転換の日々 ~アイラの煩悶~
TSネタですので苦手な方はご注意ください。
妹二人による薬の効果によってアイラと士郎の性別が変わってしまって一週間。アイラは毎日を悶々としながら生活していた。
騎士団での仕事には支障はない。薬の効果は顔立ちをそこまで変えるようなものではなかったのだ。変化といえば少し声が低くなったことと胸が無くなった事。後はアレが生えたことだろうか。当初はとても恥ずかしかったものの、一週間も見ればまぁ慣れてしまった。
騎士団で使っている鎧は女性用のものなのですこしだけ窮屈に感じるようにはなったがそこまで問題はない。むしろ逆に男性用の鎧で胸が出ているなどになったら使うことはできなかっただろう。部下にはある程度事情を説明したため着替えなどは個室で行っているのでこれも問題ない。
では何が問題なのか。それは一緒に性別が変わってしまった士郎の事だった。士郎もそこまで顔立ちが変わったわけではない。元々日本人にありがちな童顔だったこともあり女性になってもそこまで顔に変化はなかった。変化があったのは胸の部分だ。アイラは元々そこまで胸が大きいわけではなかったので比べるべくも無いのだが、活発な割にはアイラよりも胸の大きいアイルや、普段はローブのため全くわからないが隠れ巨乳なアイリよりも大きくなってしまったのだ。身長は160センチと元々小柄な上、この世界は女性でも170前後、男性は180が普通なこの世界ではかなり小さい。その身長でこの胸のサイズだとロリ巨乳に分類されてしまうのではないだろうか。
そんな士郎を見ているだけで興奮してしまっているのが今のアイラの悩みだった。元々夜は抱きしめて寝ていたりはするものの清い関係のままの二人だった。なのに現在アイラは士郎に欲情してしまっているのだ。そんな自分にアイラは自己嫌悪に陥ってしまっている。ちなみに妹二人にはいつもどおりに対応できているので完全に士郎のみに反応してしまっているようだ。
「はぁ・・・近づきたいのに近づけない、私はどうすればいいんだ・・・」
女性であるときは士郎に抱きつくことになんの躊躇も無かった。しかし今は性別が変わった初日の朝に抱きついた士郎の感触を考えると容易に抱きつくことさえ憚られたのだ。元々あまり運動をしてこなかった士郎は肌の触り心地も角ばったものではなく軟らかかった。しかし女性に変わった士郎の触り心地は今までの比ではなかった。今までがふにふにだとしたらぷにぷにとかもちもちとかそんなレベルである。逆にアイラは男性になったことにより筋肉質になっていた。元々騎士団での訓練はかなり過酷なものだ。それゆえ今までそんなに体型に影響がなかったのは女性だったからなのかもしれない。まぁ女性で筋肉質な人物も普通にいるのでアイラが特殊だっただけかもしれないが。
「ま~た隊長が悩んでるね~」
騎士団のビットがアイラを遠目に見つつクータに話しかける。アイラは現在騎士団の訓練場に居る。男になったからといって仕事をする分には差し支えも無いので、いつもどおりに訓練に勤しんでいる訳だ。士郎の事で悩んでいるので身が入っているかはともかくとして・・・だが。
「それは悩むだろう。自分がいきなり女になったと想像してみろ。きっと日常生活にも支障が発生するに決まっている」
クータは隊長を心配するがその心配は見当違いである。アイラは日常生活では特に困ってなどいない。悩んでいるのは士郎との事だけなのだ。
部下達がアイラを遠巻きに見ている中、当のアイラはその視線に気づくことも無く悩んでいるままだ。
「うぅ・・・無理に近づいても士郎を困らせるだけだからな・・・」
アイラの士郎の悩みはもうひとつあった。アイラが男性になったことにより士郎がアイラに怯えてしまっているのだ。士郎の男性恐怖症は未だに治る見込みは立っていない。しかも今は女性になっているのだ。男性のころよりも恐ろしく見えているに違いない。実際「イナバ」での仕事も、最近では常連の冒険者であれば売り子程度はこなせるようになっていたのにまた当初の段階まで戻ってしまっている状態だ。仕事にならないので現在は商品の補充をメインで働いているようだ。
アイラは士郎を抱きしめたい。しかし興奮してしまう。士郎はアイラが男性になってしまっているため近づかれるのも怖い。その結果として士郎はこの一週間ずっと自分の部屋で寝ているし、アイラもそれを無理に引き止めることはできずにいた。
結局この悩みは解消されないまま日々が過ぎ、元に戻った後、アイラはしばらく士郎から離れなかった。




