第89話 強化其の二
テスト期間につき更新が出来ずじまいになってしまい申し訳ありませんでした。m(_ _)m
その代わりと言ってはなんですが、今回は長めです。
「久しぶり。とは言っても一週間ぶりくらいかしら」
「・・・はい。お久しぶりです」
久しぶりに私の前に現れた少年は、こちらを疑っているのか少々険しい顔をしていた。
「まぁ、君が私達を疑うのも無理は無い。いずれこんな時がくるとも分かっていたし、些か今回はやる事がやる事だったからね、こちらにも君に説明する義務がある。」
「では、説明して下さい。一体ガジャ達に何をしたんですかっ!」
そう私に要求する少年の顔は先程よりも一段と険しい。
・・・余程ストレスが溜まっているらしい。
私から説明しようとしたところをエスに止められた。
自分から説明したいみたいだ。
「私が学校の皆にかけたのは簡単に言ってしまえば、集団洗脳」
「なんでそんな事を」
「神様が私に命じたから」
少年の厳しい視線がエスから私に移る。
「・・・全てはあなたや、エスを守る為に必要な事なのよ?」
「【魔道具仕掛けの改変】(デウスエクスマキナ)ですか?」
「えぇ。今のあなたじゃ弱過ぎるからね」
「それで力を下さると?」
「あなた達に死なれちゃ私が困るのよ」
「随分と自分勝手に聞こえますが」
「それはお互い様だと私は思うけどね」
その後少しの静寂が訪れた。
・・・ヤバい。少年は真剣なのだろうが、可笑しくて笑いが込み上げてくる。
「ともかく、力は受け取って貰うわよ」
このままでは、今のこの”あくまであなた達の為に動いている”という姿勢を保てなくなりそうなので、さっさと力を渡してしまう事にした。
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力を受け取ってしまった。
まだ、ガジャ達を洗脳した理由を聞けていなかったのに。
神に力を渡すと告げられた瞬間から頭が働かなくなった。
気づいた時には目の前の景色は教会の中のものに戻っていたし。
俺の心を無力感が埋め尽くす。
自分が強いといつから錯覚していたのだろう。
転生して、剣聖なんて大層な才能を得て、それで、俺は何か成し遂げたのだろうか。
この世界に来て偶に廃人のようになってしまう隼を”更生の一言”で立ち直らせてはいたが、その隼も一人でどこかへ行ってしまった。
すぐにでも探しに行きたい思いもあるが、行動に移せない自分が嫌になる。
「どうしたの?」
隣にいるエスが声をかけてくる。
その時俺の頭にある疑心が生まれた。
あの時の隼の怯えようは異常だった。
此奴が本当にガジャ達を洗脳したと言うのなら、此奴が隼にドラゴンを怖がるように洗脳したのではないだろうか。
そのせいで隼は・・・
「体調が悪いのなら肩を貸すけど・・・」
エスがこちらへ手を向けてくる。
パシッ!
俺はそれを払った。
「触るなっ!あんたが隼を洗脳したせいで隼はっ!」
エスが一瞬驚きの表情を見せる。
俺はその表情で確信した。
その途端俺は初めて神から受け取った力を自覚した。
俺の手に薄く光る剣が握られる。
俺が受け取ったのは、周囲の魔力を使い絶対不変の武器を生成する力。
案外地味な能力だが、剣聖の才能を持つ俺には破格の力だ。
いける。
この力さえあればいかに相手が強かろうが倒せるという自信が心の底から湧いてきた。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
俺はエスに襲いかかる。
その瞬間視界が一変した。
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正直危なかった。
襲いかかられてから二十分程たっただろうか。
まず、私達を遠くの平原へ転移させた。させなければ周囲の人間を巻き込み、最悪殺めてしまっていたかもしれない。
私は、地面に平伏す慎太郎へ視線を向ける。
武器が壊れてしまうという懸念が無くなった慎太郎は格段に強くなっていた。
攻撃してもいなされ、防がれ、反撃された。
武器も攻撃が通じぬというのなら形を変え、全く違う角度から攻撃してくる。
そう感じると共に、私は後悔した。
多少罪悪感があろうとも洗脳をすべきだった。
同郷であるからと言って手を抜いてはいけない相手だった。
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事の顛末を眺めている間、私の笑みが絶える事はなかった。
今回の一件でもうエスと少年が手を組む事は無くなっただろうが、やはり、多少犠牲を払ってでも娯楽は求めるべきだと改めて感じる。
拗れる仲、後悔の残る決別。
それだけでも十分見ていて面白いが、
それが自らの手で引き起こされていると考えると、面白いという感情を越え、幸福感すら感じるというものだ。
そんな愚かで、滑稽で、従順で、脆くて、単純な人類が堪らなく愛おしい。
紛れもない私の本心だ。




