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秘密のデート 2

 

 最初に向かったのは噴水広場から東門に繋がる通りだ。東の通りから北寄りは貴族街となっており、個人に雇われた衛兵などが巡回していて、街の中でも犯罪の少ない場所だ。だが今回アイラたちが用事があるのは北側ではない。主要通りを十字に区切った際南東に位置する商人街だ。薬屋「イナバ」もこの商人街に分類されるのだが冒険者が利用することが多いので立地的には南門に程近く、東門からは少し離れている。

 北東の貴族街に近い部分ではお店も貴族向けの商店が多く、高価な装飾品を扱っている店、ドレスなどの普段使いには向かない服を扱う店、一般人には手の出せないような高級料理を扱うレストランなどが立ち並んでいる。流石に中に入って物見遊山というわけにはいかないものの、装飾品やドレスなどは表からでも見えるように飾られているものもあり、歩くだけでも楽しめるようになっている。


「あの髪留め可愛いな。シロウはどう思う?」


「そうですね、でもアイラさんにはあっちの赤い髪留めのほうが白い髪には似合うと思います」


 なんて二人で話しながら歩いていく、しかし今日のアイラの目的地はここよりももう少し南寄りにある食堂だ。騎士団の昼休憩の時などに他の団員と食べに来たりしているところで、値段も安く味もいいので一度士郎と行きたいとアイラは思っていたのだ。ただし心配事もあるのだが・・・


 そうして着いたのがここ「ブラウの酒場」だ。


 ブラウの酒場


 ベテラン冒険者だった猪獣人ブラウが、引退後奥さんと子供二人と共に営んでいる酒場。

  夜は冒険者たち御用達の酒場、昼は一般市民向けの割安ランチを提供しており、昼夜共に味や値段の面で広く支持されている人気の店である。


 中に入ると7割ほどのテーブルが埋まっており店の奥では体格のいい男性が鍋を振っている、給仕をしている店員もパタパタと走り回っており、繁盛しているようだ。


「あ、いらっしゃいませ!どうぞ空いてるテーブルにおかけになってください!」


 店に入ったアイラと士郎に気付くと料理を運んでいた女性が二人に声をかけて走っていった。言われたとおり空いているテーブルに座ると先ほどの女性がメニューを手にやってきた。


「すいません今注文が立て込んでまして、こちらがメニューですのでお決まりになったら声をかけてください。あ、今日の日替わりメニューは爆走鳥のソテーです。それではごゆっくりどうぞ」


 爆走鳥は10羽前後の群れを形成する大型の鳥の魔物で、飛ぶことは出来ないがその分地上をすごい速さで走る。討伐ランクはc級でつい先日街に向かって走ってくる爆走鳥の討伐依頼が冒険者ギルドに出されていたそうなので、その肉を買い取ったのだろう。


「シロウはどうする?私はここにくると大体日替わりを頼んでいるので今日もそうしようと思っているのだが」


「そしたら僕も日替わりメニューにします。名前だけだと良くわからないものも多いですし」


 手を上げて給仕を呼ぶと先ほどとは別の給仕がやってきた。先ほどの給仕は猫の獣人で頭に猫耳が生えていたのだが、こちらはふさふさの尻尾が生えているおそらくキツネの獣人だった。


「お決まりですか?・・・はい日替わりメニューが2つですね。では出来次第お持ちしますので。お父さん!日替わり2つ入ります!」


「おう!日替わり2つな!先に野菜パスタとミノステーキあがったぜ!」


 未だにばたついているはいるが、お客も少しずつ減っていき、アイラたちの注文した料理が来るころには半分ほどになっていた。


「お待たせしました。日替わりが2つです」


 猫耳の給仕が料理を持ってきた。早速食べ始める2人。


「うん、今日のも美味しいな。どうだシロウ?口にはあったかな?」


「本当に美味しいですね。このタレがとても美味しいです」


 二人で料理を褒めていると先ほどまで調理をしていた男性がこちらにやってきた。


「おう!それはうちの自家製でな!そういってもらえると作る甲斐があるってもんだぜ!」


「うわぁ!?」


 フラウに声をかけられて士郎が怯えてしまった。アイラの懸念が当たってしまったようだ。士郎の男性恐怖症は未だに治る気配がない。そこにフラウのような男性がやってくれば怯えてしまうのも無理はないのだ。


「もう!お父さんは顔が怖いんだからあまりお客さんの前に出ちゃダメでしょ!」


「ミ、ミウ!料理を褒めてくれたお客さんには礼を言うべきだろう!?そ、そこを引っ張るな!首がしまる!?」


 先ほどの猫耳の少女が走ってきてフラウを引きずっていってしまった。

 士郎が怯えているのでアイラは士郎が落ち着くまで抱きしめているのだった。なお、士郎を抱きしめている間かな顔が緩んでいたのだがそれを見たのは給仕を務めていた二人だけだったため、隊長の残念さが露見することはなかったようだ。

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