予定の高校に、元々和也も桜さんも通っていたらしい。
家もけっこう私のアパートから近かったわけで、灯台元暗しとはこのことだ。
もうこれで、どうあってもこいつに逃げられないですみそうだ。
ひと安心。
和也は私の方へ向きなおると、おかしくて堪らない、というような表情になり、私の頬をその大きな手でむぎゅりと潰してきた。
「なあ紬、一応、一応確認だけど……お前って、オレのことをさ、その、好きだったりする?」
心臓が跳ねる。
私の瞳には、ずっと会いたかった和也の顔がアップでうつって、思わずその言葉を認めそうになってしまった。
童貞のくせに、生意気だぞ!
「ばっ! ばっかじゃねーの!? そんな、そんなの、ほら、な!?」
「そんなメス顔してなに意地張ってるんです? さっき紬さん言ってたじゃないですか。お兄ちゃん好き好きーって」
キッチンの方から桜さんがお菓子を持って戻ってきて、私は思わずパッと和也から離れた。
「はあ!? 言ってないが!? ……友達として、だよ? そんなの、好きとか、ほら、友達……いや、うん、友達とか……ほら、好き、かも、うん」
必死に言い返しながらも、さっきまで自分の腕の中にあった和也の体の感触がなくなってしまって、まただんだんと寂しいような気持ちになってしまう。
「なんですかそのしょんぼり顔……。かわいすぎでしょ。天使じゃん」
ため息をつくみたいに桜さんはそう言いながら、理不尽にも和也のだらしなく伸ばされた足を蹴りつけていた。
だけど当の和也は、そんなこと気にもしていないみたいに、私のことを優しく笑いながら見ていて、とてつもない恥ずかしさが押し寄せてくる。
こいつめ、童貞のくせに!
「……おい和也! なんだその目は! 違う! 違うんだからな!?」
和也はいつもの冴えない顔で、でもすごく嬉しそうに、私の頭をポンポンと撫でる。
生意気! 嬉しいけど、やっぱり生意気だ!
「はいはい。……紬、お前こんなに痩せちまって。……あのな、一応言っとくと、オレは紬のこと、めちゃくちゃ好きだからな?」
はい?
耳を疑うようなその言葉だけで、宙に浮かんだかと錯覚するほど、心も体もふわふわと軽くなる。
ま、まあでも、そんなの当たり前だが?
こんな美少女が近くにいて、好きにならないほうが異常だが?
「童貞なめんなよ。オレなんて、ちょっと優しくされたら、すぐ惚れちまうんだからな? ……だからさ、また会えてほんとに嬉しいよ」
照れ隠しみたいにふざけて言う和也から、私はもう離れることなんてできるわけがないし。
いくらベタ惚れさせてしまったとしても、もうそれは仕方のないことだから、私が責任をとって相手をしてあげなきゃならないだろうね。
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