第29話 マテリアル
今回こそ隼を怪我させる。
隼は生徒達に呼び掛けてから自分の回転椅子で遊び始めたラグル先生に声をかける。
「おや、一番最初はハヤテ君か。」
「はい。先生、次は何をすればいいですか?」
隼のその言葉を聞き、ラグルは隼を試す。
「じゃあ、とりあえずこの木片を僕の目の前で”錬成”してみてくれないかい?」
ラグル先生はそう言いながら隼の目の前に一辺が二センチ程の立方体の形をした木片を置く。
それを見た隼はラグル先生に尋ねる。
「何かテーマはありますか?」
「そうだね~じゃあ女神像を”錬成”してみてくれ。」
「分かりました。」
隼はそう言いながらあの自分達を此方に転生させてくれた女神だか天使だか分からないが神々しい女性の姿を脳内CADを使って(いる様なイメージで)立体的に想像すると、今度は”錬成”を使い木片を分解し、イメージどうりに積み上げていく。
「おぉ、これはまた精巧に出来ているね。」
ラグル先生は隼が”錬成”した女神(?)像を手に取ると、像の隅々まで指でなぞった後、目元や唇、指先をルーペの様な道具を使い眺める。
「こりゃ凄い。初めて作ったものにしては上手すぎる。ハヤテ君この学校に来る前に彫刻でもしてたの?」
「いえ、全く。」
「そうか・・・」
その言葉を聞いたラグル先生は”解せぬ”と隼を眺めると、溜息をつく。
「それか、ここまで細かく、そして印象強く女性の体を覚える様な経験があったかだが、君に限ってそんなことは無さそうだ。」
ラグル先生はそんな失礼なことをサラッと口にした後、隼に次の指示を出す。
「じゃあ、僕はこの像を換金して来るから、そこら辺の棚に入っている材料は自由に使っていいので、何かしら自由に作っててよ。」
ラグル先生はそう指示を出した後、立ち去ろうとするが、隼が呼び止める。
「え、換金?」
「ん?そうだけど、この像自分で持ってたい?」
「いや、別にその像はいいですが、何故換金を?」
そんな隼の疑問にラグル先生は不思議そうな顔で答える。
「いや、だって何にだって金は必要だろ。
魔道具職人達の殆どが自分の作った指輪なんかの装飾品を売って研究費用を賄っているんだけどなんか問題ある?
大丈夫だよ、売れた値の六割はハヤテ君の口座に振り込んどくから!」
そう言い切る時にはラグル先生は走り去ってしまった。
その様子を見た隼はラグル先生の出会った時と、今のイメージのギャップに暫くの間魘されると、先生に言われた通り、棚の中に入った材料で、まる一晩掛けて考えた初めての魔道具の制作に着手する。
沢山の棚の中には主に手引きに書いてあった材料が入っていた。
それを見た隼は一度自分の席に戻ると、紙に軽く考えを纏める。
そして、パーツごとに”錬成”し、それらを組み立てるのを繰り返すこと三時間。
隼が万円の笑みで眺めるのは、直径三十センチ程の側面に曲線状の筒二本の他にも様々な凹凸がついた筒だった。
イメージはガ○ダムシリーズの鉄血のオ○フェンズに登場するダイン○レイブ。
それは、隼が通常の日本人が知る由もない銃の構造を知らないなりに脳内で此方の世界に来てから長きにわたり考えて来た隼なりの銃であった。
そして、連射させる方法も分からないので、反動も重量も考えずに、ただ威力だけを考えて作った言わば欠陥機だが、それを形にすることが出来た隼の顔はとても満足感溢れるものであった。
その顔を見たラグル先生が隼に提案する。
「出来たんなら試してみるか?」
そんなラグル先生の提案に乗った隼が案内されたのは魔道作業室の奥にある扉の先。
”魔道実践室”であった。
縮小版ダイ○スレイブは弾を装填すると、無茶苦茶重くなったので、台座にセットし、標準器を覗き、ラグル先生が置いてくれた人形を狙い引き金に指を掛けると、側面についた二本の曲線状の筒にキラキラした粒子が吸い込まれていく。
隼は爆薬の作り方や、扱い方も当然知らなかったので、魔力を空気中から集め、その密度を高めた魔力を一気に解放(爆発)させ、弾を飛ばすという方法を取った結果だった。
そして、魔力の充填が終わり、隼は引き金を引く。
ドゥゥゥゥゥン!!!!!!
という爆音と同時に飛んで行った弾は人形を粉々にした後、普通の二十倍は強化された壁にクレーターを作り進行を止める。
その様子を見たラグル先生が、凄いじゃないか!と隼の方を向くと、
「うぅ・・ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
縮小版ダイン○レイブの発射時の反動で両肩を脱臼し、悶える隼の姿があった。
そして、隼は保健室の一級回復術士に一瞬で治して貰った後、照準器と視界を共有するゴーグルと、狙いを定め、発射する為の操作リモコンを作り、何とか縮小版ダイ○スレイブ”マテリアル”を実践レベルまで持っていったのだった。
今回でこの章はおしまいです。
次回は登場人物と解説を書きたいと思います。




