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あっけない幕切れ

 

 アグナの武器は普通の男性であれば両手で抱えるような大剣である。これを彼女は片手で振り回す。基本的には一度振り始めた後はそのまま重力の慣性で振り回し続けて敵をなぎ払うという豪快な戦い方を得意としている。

 アイラの剣は一般の兵が使っているものと同じものだ。1対1よりも多数対多数を想定しており、自分の武器が壊れても直ぐに補給が出来るという利点を生かしたものだ。自前で扱っているものは大量生産の物と同じ型だが素材に良い物を使い補強したものになっている。


 決闘に使用するのはどちらも木製のものだがまともに当たれば骨折などは容易にする。アグナの使う大剣に至っては当たり所が悪ければ死んでしまうだろう。

 しかし彼女たちはその点において一切の躊躇はない。運が悪かったから、今日は調子が悪かったから、そんな言い訳で済むような世界ではないのだ。いつ刺されて、斬られて死んでもおかしくないような世界に身を置いている彼女たちは死んだら実力がなかった。それで終わりだ。


 決闘前の30分ほどは調整に使われる。武器の素材が違えば使い勝手も違うのだからそのずれを矯正するのだ。


 そして今、二人はお互いの得物を構え向かい合っていた。


 審判を務めるのは切り込み隊隊長のグスタフだ。


「双方準備はいいな?はじめ!」


 アグナが大剣を振り上げ切りかかろうとしたが、アイラの動きはそれよりも速かった。

 アグナの振り上げた腕の下、脇を打ったのだ。


「ぐぅ!?」


「そこまで!」


 終わってみれば試合時間は一分にも満たない時間だった。アグナが剣を掲げ、そこにアイラが銅抜きをしただけだ。


 しかしアグナとて副隊長を務めているのは伊達ではない。初撃の速度はそれなりのものであるし、振り上げる構えだからこそ隙になる部分を補う為の訓練もしている。


 単純に、ただ単純にアイラの一撃が対処できないほどに速かっただけなのだ。

 この世界では槍よりも剣の方が主流だ。それは獣人達の身体能力が高いからに他ならない。

 槍のように柄が長い武器だと振り切る前に懐に潜られてしまうのだ。それは例えば先日の仮面の女にやられたように。


 だからアイラはそこからの訓練を、速さに重点を置いたものに切り替えた。剣で拳の速度に追い付けるように、剣を使うような事態の時に一々殴り合いをするわけにはいかないのだ。


 アグナはアイラが士郎に現を抜かしていると言ったが、逆にアイラは士郎を守りきるために強くなったのだ。

 無手の相手に剣で速度を上回るための訓練をしてきたのだ。そんなアイラが大剣を使うアグナに遅れを取るわけがなかった。


「どうしてそこまで強くなった・・・」


「シロウのためだ」


 前回は仮面の女が引いたとはいえ、またいつ士郎に危害が及ぶかはわからない。そのときのためにもアイラは今まで以上に真摯に鍛錬を積んだのだ。

 アグナは悔しそうな顔を浮かべながら治療のために離れていった。


 その後アイラは士郎との素振りに戻ったのだった。

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