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悪の華

導入部分なのでかなり短めです。

 

 豪奢なドレスに身を包んだ少女が椅子に座っている。少女の頭からは狐の耳がぴょこんと飛び出している。以前と同じ何もない部屋の中で少女は本を読んでいる。


「メイ様。件の人物の行方が判明しました」


 声をかけながら入ってきたのは猫目の少女、ユシィだ。今日は仮面を付けてはおらずメイド服に身を包んでいる。


「あら、ユシィにしては時間がかかったのね?」


 狐耳の少女、メイは普段の仕事の速さを考えるとかなり遅かった今回の報告に疑問を抱く。メイとしては純粋な疑問だったのだがユシィは嫌味と受け取ったようで謝罪を口にする。


「申し訳ありません。詰所に居るのかと思っていたのですが、どうやら救出作戦の実行部隊の隊長の家に転がり込んでいるようです。予想外の動きでしたので思ったよりも時間がかかってしまいました」


「別にいいわ。急ぐことではないのだから」


 頭を下げるユシィに問題ないと告げるメイ。ユシィが頭を上げるのを見届けると、メイは今まで話していた内容とは全く関係ない話題を取り出した。


「ねぇユシィ、悪の華って知ってる?」


「いえ、存じ上げません。浅学の身をお許しくださいませ」


 急な話題転換にも慌てることなく返事をするユシィ。メイの行動に慣れているのだろう。


「お父様の蔵書の中にあった本なのだけどね。悪事を成す際の美学について書かれている本なのよ。正義に屈するなとか、策は美しくあれとかね。私その本を読んで物凄く共感ができたのよ」


 本の内容について語りだすメイ。その意味がユシィには全くつかめなかったが、平静を装い話を聞き続ける。


「・・・だからね、私は悪を貫こうと思ったのよ。まぁ元々正義なんて持ってないのだけどね」


 笑いながら宣言するメイ。悪を貫く、ということはいまいちわからないが、正義でないことだけは間違いない。人を使い召喚を行わせたり。人身売買で手に入れようとしたり。最終的にはすべて始末してしまったけれど。その始末をしたのはユシィ本人なのだけれど。


「お父様もお兄様も正義の人たちよ。お父様は獅子の獣人だからこれが本当の獅子身中の虫よね。」


 正直反応に困る話だ。メイの話は要領を得ないし、そのために何かをするでもないようだ。


「わからないって顔してるわね、簡単な話よ。ユシィは私のために動いてくれればそれでいいのだから」


「私はいつでもメイ様のお心のままに」


「うん。それでいいのよとりあえずは召喚された人・・・」


「シロウ、という名前だそうです」


「そうシロウね、シロウの動向を見張っていなさい。最終的には私が手に入れるけれどこの世界で何をするのかも気になるわ。私のものになったら自由はないのだから」


「かしこまりました。何か変化があればまたお伝えいたします。それでは」


 ユシィは一礼して部屋を出た。メイが何故召喚で呼んだ人物にこだわっているのかユシィにはわからない。それでも先ほど話したようにユシィの忠誠はメイのものだ。正式な雇い主はメイの父君になっているが相反した命令を受けることがあればユシィはメイを優先させるだろう。だから今は言われたとおりに仕事をこなすだけだった。






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