城内探索
アイラとアイリは城内を歩いていた。リーゼルから許可をもらっているので、近衛から声をかけられても大丈夫だろうと判断してのことだ。現状手がかりと呼べるのは姫様だ。
アイリはそもそもこの国に姫様が居ることすら知らなかった。元々ひきこもり気味で表の情報に疎いためよっぽどのことでなければ知らないことのほうが多かったりするのだが。
アイラは姫の名前がメイカという名前であることだけは知っている。しかしこのメイカ姫、体が弱いということで表舞台に出てくることがほとんどないのだ。メディウス陛下もまだまだ現役で政務に取り組んでいるし、ユリウス殿下も時期国王としてメディウス陛下の補佐をしているので民衆の前に出てくることも多い。
アイラとて国に属する騎士団に所属しているため、メイカ姫名前を知っている程度で市井の民は知らないものの方が多いだろう。それくらいメイカ姫は表に出てこない名前なのだ。
この城、セルシア城は他の国の城とは違う特殊な構造をしている。城に入って正面にはすぐに玉座の間に続く階段があり、城内に入ることが出来れば王の居る場所へはすぐにいけるようになっているのだ。これは初代のマイルナム国王が有事の際には直接指揮を取れるようにしたためといわれている。
マイルナム王家は民よりも前に出るべしという家訓があり、この家訓があるため王家の人間は常に鍛錬を絶やさぬようにしている。
城の1階部分は王の間へ直ぐに繋がるため、近衛の兵達が主に巡回しており、王家の人間の世話周りの人たちは奥にあるもうひとつの階段を上がった2階部分で働いている。
また、有事の際民の避難所としての側面も持っており、今回アイリが最初に居た冷暗所など倉庫になっている部分も多数ある。
二人はそんな城の1階部分を歩いていた。近衛がこちらを見てくることもあるが堂々とした態度で歩いているため今のところ声をかけられてはいない。掛けられたとしてもどうにかなると思っているからだが。
とりあえず片端から入れそうな部屋を中を確認しつつ進んでいる。入ってはいけないような部屋の前では近衛が立っているので、基本的にそういう部屋を避けてそれ以外の部屋を覗いているような感じだ。
2階部分に続く階段前には近衛が立っており、城内の人間以外は通してもらえないようだ。
「ここは・・・」
そうして二人が着いたのは地下へと続く階段だった。近衛は立っておらず、ここは入っても問題はないのだろう。階段を降りると少しだが血のにおいが漂っていた。降りた先は一本の通路になっており、両端には牢屋が延々と続いている。しかし収容されているような人物はいない。
街中で捕らえられた犯罪者は騎士団の詰所にある拘置所に入れられるので、わざわざ城内までつれてきたりはしない。つまりここは城内で犯罪を犯したものが入れられる場所なのだろう。
「誰も居ないな・・・」
アイラは各牢屋を確認しながら歩いていくがやはり誰も居ない。口に出したのは一応の確認をアイリにも取るためだろうか。逆にアイリは牢屋の中を確認するということはせず眼をつぶっていた。まるで何かを探すかのように。
「姉さん・・・多分ここ・・・偽装の魔法が使われてる・・・」
階段を降りきる直前部分を指差してアイリはそう告げる。
「なに・・・?」
アイラはその場所に触れてみるが別段違和感はない。普通に壁があるだけだ。しかしアイリがその場所に手を伸ばすと壁をすり抜け手が壁の中に入ってしまった。
「多分・・・認識しないと実体もあるように錯覚させているんだと思う・・・」
アイリの手が壁の中に入っている状態でアイラがもう一度手を伸ばすと今度は壁の感覚はなくそのまま腕が空中に伸ばしたように吸い込まれていった。
「これは・・・!私だけだったら気付けなかったな」
「うん・・・でも私も姉さんが居なかったら・・・この奥を調べようとは思わなかったはず・・・」
二人で居たからこそ隠し通路に気付くことができ、さらに奥の探索に踏み切ることが出来る。二人は意を決して奥に進んでいった。




