~成人の儀②~
生き延びた。それと同時に3つの命を刈り取ったわけだ。無我夢中だったが、やっと実感が湧いてくる。
その場にへたり込んだが、はっと気が付く、命を無駄にしてはいけない。
身体に鞭を打ち、3匹を木に吊るし血抜きをしていく、食べた事は無いが旨いのだろうか。
これまで、命を奪う事が怖くて、狩ることが出来なかったが、生きていくというのはこういう事か、奪った命よりも旨いのかどうかが気になる。ジーンがさばき方を教えてくれていたおかげだ。ジーンのありがたさが身に染みる。
血抜きを終え、解体し、火を起こす。
久しぶりの肉だ、生焼けかな、もう少しか
「今日も森の命に感謝を」
待ちきれずかぶりつく、味もなく、不味いが旨い。
俺は、生きているな!!
空腹は最高の調味料か、とりあえず腹は満足する。
そこでやっと気が付いたが、血抜き後の血の始末をしていなかった。
このままでは匂いにつられて魔獣まで来てしまうかもしれない。
急いで、血だまりに匂いの強い草を入れ燃やしていく。匂いが中和されていく
日が暮れる、今日一日がやっと終わっていった。
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一度、獲物を狩れるようになると、今までが嘘のようだ。
水場には最低限の給水以外は近づかず、そこを訪れる獣たちを風下から狙い、弓の射程ギリギリから仕留める。
最初は、少し、急所を外れ、獣を苦しませてしまったが、今では一突きで苦しまず射る事もできるようになった。
俺成長したな、今では、食べながらも、調味料が欲しいとの余裕が出てきたぐらいだ。
いや、大切な命ですよ。わかってはいるけど、毎日、同じように焼いて肉食べてみてくださいな、味無いんですよ。飽きるでしょ。
ごめんなさい、人の欲望は尽きないもんだ・・・
後、2日か、早く終わってくれないかな・・・ムーアの薄味の料理が恋しい・・・
そんな事を思いながら、今日も、拠点から辺りを警戒していると
いつもと違う雰囲気が!?
複数の何かが動いているのか?狼か?
あれは違うな。
水場に現れたのは、人型の何かだった、人間でもエルフでもない。
幸いに、ここは風下で気が付かれてもいない。
ジーンに知らせに戻るべきか、しかし、今戻ったら成人の儀が・・・
うん!考えてみたら、俺は覚えてないが2回目だった。当初の目的は果たしたんだ。戻るぞ。
音もなく木を降り、ジーン達の家に駆ける。
運よく奴らは、まだ水を飲むのに夢中だ。
発見したのは昼過ぎだったが、夕方にはジーンの家に戻ることができた。
「ジーン、戻ったぞ」
「ジャム、戻ってきたのはわかったけど、どうしたんだ成人の儀を完了するには2日程早いじゃないか」
「そうも、言ってられなくなったし、俺は、一度達成したんだろ!」
「その調子だと、ちゃんと獲物を狩ることが出来るようになったんだな。」
「そうじゃないんだ、人型の人間でもエルフでもないものが現れたんだ」
その言葉にジーンの顔が真面目になる。
「ここら辺は、精霊の力が強いから魔獣も滅多にでない。安全だから俺たちも移り住んだし、成人の儀にも使ったのだが」
「俺もずっと過ごしていたが、今まで出くわした事はなかった。」
「これは、調べる必要があるか、おーい、ムーア」
「はーい、あらあら、ジャム、いつ帰ってきたの?」
いつも通りのムーアにホッとするな
「ジャムが、西の森で何かと遭遇したらしい。ちょっと偵察に行ってくる。」
「わかったけど~危ない事はしないでよ。」
「ああ、ジャム、案内できるか?」
「もちろんだ!」
ことがことなので、日は暮れていたが俺とジーンは、あの水場へと向かう。
丁度、夜中ぐらいなのか俺が拠点としてたところについた。
ここから見ると、水場に野営の様子が見える。
そして、不味い
「ジーン、不味い、ここにあった肉が無くなっている!」
瞬間、シュッ、シュッ、矢がこちらに、これは・・・
「ぐっ・・」
俺をかばい、崩れるジーン。
「よくもジーンを!!」
あっ、言わないはずの言葉を言ってしまった・・・
「大丈夫だ、今回は偵察、引くぞ」
えっ!?ジーン、正しいんだけど、正しくないよ。
「わ、わかった。」
とは言え、相手だってそう簡単に引かせてくれない。
しかもジーンは手負い。
「森の精霊、ドライアドよ、道を閉ざせ」
ジーンが唱えると迫っていたはずの敵のが・・・消えた?
「これは?」
「ドライアドにお願いして、やつらを迷わした。」
「魔法、凄いな」
「いや、やつらにもドライアドに干渉出来る者がいるかもしれん。早く戻らんと」
「そうだな、肩に捕まれ!」
俺は、ジーンの肩を抱え、家の方に戻る。こういう時、成人の身体でないことが悔やまれる・・・
「それにしても、やつらの正体がわかったのか?」
「あれは、ゴブリンだな、ここらにはいないはずだったが。」
「そうなのか、ゴブリンはここら辺にはいないのか。」
「もっと西のシュトアー王国、魔族の国だがそこには住んでいるんだけどな。ベシェフティフ王国と小競り合いをしているとは言え、いよいよ、ここまで侵出してきたか。」
ゴブリン、やっとファンタジーっぽい敵が出てきたな
くそー、よくもジーンを!!!
あっ、また言っちまった・・・・