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文系剣士と理系魔道士の六年傀儡記  作者: 松房
第五章 決別
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第90話 割り切れない過去

俺が目覚めたのは寮の自室だった。

ガジャが心配そうにこちらを見ている。

「大丈夫っスか?扉の前で倒れてたっスけど」

「うぅ・・・」

何故だろう。

ここ数時間の記憶が全くない。

「水っス」

「ありがとう」

俺はコップに入った水を飲み干す。

水の冷たさを喉の奥で感じると段々自分が何をしていたのかを思い出した。

そう。俺はさっきまで

”冒険者の友人に稽古をつけて貰っていたんだ”

その友人は引っ込み思案な所があるので、俺を運んで来た時、部屋に勝手に入るのを躊躇ったのだろう。


その後はガジャと風呂へ入り、夕食を食べ、寝台へ潜る。

とても楽しい時間だった。


▒▒▒


私はもうあの学校へ行くことは勿論、近づくことすらないだろう。

そろそろ慎太郎も目を覚ます頃だろうか。

学校の方を見ると、罪悪感や、寂しさが綯い交ぜになったような何かが私を蝕んだ。

(あの慎太郎君の表情。余程怒っていたんだろうね)

そうなのかも知れない。

(別に学校にいる全員に暗示かけ直して自分の事忘れさせるなんて事しなくて良かったんじゃない?)

・・・そうなのかも知れない。

少なくとも私に普通の感性とか、常識とかがあればこんな思いはしなくて良かったのだろうか。

私は教会へ向かう。


私にとっての救いは神様以外有り得ないから。



その夜、私は夢を見た。

忌々しい前世の記憶。

自分の前世だと認めたくもない記憶だが、自分を見つめ直す良いきっかけになるかも知れないし、ゆっくり思い出して見ることにする。

まず、私の死因は腹上死であった。

その原因となったのが私の姉にあたる人物で、名前は忘れてしまったし、思い出したくも無い。

姉は様々な才能に恵まれていたが、両親の死を経て、違法ドラッグに手を染めてしまう。

しかし、まだ成人していなかった姉がその代金を払える筈もなく、

中学二年の夏、私はそういった輩に差し出される事になった。

それからの事は、余り良く覚えていない。

ただ覚えているのが、食事を貰い、男共の欲求を満たすだけの毎日だったということ。

そして、人としての尊厳など踏み躙られた毎日に私の体は力尽きる。

二十三歳くらいの事だっだろうか。

それから目の前に現れたのは俗に言う神様のような女性だった。

女性は力を与えるから、下で働けと提案してきた。

何でも、この世界には後二、三年で滅ぼされてしまうらしい。

私はこの提案を受ける事にした。

そうしてからと言うもの私は少し変わってきたと思う。

最近感じるこの罪悪感のような感情は久しく感じていなかったものだし、以前は寂しさのようなものも感じた事は無かった。


このままいけば普通の人間としての生活が送れるのではないかと私は少し期待している。

次回は時間がかなり飛ぶかも・・・

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