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秘薬を作ろう 3

 

「美味しくない・・・」


 アイリとアイラは森の探索を続けていたが針長蜂の巣は未だに見つかっていなかった。アイリの体力も限界に近くなり、今は木々が開けている場所でお昼ご飯を取っていた。


「文句言わないでよアイリ姉。流石にここで火を使うわけにもいかないんだから」


 周囲の警戒をしつつ二人が食べているのは携帯食料だ。栄養の為味を犠牲にしているためものすごく不味い。アイリは依頼によっては帰りが遅くなったり、調理する暇などが取れないこともあるので食べなれている。しかしアイリは近場の採集くらいでまず遅くなるようなところへ出かけることも無かったため初めて携帯食料を食べた。そしてその不味さに不満がつい口から出てしまうのだった。


「さて、どうしようか。まだ巣を探す?多分これ以上奥に進むと帰るの夕方過ぎになっちゃうから最悪晩御飯も携帯食料になるけど」


「うぅ・・・もう少しだけ・・・蜂自体は飛んでいるし巣もあるはず・・・」


「了解。それじゃ後30分だけ奥に進んでみようか。それまでに見つからなければまた次回ってことで」


 アイリが泣く泣く携帯食料を食べていたのでアイルは戻ることを提案してみるがアイリはもう少し探してみたいようだ。

 実際針長蜂には探索の途中で何度も遭遇している。なので森の中に巣があるのは間違いないのだ。その他にも直進イノシシは何頭か遭遇している。



 直進イノシシ。気性が荒く生き物を見つけると体当たりをしてくる。名前の通り直進しかしないため、横に避ければ簡単に討伐は可能。食肉として重宝されるので街の付近で確認されるとこぞって討伐に冒険者が出て行く。また、牙も装飾品への加工に用いられる。



 普段であれば、直進イノシシは街まで持って帰るのだが、今日の目的はあくまで針長蜂の巣である。血抜きをする時間も無いので残念ながら狩った直進イノシシは牙だけ抜いて野ざらしである。ほかの魔物によって処理されるだろうとの判断だ。





「あれが針長蜂の巣・・・想定より大きいかも・・・」


 昼食を終えて20分、ついに針長蜂の巣を見つけることが出来た。アイリは知識としては針長蜂の巣を知ってはいたが実物を見るのは初めてである。


「あれでも小さめだよ。一番大きかったのはあれの2倍くらいあったから」


 対してアイルは今までにも何度か針長蜂の巣の採取以来を受けたことがある。そのなかでも今回の巣は小さめのものだった。


「問題は2人でどうやって巣を制圧するかだよね。普通なら最低でも10人は居ないといけないし」


 針長蜂の個々の強さがそれほどでもないといっても数が数だ。通常であればこちらもある程度の人員を用意して蜂の狙いを分散させて戦うのが基本だ。しかし今回は2人である。あの巣が最低数しか蜂がいなかったとしても間違いなく100匹はいる。そうなれば1人あたりの請け負う蜂の数は50匹だ。50匹に同時に襲われて無事で居られる保障はアイルにはなかった。


「巣さえ見つかればもう大丈夫・・・後は私に任せて・・・」


 自信満々なアイリは巣との間に遮蔽物が無く、蜂が襲ってこないぎりぎりの所で魔方陣を描き始めた。魔法に必要なものは集中力と魔力だけだ。人によっては呪文を唱えたりしてイメージを補うものもいるが、基本的に何もなくても使えるのが魔法である。

 しかし今回アイリはわざわざ魔方陣を描いていた。これは魔方陣を触媒に威力を増幅させるためのものだ。相手が一定の距離から攻めてこないのがわかっていなければ使えない使い勝手の悪い代物だが今回はおあつらえ向きのシチュエーションだった。

 アイルはアイリが魔方陣を描いている間も周囲の警戒をするだけで巣に対しては何もしなかった。なぜならアイリが大丈夫と言って大丈夫じゃなかったことなど数えるほども無いからだ。アイルにとって1つ上の姉であるアイリは慎重な人物という評価をしている。彼女は無茶をすることはしないし、自分の技量も弁えている。正当な自己評価が下せる。それは1つの誤りで命を落とす冒険者には必要なものだった。



「・・・・・・・ウォーターボール・・・」


 魔方陣を描き終えたアイリはしばらく眼を瞑り集中した後、明確なイメージを持たせるため魔法名を発声して針長蜂の巣に対し魔法を行使した。

 どこからか発生した水が巣を包み、蜂を溺死させていった。アイリは巣を出ていた針長蜂の対処をしている。両手に短剣を構え蜂を両断していく。10分ほどその状態が続きアイリが魔法を解除すると水は下に落ちて地面を濡らした。


「アイリ姉の魔法はすごいね!まさかこんなに簡単に巣を殲滅できるとは思って無かったよ!」


「それほどでも・・・ない・・・」


 褒めるアイルに照れるアイリ。しかしここから森の外の馬車まで巣を運ばなければいけない。とはいえアイルのテンションは上がっているし、夕食には間に合うだろう。


「早く帰って、アイラ姉のご飯食べよ!」


「うん・・・携帯食料はもう嫌・・・」


 この後、夕方に街に帰れたのは良かったがアイラが食事の準備をしていないことをこのときの2人はまだ知らない。



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