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可愛らしく纏められた外装の洋菓子屋から、肩を落として出てくる。
「またダメだったか・・・」
この所ずっと調子が悪い。店に商品を置いてもらう交渉だ。ショートケーキ、モンブラン、ガトーショコラ。
正直、味見させた反応はかなり上々だと感じた。だが、一転して値段交渉の段階になると、渋り始める。法外な設定でも、ふっかけている訳でもない。むしろ、良心的な価格帯であるという自負もある。
害意で洋菓子屋が断っているとは思っていない。申し訳なさそうにしていた夫婦の顔を思い出す。今回だけではない。どこへ行っても心底申し訳なさそうにしているのだ。
思えばこの十数年、ずっと下向きな気持ちだ。はぁ、と大きなため息をつく。
業界と言うより、社会全体か・・・。
――不景気ケーキ