三女アイル
アイルは姉のアイラが昔から大好きだった。両親はアイルが小さいときに亡くなっていたのでアイラはアイルの母親足ろうと努力していた。だからアイルに好かれているのはその結果としては悪いことではない。ないはずなのだが・・・
「シロウ!アイラ姉にそれ以上近づかないで!あっちにアイル姉の使う素材があるからそれを運んどいて」
アイルはアイラ大好きのシスコンになってしまった。仕事中に関しては分別をつけているようだが、アイラが休みの日などは酷いことになる。
今だってアイラは自分からシロウを抱きしめようと近づいていたのだ。仕事中は騎士として、隊長として恥ずかしくないように神経を張り詰めさせている。だから休みの日くらいはのんびりとすごしたいのだ。しかしそれを許さない妹アイル。結局士郎は仕事を押し付けられて行ってしまった。
「あぁシロウが行ってしまった・・・」
「アイラ姉には私が居るじゃない!男なんて寄せ付けちゃだめだよ!」
私が居るから男は要らない。妹から飛び出た超理論に姉は溜息をつくばかりである。
「あ、アイルさん。今店先に仕事を頼みたいって人がきてます」
先ほど追いやったはずの士郎が帰ってきた。できればもう一度追い返したいアイルであるが仕事の依頼となればそういうわけにもいかない。ギルドを通していない何でも屋は信頼が大事だ。なので自分の都合で頼みに来た人を追い返すわけにもいかないのだ。
「もう!い~いシロウ!私が居ないからってアイラ姉に近づくんじゃないわよ!」
そういって少し不機嫌ながらも店のほうへ向かったアイルだった。この後甘えたいアイラに捕まって士郎が抱き枕状態になっていたのは不可避だったのかもしれない。
「ふぅ、これでよしっと」
アイルは依頼主の八百屋のおばちゃんの家を掃除していた。あの後店先に向かったアイルは仕事を頼まれ、それを請け負ったのだ。最近腰を痛めたらしく部屋が片付かないとの事。何故おばちゃんがギルドではなくアイルに依頼をしに来たかというと、1つはアイルが女性だからだ。ギルドを通した依頼の場合、受ける依頼は冒険者達が決める。そうなれば女性の部屋の片付けに男が来る可能性だって当然ある。それならば確実にアイルに頼んだほうがよかったのが1点。
もうひとつの理由、これは他のアイルに頼む人たちにも言えることなのだが、報酬が品物でも良い点だ。
冒険者の依頼はギルドで管理しているため、報酬は金銭で渡さなければならない。これは品物だと人によって価値がかわってしまうからだ。今回の件で言えば八百屋のおばさんからの報酬は新鮮な野菜である。しかしこれをギルドが報酬として認めてしまうと例えば野菜が嫌いな人物はこの依頼を間違いなく受けない。その野菜分金銭で受け取れば当然自分の好きなものを食べることが出来るからだ。
だからアイルの何でも屋には商品を扱っている商人達からの依頼もそれなりにある。そしてアイルは依頼を受けることにより人脈を拡げているのである。
この人脈をどう生かしているかというと・・・
「あ、おばちゃん!報酬の野菜なんだけどアイラ姉の好きな根菜を多めにしてもらってもいい?」
結局姉のアイラのために使っているのだった。




