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5-2 TS美少女とまた明日

 なんだか、柔らかいものを食べていたような、ぼんやりした夢を見ていた。


「おーい紬、そろそろ起きろ。もうすぐ戻る時間だぜ」


 頭の上からいつもの、和也のなんだか落ち着く声がして、私はがばっと頭を起こした。



 何か気分が良かった夢から覚めて、目が覚めたらまた和也の声がして、こんな時間の過ごし方も、たまには悪くはないと思える。


「……あー、ごめん。寝ちゃってたわ。やべ、めちゃくちゃヨダレ出てた。すまんすまん」


 最近は精神が追い込まれているためか、なんだか寝つきも悪く少し寝不足気味だったのだが、和也の匂いに安心してしまって、すっかり爆睡していたみたいだ。

 和也の枕に、ヨダレの染みががっつりついてしまったが、まあこれはかわいい童貞くんへのファンサービスということで。



 寝起きのぼんやりした頭で謝るが、和也はどうしてかこちらに見向きもせず、何回も見返したはずのキャンプ雑誌を、片手で器用にペラペラとめくっている。

 何か変な感じ。


「……和也? どうした?」


 俺の問い掛けに、やはり和也はこちらに目を向けず、明らかに読んではいないペースで雑誌をめくり続けた。



 怪しい。こんなに隠し事が下手なやつ、なかなかいないぞ。

 間違いなく何か隠してるな。


「おい和也、まさかとは思うがお前……。怒らないから、言ってみ? 絶対怒らないから」


 ベッドを降りて和也の横に回り込み、カマをかけるように聞いてみると、明らかに動揺した表情が見えた。


「な、なんでもない! 気にすんな、なんでもないから!」


 はいはい。なるほどね。

 和也のそのちょっと赤らんだ顔を見て、俺は完全に察してしまった。



 やってんな、こいつ。


 気持ちはわかるが、隠すのはよくないぞ。ちゃんと白状するべきだ。


「……触ったんだな、この私の美乳を。発育途上のDカップを」

「いや違う。さすがにそれはない」


 急に真顔で否定されたが、しかしこれは間違いなく、寝ている俺に何かやっている。


 ケツか。ケツでも触ったのか。ケツ派だったのか。

 私はケツも確かによく引きしまっていて綺麗だが。でも胸のほうがさらに魅力的だと思うんだけどな。



「まあいいけど。よく寝て気分もいいし、ちょっと胸を触ったくらいなら勘弁してやるよ」


 俺の寛容すぎる言葉に、明らかに一瞬和也の視線が俺の胸に向けられたが、バレていないとでも思ってか、すぐに目を反らしてくる。


 こいつ……俺のやわらかおっぱいのことを想像しやがったな。


 しかしここまで童貞丸出しのリアクションだと、かえってこちらも気分がいい。

 何をやったのか知らないが、若さゆえの過ちということで、これ以上は聞かないでやろう。


 自分の優しさが恐ろしいほどだ。

 ここまで男心に理解のある美少女が、この世に産み出されてしまうとは。



「じゃ、また明日来るわ。明日は勉強なんかやめて、もうちょい遊んでくれよな」


 また、明日。


 それはいつものように、やってくるものだと信じていた。


「……おう、また明日な」


 和也もきっと、そのときは同じように、またその二人で過ごす明日が来ると思っていたのだと思う。


 和也の声を背に病室を出るとき、びっくりするくらい嬉しそうに笑った自分の顔が、廊下の窓ガラスにうつっていた。





 だけど、いつも通りに約束して、いつも通りに来ると思っていた和也と過ごす時間は、その日以降、もう来ることはなかった。


 翌日、俺は少し体調を崩して発熱があり、もちろん例の感染症ではなかったものの、三日ほど自分の病室にこもるはめになった。


 TS病の影響かもしれないなんて言われ、あれこれと検査を受け、それ以外の時間は部屋から出ることも禁止されていた。


 暇で、何より寂しくて。

 和也のことを、繰り返し何度も考えていた。

 

 だけど、ようやく体調が回復し、久しぶりに和也に会えると喜び勇んでいつものあいつの病室に入ると、なぜかその病室はもぬけの殻になっていたのだった。



 もうそこからの記憶は、ほとんど途切れ途切れだ。


 看護士さんに確認したところ、自宅からの通院でも対応できる状態になった和也は急遽、1日前のお昼に、退院させられてしまったらしい。


 私にはスマホもないし、あいつの連絡先も知らなかった。

 考えてみれば、あいつがどこに住んでいるのか、どこの学校に通っているのか、そんな簡単なことすら聞いたことがなかった。


 だからこれは、自分が悪いんだ。


 和也を自分の都合がいいように扱うばかりで、キャンプのこと以外何一つ、あいつのことを知ろうとしなかった。


 また当たり前のように会えると思って。


 大切に想う気持ちを、一度だってきちんと本人に伝えてあげようともしなかった。

 繋がりを保つための何かを、一つだってやってこなかった。


 だから、もう和也に会えなくなってしまったのは、全部私の自業自得だ。



 あいつがいなくなった病室のベッドは、シーツも外され綺麗に掃除もされた後で、顔を近づけてももう、その大好きだった匂いすらどこにもなかった。

第一章は以上です。

曇らせENDですがご安心下さい、次話からの第二章ではさらなるいちゃラブとメス堕ちが待っています。

ぜひ引き続き、ブクマやご評価で応援をお願いいたします!

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[良い点] かわいい…こんなにかわいいおじさんがいていいのか… TS娘が匂い嗅ぐ描写はいずれガンに効くようになります。間違いありません。 [気になる点] もうだいぶメス堕ちしてますので息切れが心配で…
[一言] 更新お疲れ様です。 メスガキ系とか勝ち気系が曇るのほんと好き。 今回のケースなら、メス塾終わったらハチ公みたいにロビーでひたすら待ってて欲しい。通院を信じて…って感じで。流石に通院予定日は教…
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