第6話 アレクガランの街にて
「ほら、起きろよ隼。やっぱ都市ってスゲーよほら見てみろよ。」
慎太郎はアレクガランに着いてから見た光景に興奮し、物凄い速度で隼を揺らす。
「んぁ・・・一体全体なんだってんだ・・」
目を開けて辺りを見渡すと、そこにはオタクにとっての桃源郷が広がっていた。
中世ヨーロッパの様なレンガ造りの街並みに、
ケモ耳や、エルフ、ウィンディーネの様なヒレの様な耳を付けている人達が跋扈している。
「す、凄いな。慎太郎。」
「あぁ俺も生エルフを見れて何だか涙出てきた・・・」
この世界では余り珍しくない光景を見て感動している二人を不思議に思いつつ、コハクは早く馬車を出ようと声をかける。
「おい、小物。それに慎太郎様まで・・
ほらもう昼下がりですし早く降りて昼食を食べに行きましょうよ。」
「あぁごめんねコハク。」
「おぉそうだな。」
コハクの声を聞き、馬車を降りる二人。
ちなみにジョンは商会に顔を出すと何処かに行ってしまった。
「さぁ慎太郎様♪アレクガランに付いた訳ですがギルドにします?それとも昼食にします?それとも・・・」
コハクがよくある新妻のセリフを言おうとしたのを慎太郎が止める。
「さ、先に昼食にしようか・・」
「分かりました。では私についてきてくださいね。」
そうやって笑顔を見せるコハク。
普通の男なら今の微笑みでコロッといってしまうだろう。
しかし今の二人はコハクの内面を知ってしまっているのでイマイチときめけない。
そう、コハクは慎太郎への独占欲が強すぎるのだ。
いつも隼が邪魔だと口にはしないものの、隼の事をディスってくるのだ。
「はいっ着きましたよ。ここのボーラは格別なんです。まぁ慎太郎様の影に隠れている小虫なんかには分からないでしょうがね。」
「こ、小虫・・・」
悪口に万円の笑みが加わり隼に精神的ダメージが入る。
ちなみにボーラというのは元の世界で言うところのパスタだった。
「というか聞きそびれたんだけど、第三等討伐種ってどれくらいの強さなの?」
「えーっとですね、まず魔獣には一等から六等までの位分けがありまして、一番弱い六等は騎士一人で倒せるレベルで、一番強い一等は百年に一度しか生まれないと言われ、厄災級と呼ばれています。まぁ今現存する一等は魔王と巨人くらいしかいないんですがね。で、問題の三等ですが騎士団が魔法を使い、少なくとも五人の犠牲がでるレベルらしいですね。」
「ほぅ何となく強さは分かった。というか魔王いるんだ・・」
「あ、はい、いますよ魔王。まぁ音沙汰無さすぎているかどうかも分からないですが。」
慎太郎の疑問にコハクが答える。
「ところで慎太郎。この先いかがお考えですか?」
今度はこっちの質問だとコハクが問う。
その質問に慎太郎と隼は押し黙るのであった。