表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/41

秘薬を作ろう 4

 

「できた・・・」


 素材を集めてから一週間、ついに性別変換薬が完成したのだ。アイリが薬を作るため自分の部屋兼研究室に篭っていた為、その間アイルが主に店番をこなしていた。

 アイリはできた薬を持ってアイルのところへ行く。


「あれ?アイリ姉、この時間に出てきたって事は・・・ついに出来たの!?」


 アイルの質問に頷いて返すアイリ。近くに士郎も居て話を聞いてはいたが、彼はアイリが何の薬を作っていたのかは知らない。ただ二人が一週間前に素材を取りに行き何かの薬を作っていたことだけはわかっている。


「シロウ!ちょっと店番お願いね!私はアイリ姉と裏に居るから!何か困ったら呼びに来て!」


 そういってアイルはアイリと共に裏に入っていった。残された士郎は一人で店番である。救いといえるのは屈強な冒険者達が買い物に来るピークは過ぎていて、ここからは女性のお客が多いことだろうか。



 出来上がった薬は試験管一本分という少量だ。使った素材の量を考えるとありえないほどの収縮っぷりである。アイルもそう思ったのだろう口をついたのは不満げな言葉だった。


「針長蜂の巣だって全部使ったんだよね?これだけしか出来ないんだ~」


「効能が濃縮されてるから・・・これ全部飲めばまず十年は元には戻らない・・・」


 アイリの言い方には不透明な部分があった。


「んっと・・・アイリ姉?これ永久に性別が変わるわけじゃないの?」


「一滴で一日・・・半分で半年というのはわかってる・・・」


「それは誰かが実際に試したって事だよね?」


「そう・・・学園長が自ら試した結果だそう・・・」


 被検体はこの薬を作ったという学園長本人だった。魔道学園のソーン学園長はキツネの獣人で尻尾が三つに分かれている。魔法を使わせたら王都一と言われ城を守る近衛隊に是非と請われた事もあるが、本人が束縛を嫌う性格だったことと、人に教えるのが好きだったこともあり近衛隊の話は蹴ったそうだ。

 そんなソーン学園長はおっとり系で胸の大きい女性・・だ。魔法を専門としているため筋肉はあまり無いものの、性格と胸により癒し系として男性人気も高いのである。彼女・・が元は男性だと知れたら暴動が起きてもおかしくないような内容である。


「元は男って、実際に見てみないと信じられないよ・・・それに学園長って結婚してなかった?」


「してる・・・この薬は顔立ちはほとんど変わらないらしいから・・・学園長を女性と勘違いして告白してきた人を当時男だった学園長も好きになって・・・結婚するためにこの薬を作ったっていってた・・・」


 出来た経緯がまさかの結婚のためである。お相手の男性も学園長が元男だと知って結婚したそうなので、愛の強さを感じるエピソードでもある。そして一瓶丸ごと飲んでから十年経つが未だに体が男に戻ることは無いそうだ。なのでアイリはまず十年は、と言う言い回しをしたのだ。


「そっか・・・色々びっくりしたけれどこれをシロウに飲ませれば女になるわけね・・・」


「そう・・・後はどうやって飲ませるかだけ・・・」


「それは私が何とかするよ。だからアイリ姉は今回の依頼の報酬として例の件よろしくね」


 アイリの手伝いをしたアイル。士郎を女にするという目的は利害の一致はしていたものの、無償というにはいかない。アイルがアイリに報酬として要求したのは学園長とのアポイントメントを取ることだった。

 アイルは何でも屋をしている性質上交流の幅は広い。そして機会があれば更にひろげようとしているのだ。そのため今回アイリには学園長との橋渡しをお願いした。学園長夫婦は現在子供が出来るかも研究の内に入れている。もしも学園長が身ごもれば薬の素材などを自ら取りに行くことも難しくなる。その時に事情のしっているアイルならば学園長からの依頼を優先的に受けることもできるだろうと言う打算を含めての顔つなぎである。


「うん・・・会うだけなら・・・私でも紹介できるはず・・・」


「会えるだけでいいから、それでよろしく~」


 そういってアイルは薬を持って出かけていったのだった。





 夜、アイラも帰ってきてご飯も食べた後、アイルは士郎にコップに入れたジュースを渡した。


「これ飲みなさいよ。今果物屋のおばさんと協力して作ってるジュースなんだけど毒味して!」


 果物の果汁が入っているのは事実だが、おばさんがジュースを作っていると言うのは嘘である。このジュースには性別変換薬が入れてある。それを士郎に毒味と称して飲ませようと言うのだ。


「毒味って・・・まぁ飲みますけど・・・」


 ゴクゴクと士郎が半分ほどを飲む。これでひとまずは成功である。内心でアイルはほくそ笑んだ。


「甘くて美味しいですね。これならきっと売れますよ」


 士郎は笑いながらそう評価する。そこでアイラもそのジュースが気になり士郎のコップを奪ってのんでしまった。


「シロウ、私にも飲ましてくれ・・・うん本当に甘くて美味しい。アイル。これは売れると果物屋のおば様に伝えてくれ。販売を始めたらきっと買いに行くとな」


 アイラはにこやかにアイルに伝えるがアイルは震えていて話を聞いていないようだ。妹の不自然な様子に首をかしげるアイラ。


「ア、アイラ姉が男になっちゃう・・・どうしよう・・・アイリ姉・・・薬また作れる?」


 ぶつぶつとアイルが何かを言っているがアイラには聞き取れない。アイリは聞こえていたようで首を横に振る。そのアイリの顔もいつもより少し青くなっている気がする。


「二人とも今日は変だな?まぁいい、シロウ、今日も私と寝るぞ」


「アイラさん僕を抱き枕にするのはやめて・・・無理ですかそうですか」


 一瞬だけ抵抗しようとした士郎だったが、直ぐに諦め引きずられるようにアイラの部屋に連れて行かれてしまった。


 翌朝性別が変わった二人がパニックを起こして大騒ぎになる。そして新たに薬を作りなおす一ヶ月先まで二人は逆の性別で過ごすことになってしまったのだった。

 アイリとアイルがアイラに物凄く怒られたのは当然の結果である。




二人の性別が戻るまでを半年から1ヶ月に変更。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ