丸耳の男
フードを被った男達が倒れている少年を囲むように立っている。一人の男がバケツに持った水を少年にかけると彼は身震いした後に体を起こした。
「やっと起きやがったか。おら!さっさと立ち上がれ」
今までわからなかった言葉が理解できることに少年は疑問を抱くが別の驚きが少年を襲う。自分の意思とは無関係に男に言われたとおり少年、士郎は立ち上がっていたのだ。
「よし、今度は大丈夫だな。まったく余計な手間かけさせやがって」
フードは被っているがおそらく赤い髪の男だろう。その声に聞き覚えを感じる士郎、喉が熱くなったような気がしてふと気づく。
さっきまで見ていた夢の中で士郎を殺した男の声と同じということに。
「あ、あぁ・・・うわぁぁぁぁぁ!」
恐慌状態に陥る士郎。現代日本からいきなり呼ばれた士郎には理解不能なことばかりの現状。しかも本人は夢だと思ってはいるが、自分を殺した人物が目の前に居るのだ。落ち着けというほうが無理な話だった。
「急に騒ぐんじゃねぇ!黙れ!」
急に叫びだした士郎に怒鳴る男、そしてその言葉に逆らうことは出来ず、士郎は強制的に口を閉ざすことになった。
「ったくよ、金にならなきゃこんな野郎さっさと殺しちまってるところだぜ。せめて女なら楽しませてもらうんだけどな」
赤い髪の男とは別のフードの男が愚痴る。その言葉に冗談のような雰囲気は感じられない。
「まぁまぁ落ち着けって。とりあえず連絡はしてあるから明日には奴隷商が来るっつう話だ。それまでの辛抱よ」
また別の男が、愚痴った男をなだめる。
「これで話は通じるようになったのも確認できたからな。明日まではこいつはここで放置だ。行くぞお前ら」
リーダー格の男だろうか。彼がそういうとフードの男たちは全員出て行ってしまった。士郎に猿轡をかませてから。
次の日、フードの男たちは、人のよさそうな笑みを浮かべた丸い耳をもつ男を連れて部屋に入ってきた。見た目だけなら善人に見えるが、彼は奴隷商である。
「ふむ、なるほど・・・これは確かに・・・食事は与えているのですか?すこし血色が悪いように見受けられますが」
その男は士郎を値踏みするように見た後、リーダー格の男に話しかけた。
「いや、気絶してばっかりでね。まだこちらにきてからはろくに食べてはいない」
それに淡々と答えるリーダーの男。その返答を聞いて丸耳の男は顔をしかめる。
「それは困りますなぁ、明日にはあの方の元へお連れする予定ですから。今日はしっかりと食べさせてくださいよ?」
それにリーダーが了承すると、丸耳の男は笑顔のまま出て行った。
「ソイ、そいつに飯を食わせておけ」
「俺っすか?雑用ばっかやらせんだからなぁ」
赤い髪の男、ソイは愚痴をこぼしたが、リーダーに睨まれ逃げ出すように部屋を出て行った。
その後ソイにパンを口に詰め込まれて、その日は終わった。
今日中にもう一話は・・・
→ 書いてる最中に寝落ちしました。申し訳ありません。