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一匹の黒猫。

作者: 設楽 夕


 日に当てられた草木が風で揺れ、ジリジリと聞こえる虫の音や畑に続く水路に流れている水の音を聞きながら私は家を飛び出し近くあるトウモロコシ畑に挟まれている道へと足を運ぶ。

特に何か理由があるわけではないけれど、ただ「歩きたい」そんな気持ちを胸に秘め、この暑い中でも平然に歩けるのだ。熱中症にならないように飲み物は予め小さな鞄に入っている。


 歩きながらふと考える。暑いのは苦手だ、私の身体は基本夏場になると冷え、冬場になると温かくなるという変な体質をもっているからである。この体質は幼き頃はよく「お前の身体は異常だ」と言われていた事をふと思い出す。今考えるとそんな可笑しい体質だったのだろうか??。疑問が出てきたりするものの、とにかく道を歩く。一歩、また一歩と・・・・・・。

暫く考えごとをしながら歩いていると、トウモロコシ畑の通りを抜け空に視線を移すと、突然ぽつりぽつりと雨が降りだしてきた。

「可笑しいな……雨降らないと思ってたのに」

そう小さく呟き、辺り一面を雨宿りが出来る場所を確認すると、離れた所に屋根付きのバス停を見つけ本降りになる前に走る。

息が切れそうになる。雨のせいもあるのかもしれないけれど、少しずつ頭が痛くなる。それでも全体的にびしょ濡れにならないだけマシと思ってただひたすらに走る。バス停につくと、雨はぽつりぽつりではなく本降りになってくる。その光景を息を整えながら眺め、バス停のベンチに腰をかけると少し濡れてしまった身体が冷える。夏場で暑いとはいえど濡れると身体も冷える。

暫く眺めていると雨は止む。そっと空を見上げると虹が薄っすら掛かっている。

「虹・・・・・・。久しぶりに見た。」

薄ら笑みを浮かべると、小さな鞄からフィルムカメラを取りだし虹に向かってシャッターを切る。一枚できちんと取れたかは分からないという事もあり、もう一枚念の為にシャッターを切る。


 このご時世、スマートフォンやデジタルカメラ等での撮影がはやっている中で、何故フィルムカメラなのかというとやっぱり味があるからと勝手に思ってしまう。デジタル系統のものだと撮っているものは同じでもすぐ消せてしまうから寂しいと感じる。だからデジタルには頼らず古いものを好む所が、昔から少しある。

「雨も止んだから帰ろう」

また小さく呟くと、手に持っていたフィルムカメラを鞄にしまい来た道を鼻歌を歌いながら戻る。

トウモロコシ畑を歩いていると、すぐ近くで猫の鳴き声が聞こえた。警戒されてしまうと逃げられてしまうかもしれないと思いなるべく音を立てないように周りを確認してみると通路の隅でこちらを見ている黒猫の姿があった。

コレは写真を撮るべきと思い鞄の中からフィルムカメラを取り出し黒猫に向けて写真を撮るとその猫は大人しく撮られてくれた。実は人懐っこい猫だったりするのだろうか、少しかがみ猫を眺めているとテクテクとこちらに近づいてくる。その姿はとても可愛く思わずもう一枚シャッターを切る。カメラのレンズから視線を外すと、猫はいない。

 

 のち、のんびり家に帰り母親に聞くと「黒猫は幸せがくる前兆なの」と言っていた。

それから、2週間後に私は彼氏ができ、1年後に結婚をした。今では子供ができ幸せな家庭を気づいている。

今思うと、黒猫が導いてくれた幸せなのだろうかと思うと今ある幸せを大事にするべきだとこれからもずっと思っていきたい。

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