秘密のデート 1
王都マイルナム噴水広場。南門、西門、東門から中央に延びている通りのぶつかるところに設置されている待ち合わせスポットだ。噴水が出る噴出口は杖を持った青年が手を上に掲げている石像になっており、杖の先から水が出ている。この青年はかつて王都で起こった大火災を水の魔法で持って鎮めたとされ。火災の際に沈下に使える水を咄嗟に用意するため、また彼の功績を称える為にこの噴水広場が作られ彼の石像が飾られることになったという。
噴水の近くでソワソワしながら立っている人物が居る。淡いピンクのワンピース姿ですらっとした体型、腰まで伸びた白い髪、そして頭から伸びた長いウサミミ。普段の凛々しい騎士姿ではなく、可愛い衣装に身を包んだアイラがそこにいた。彼女はとてもわくわくしている。何故ならこれから士郎とデートなのだ。
ことの始まりは朝食時の事だった。今日はアイラは非番の日で特に予定も無かった。普段はそんな日はアイルが構って欲しいと近づいてきたり、逆に自分から士郎を抱きしめに行っている。しかし今日は妹二人が用事で出かけるとの事だった。
「今アイリ姉と共同で作ってる薬があってね、その材料を集めに行くんだ」
そのため今日はお店の方も休みだと事前に張り紙をしていたらしい。そうなるとアイラのすることが無くなってしまう。妹の手伝いをしようかと言ってみたが、二人はそんなに大変な素材でもないから大丈夫と言われ断られてしまった。
二人は朝食を食べた後出かけていってしまったので、アイラはアイルに邪魔されること無く士郎にくっついていたのだが、1時間ほどするとある事に気づいた。士郎にくっつくのはアイルの妨害はあるもののいつでも出来る。せっかく二人が居ないのだからもっと普段出来ないことをするべきではないのかと。
そして思いついたのがデートだった。アイラは今まで男性と付き合った事が無い。当然デート経験も皆無だ。アイルと二人で買い物に出かけた際にアイルが「アイラ姉とデートだ!」といっていたが女性同士なのでノーカンだ。
「シロウ!午後は私とその・・・デ、デートしないか!?」
普段からイチャイチャしているとはいえ、改めて言うのは恥ずかしかった。羞恥を堪えデートを士郎に提案する。
「ぼ、僕とですか?う、嬉しいですけどデートなんてしたことないし・・・街のことも何があるのかわからないから楽しくできるか・・・」
士郎はそういっているがアイラは逆に嬉しかった。士郎がデートに手馴れていてエスコートされるのも、それはそれで嬉しいだろうがどんな女の子と付き合っていたのかと嫉妬してしまいそうだ。だから二人とも初めてのデート、それがアイラには嬉しかったのだ。
「じゃあ今日は町を巡ろう!1時間後に噴水広場で待ち合わせだ!」
「部屋で準備して一緒に出ればいいんじゃないですか?」
士郎はそう提案するがアイラは首を振る。
「せっかくの初デートなんだ。待ち合わせしてそこで会った方がデートっぽいだろう?」
少し顔を赤らめて言うアイラについ士郎も顔が赤くなってしまった。
「わ、わかりました。それじゃ1時間後に噴水広場で・・・」
それから部屋に戻ったアイラはおおわらわだった。指定した時間は1時間後、なのに急に決めたデートのため何も準備をしていないのだから。まずは服装だ。普段家の中で着ているような服や、騎士団の鎧の下に来ている服装はだめだ。普段の自分と違う所を見せたいアイラは必死に服を探していた。それはアイルと買い物に行ったときに買った服だった。
「アイラ姉は普段の格好いい服装もいいけど、絶対可愛い系の服も似合うと思うんだよねぇ」
そういって1着だけ普段着ているものとはかけ離れた服を買ったのだ。ズボンやパンツ系ばかり穿いているアイラが珍しく買ったワンピース。それを探しているのだった。
大慌てで準備をしたおかげか約束の時間の20分前にはもう噴水広場に着いてしまったレイラだった。そして冒頭のシーンに至る。
士郎は約束の10分前にやってきた。そんなに服の数があるわけでもないので普段着にしているものと変わらない。そしてアイラを見つけるとそこで立ち止まってしまった。アイラは急に立ち止まった士郎に首をかしげながら近づいていく。
「早いなシロウ。どうしたんだ急に立ち止まって」
「だ、だだだってレイラさんそのワンピース・・・そういう服は持っていないのかと・・・」
明らかに挙動不審な士郎、しかしアイラはあえてそこには突っ込まず感想を求める。
「私だって少しはこういう服も持っているんだからな。それでどうだ・・・その、感想は」
「いつもは綺麗なんですけど・・・今日はどちらかというと可愛いです」
「そ・・・そうか・・・」
自分で聞いたのに可愛いといわれて赤くなってしまうレイラ。その後もすこしギクシャクしてしまったが飲み物を飲んで気持ちを置きつかせた後気を取り直してデートに出かけることになった。




